第125部 オレグ編 愚者の進行・侵攻!!
中身を省略したものです。次章より、く、く、苦しいですが、補足の物語を書き上げる予定でございます。
コペンハーゲンの市街戦。ゴッドランド島の奪還作戦。ルーン文字の経緯。二人を見つけられた事。家臣や貴族らの姦計。書ける訳はない無理だと諦めてお待ちくださいませ。
オレグの秘密が見つかればいいのですが……。
1245年3月15日 デンマーク・コペンハーゲン
街から離れた一軒のパブでは約四日間が一晩で過ぎていた。あの方の命令でオレグらは歓待されていたのだった。
オレグ以外はエレナ、ソワレ、ルシンダ、サローとヤン。魔女らは合計六人。元ドイツ騎士団の四人と馭者の二人の総勢十八人。
三人の小さな魔女、老婆の妖精、ウィンビー、トロール、コナスチャは魔法によりオレグの希望を叶えてやった。勿論、服だけであるが……。
*)オレグの成り上がり貴族。
オレグは貴族の服をお願いした。ソワレには執事の服。エレナには娘の服。魔女と馭者にはメイドと使用人。元ドイツ騎士団の四人は庭師等の下僕。ルシンダはオレグの妹。サローとヤンは妹の使用人の服。
「ウィンビーさん、このような服まで頂いてよろしいのでしょうか?」
「ウィンビーはわしじゃ。そやつはコナスチャじゃ。」
「なにを言う。わしがウィンビーじゃ。」
三人で意味不明な名乗りをあげて全員を混乱させて遊んでいる。最後に三人で声を揃えて、
「なに、大したことではございません。それもこれも、オレグ様の魔法の力の為せる業でございます。私たち三姉妹もオレグ様にお供いたします。」
「お、お前らは座敷童か!」
「はいさようでございます。このパブはオレグさまが望む館まで成長いたしますので……そうですね、三日以内で城の外観と内容をお考え下さい。さすればそのように大きな城へにも変化いたします。」
老婆の妖精、ウィンビー、トロール、コナスチャは、若くて可愛い娘の姿に変化した。
「これが私たちの姿でございます。」
「まぁかわいい!!」x3
「ぎょぇ~!!」x6
女たちの感想だ。身形は妖精のリリーのような小さな身体だ。
「はい大地を司る精霊・妖精でございます。」
「だから大きい城でも造れるのか。リリーと同じではないか。」
オレグは強い味方を得た、と勘違いをした。この三姉妹は魔女であの方の部下である。今はあの方の命令でオレグに協力しているだけだ。
他の男たちは……黙ったまま。しゃらしいので黙らせた。
オレグはここを拠点にして金をばらまく。最初は兄弟のカウナスとインゲボー。クライベタとマルグレーテの城の建設の為にスロッツホルメン島に橋を架ける。
元貴族のホーコンとヘルヴィヒの城の建設の土地を探して、運河を一望できる場所に建設出来るように大きな道路を建設させた。当然、この大きい道路に付随して住宅の開発も行った。
「ふん! 田舎の貧乏貴族が!」
という街の噂が広がる。当然、事業を始めたくて農夫を募集しても集まらない。
「く~! 俺をバカにしやがって~。」
と悔しがるオレグが、とある行動に出た。
「道路から見える処に金貨を全部積め。より多く見えるように横一列で高さは十mだ!」
「オレグさま、そのような事は梯子も在りませんから不可能でございます。」
「魔女が居るではないか。魔女に積ませろ!」
「はい仰せのままに。」
エレナの主導の元に三億もの金貨が高さ八mまで積まれた。
「ソワレ立て看だ。でかい文字で人足募集をかけろ!」
街中は大騒ぎになりパニックを止めることはできなかった。立て看の前ではキツネ目をしたメガネの女史・ソワレが受付を始めた。
「おっかね~女だな。」
「あぁ怖そうな顔だべ。俺たちは食われるだべか!」
ソワレは考えた。
十日間の服務で、
一、金貨十枚で橋の建設作業従事。
一、金貨五枚で道路の建設作業従事。
一、金貨三枚で城の建設作業従事。
一、金貨三枚で港の建設作業従事。
と四つのコースを作った。優先順位が高い方に人足が集まるようにだ。定員もあるから、上から集まるかと思ったら道路と城の建設に男は集まった。
「バカ言うでね。冬の海には入れないだべ!」
当然だろう。オレグは妖精と魔女の力で橋の基礎を造らせて、橋の上部の道路の部分を人足に造らせる方法にした。すると橋の建設に男が群がった。
「おうおう順調、順調……。」
1245年5月25日 ポーランド・トチェフ
*)オレグの帰宅
オレグは妖精に頼みトチェフへ帰った。もう五月、ライ麦の収穫になるのだ。オレグは全方位に向って指示を出す。
「ギュンター、トチェフとマルボルクだ!」
「ユゼフ、グルジョンツとブィドゴシュチュだ!」
「ボブ、シビル。ライ麦の輸送だ!」
「デーヴィッド、グダニスクで納品と検品の役を行ってくれ!」
「はい!」x6
「一人多いぞ。??」
「マクシムでございます。金貨の三億枚はご用意いたしておきます。」
「難しい注文ですまないな。」
「いえいえなんの。大した事ですがやってやりましょうか。今年の分も!……」
「グラマリナさま、ドイツ騎士団を黙らせて下さい。」
「はい任されました……。」
オレグは説明を面倒だからと勝手に省略してしまった。
ポーランドのシュトゥム、グニェフ、ピャセチノ、クフィジン等の街や村をも束ねて、オレグはマクシムとの交渉に臨んだのだ。グルジョンツとブィドゴシュチュだけでなく、付近の街や村までも抱き込んでしまった。
「それもこれもあの魔女のおかげだな。今度感謝の念を込めて挨拶に行かねばなるまい。」
遠くにいるソフィアにしたら亭主の浮気だ。許すはずはない。
「魔法。オレグに……洟垂れ!!」
男の洟水を垂らしたという意味だ。
「マクシムさん、この春のライ麦は*****だ!」
「ぎょぇ~~!!」
「そうだ金貨五億枚だ、頑張ってくれ!」
「んな、あり得ない、五億はあり得ない……。」
「できないなら俺が直に輸出してやろうか。もう俺でも海上輸送はすっかり慣れてしまったよ。」
とマクシムを脅かす。
「俺はブランデンブルクにも輸出が出来るんだ。」
「だが陸上輸送は出来ない……。」
「今はな!」
「OK ,やってやろうじゃないか。金貨十億枚だ!」
「マクシム、あんた、ピンハネが多くはないか?」
「いいえ滅相もない。船賃が高いので手取りは三億です。……たぶん。」
「それはお互いさまだろう。違うか?」
「デンマークが居ますので、金額は比較できませんよ。」
(デンマーク??)と、オレグは訝る。
「そうだな、あと二~三年すれば自由に海峡を抜けられるようにしてやる。それまでは、マクシムさんに稼がせてやるよ。」
「で、オレグさんはデンマークを仕切ってしまう、と?」
「あぁそうだとも。今度は海峡に通行税を俺が作って実践する。」
「んなバカな。それはよして下さい。バカげています。」
「でもデンマークは時期に骨抜きにしてやるから、安心しな。戦争を始めておとなしくさせるからさ!」
「そ、そ、そんな~!」
マクシムはゾクゾクしたように笑顔の武者震いをした。ヒョットコの笑顔だ! そんなマクシムを無視して、ほくそ笑む顔立ちのオレグは女の妖精の三人に、
「おうトチェフへ飛んでくれないか。」
「はいオレグ様。」x3
オレグは妖精に頼みトチェフへ飛んだ。マクシムは手にハンカチを持ってオレグらを見送った。
オレグは久しぶりに自宅へ帰った。
「おう、すまね~な。お前らは自由にそこら辺りで遊んでいてくれ。」
「はいオレグさま。」
オレグは自宅前で立ち止まり懐かしい我が家を見上げる。一,二,三、…と一呼吸、二呼吸してから玄関に入った。
「ソフィア、リリーただ今!」
「お帰り~オレグ!!」x2
「え!! ……え”…… 気のせいか。」
二人の声が聞こえたような気がした。オレグは振り返りそして外に出る。リリーの大事な花壇を無視していた事に気づいて、
「リリーの花壇の手入れも行うか。まだまだリリーも元気なようだ、良かった。」
「さっきはお前たちが返事したのか?」
と、オレグはバラに話しかけた。
「リリー、ソフィアも元気で……。」
ドタバタと走ってくる女には気づかない。いきなり……。
「ちょっとオーナー……オレグさん。パブに可笑しな三姉妹が来ましたが、オーナーの支払いで間違いありませんか?」
オレグをオレグの夢世界から現実に引き戻したパブの女将。
「ウィンビー、トロール、コナスチャだったらそうだが。」
「いいえ、それが年増の女と若い女の三人連れです。」
「三人?? の?? 女だと?」
「はいそうですよ。可愛くはないです。」
ウィンビー、トロール、コナスチャはトチェフの村を散歩してオレグの仕事を見て回っていた。
「オレグは港から館や村まで造ったと言っていたわね。」
「そうね、ビール工場にワイナリーもかしら。」
「この広い石畳の道路もだね。この先は領主の館ね。」
等々……。訪ねた館でグラマリナに拿捕されてしまう。
「えぇ母娘には見えないね。鼻だかつん子な感じだが、貴族でもないよ。」
「おかしいな、そんな女は知らない。料金は倍増しにしておけ。」
「年増かい? あいよ。頑張ってふんだくるからさ。誰かザ・ガードマンを寄越しておくれ。」
(宇津井健氏は神経痛だから出来ないな。六年と九ヶ月も続ければな! これだけ書いても知る人はとても少ないだろうさ。)
「ジグムントとレオンを向かわせる。あのデカ男なら大丈夫さ。」
「だといいがね~。」
「それと、なにが起きても俺を呼ぶなよ。」
「あいよ。しっかり休んでおくれ。」
女将はパブへ、オレグは仕方なしにジグムントの工場へ足を延ばす。
「ジグムント、すまないがレオンと一緒にパブに行って女将のザ・ガードマンになってくれないか。」
「よろこんで~!」
「夕飯は自由に食っていいぞ!」
「ありがとうございます。」
その夜、パブが半壊になるような騒ぎになった。当然、女将はオレグには知らせていなかった。翌朝になりオレグは朝食に行ったら、
「おいおいおい、俺のパブが無くなっているじゃないか。」
「あぁオレグさん。みんな病院送りにいたしました。」
女将が言うには、ジグムントとレオンは三分で伸びたからあとは自分で可笑しな女三人を伸して、五人とも病院へ届けたという。(女将はそんなに強いのなら、用心棒は要らないのだが??)とオレグは思う。
「ジグムントが伸びたらパブの修理が出来ないな~!」
オレグはそう思って、朝食にあずかろうとグラマリナの館を訪ねた。グラマリナはあの三人の妖精を捉まえていて離さなかったという。朝から昨日の続き、二回戦目が始まっていた。
「お前ら、なに騒いでんだ~??」
「オレグさま~お助けください~!」
「あらオレグ。朝食かしら??」
「ウィンビー、トロール、コナスチャ。生きているか。」
「はい、なんとか。……ですが、ここのお姫様が~。」
「明日までここに居ろ。明日には迎えにくる。」
「そんな~オレグさま~お助けくださ~い。」
救助を懇願する三人を弄したいと懇願するグラマリナの元に置いてゆく。
「お前ら、俺が血を流して建てた館は粉みじんに壊すなよ。」
「ひぇ~!!」
と叫んでグラマリナは三人を解放した。そして急ぎ足で奥へ逃げていく。
「お前ら、魔女らしき人物がいる。付き合ってくれないか。」
「それは出来ません。あの方の侍女らでございます。私どもが呼んだのでございますが、ソフィアさまの行方を存じていると思います。」
「えぇ!! ソフィアの居所を知っていると言うのか!!!」
「たぶんに……。」
にっこりとほほ笑んで三人はグラマリナのあとを追って奥へ行った。
「どっちが弄んでいるのか理解できない。また明日にこよう。それとあいつらは俺の敵なのだな。さしずめスパイ……なのか。」
オレグを巡って急展開に事は進んでいく。
*)狙われたオレグ
昨日、オレグを訪ねてきた魔女の三人は、確かに妖精が呼んだ事には違いなかった。パブの女将とやりあって伸されたというが事実かどうか……。
「村にはまだ魔女がたくさん残っていたはず。あいつらを呼んでみるか。屁の突っ張りにはなるだろう。」
オレグは急いでパブの隣の病院へと向かった。オレグは魔女も従えずに、
「これでソフィアとリリーの行方が分かる。」
とはしゃいでいたが、教えてもらえないのが本当だろう。そのような点は考えられなかったという。
病院の前では、……死んだように元気のない農婦たちが佇んでいた。
「お前たち、どうした。……ゲ! 精気を吸われたのか!」
「あ、オ レ グ さま。……もう、だめです。生きていけません。死ぬ~!」
哀れな農婦に代わって魔女の三人はぴんぴんしていた。
「しゃ~ね~な~、俺の精気を分けてやるよ。それっ!!」
「シャキーン!!」x3
女たちの尻を叩いた。これで女たちが元気になるのがこれぞオレグの魔法! 不思議だ。
オレグが玄関のドアを開けるなり、
「お前がオレグか。……そうかお前がオレグか……。」
「お姉さま、どうされました?」
「お前らはなんだ、ソフィアたちの居所を知っているのか。やい、早く教えろ。」
「オレグ、教える訳はないだろう。私たちも今の居所は知らないわよ。」
「だったら、知っているところまででいいから、早く教えろ!」
「コペンハーゲンまでは連れて行ったが、その先は知らない。と言うか、あの方から教えてもらっていませんわ。」
「?? あの方というのは誰の事だ。それも教えろ!」
「あの方はあの方です。それ以上は知りません。会ったことも見かけたこともございません。」
「お姉さま、そのようなことを勝手に話していいのですか?」
「えぇいいのよ。どうせ何も解らないわよ。」
「でしょうが~……。」
オレグは可笑しな言い回しをするのだな、と思うが先走る気持ちからか深く考えもしなかった。
「お前らはいつソフィアを捕虜にしたんだ。教えろ。」
「昔のことです、もう忘れました……。それよりも今日はオレグの首を頂きに参上しましたわ。おとなしく殺されなさい。」
「バカやろう。殺されてたまるか。今にお前らを絞め上げてやる。覚悟しろ。」
「痛いからいやです。……お前たち帰るわよ。私たちでは敵わないわ。逃げるのが先よ。」
「はいお姉さま。食い逃げ……ですね!」
「そうなるわね。」
「お前ら~よくも~!!」
「あ、これお土産よ。どちらかの髪飾りね。ここに置いていくから私たちを見逃して頂戴。」
「ソフィアはどこだ!」
と大声で叫ぶが、
「知らないわ。」
「そうか今度飲み代は頂きにくる。利息は八割だ。覚悟しておけ!」
オレグは争いを避けて魔女の三人を逃してやる。魔女が置いていったのはリリーの髪飾りだった。
「これはリリーの髪飾り……。」
オレグは一人寂しく家に戻った。部屋が荒らされていた。
「く~ そ~ あいつら め~!!!」
オレグが館に行っていた間の出来事だろうか。それとも三人の妖精だろうか。オレグは館に行って妖精の三人を迎えに行ったが、
「オレグが連れて帰ったのでしょう?」
とグラマリナは言うのだった。
「グラマリナさま、私は急ぎデンマークに戻ります。ここで失礼いたします。」
「そうですか、気を付けて下さい。これは私からの餞別です。利用できますでしょうか。」
「はいありが・・・・・・・、……これは?」
「これは昨晩のアバズレ女の三人から頂いたものです。何か分かりますか?」
「いいえ皆目見当もつきません。ですがデンマークの物かと思います。戻って何であるのかを探します。これはありがたく頂きます。」
「そうですか、……それはとある教会の紋章かもしれません。」
「紋章?……紋章…… オオー! こ、これは……。」
「おおお! オレグはもう気が付きましたか!」
「いいえ分かりません。」
「ドテ!」
「ですが、どこかで見ているかもしれません。……もしや、あの三人を伸されたのは女将ではなく?……。」
「はいこの私ですわ。少し爪跡が残りましたが、大したことはございません。」
(あっは~ん、眠り薬でももったのかな~)とオレグは心に思い留めた。
それにしてもグラマリナにはそのような争った傷は見られない。やはりだろう(爪跡が残ったのは誰が、とは言っていない。きっと魔女に傷が残った)とオレグは考えた。
「グラマリナさま、いい働きでございます。」
「あらそうかしら。だと嬉しいですわ、オ~ッホッホ、オ~ッホッホ。」
オレグもつい釣られて笑いそうになった。
「釣った魚は大きいか!」
魔女らはオレグやソフィア、リリーの生活用品を盗んでいた。
「これは呪術に使わせていただくわ、ありがとうね~!」
何を盗んでいったのだろうか。そして、年増の魔女はオレグのなにに恐れを抱いたのだろうか。謎である。
オレグが急ぎボブの船に乗りグダニスクのマクシムの事務所を訪ねる。
「急用だ、俺をデンマークで降してくれないか。」
「はい金貨はすでにご用意してございます、明日の便にお乗りください。」
「おう話が早くて助かるよ。」
「積み荷は金貨八億枚でございます。」
「へ! 八億……。 三億……と、今年の五億枚も用意ができたのだな。」
これはポーランドのライ麦の価格が急激に下がる事だろうか。ハンザ商人はポーランドの金貨を得るためにどのような手段を講じるのか、楽しみだとオレグは考えた。
金貨 銀貨 大銅貨 銅貨
100,000 10,000 1000 100
「おい、このライ麦を買ってくれないか。」
「あぁいいぜ。銀貨で五千枚だ。」
「金貨が少なくて銀貨で支払う。」
「いや俺は金貨が欲しいのだよ。金貨五百枚のところを四百五十枚でどうだ。」
「いやいや、俺だって金貨は持っていないぜ。在るのはせいぜい四百枚だ。」
「だったらその金貨四百枚で買ってくれないか。」
「おお!! それでもいいのかい?」
「あぁどうしても外国から輸入したいものがあるのだよ。でもな~先方が金貨で支払え、俺は払うという約束をしていたのでな。もう、金貨が無くて首をくくる前まできているのだよ。」
他国の金貨が二十%も下がったのだろうか。ライ麦が二十%上昇したのだろうか。ポーランドのライ麦が金貨五百枚から四百枚になった。ライ麦が下がったのだろうか。
マクシムはデンマークに頭を下げてライ麦を売りに行った。
「今年は豊作ですので金貨八億枚でどうでしょうか。例年の価格でしたら金貨で十億から十二億枚でございます。」
「おおそうか。金貨八億枚で済むのだな。残りは銀貨で払ってくれと、言うても
ビタ一文も払わぬぞ。」
「はい結構でございます。私は金貨が欲しいのです。それと菓子箱を……。」
「おうおう、人が入れる位の菓子箱か! さぞかし重たいのであろう?」
「はい、お一人で持つにはちょうど良いかと存じます。二人では首が無くなるかもしれませんので、お一人がよろしいかと!」
マクシムは二便、三便と、多数のライ麦を送りつけた。デンマークは災害に遭ったばかりだからライ麦以外にも国の復興のための品が欲しかった。
オレグが城を建てた頃からデンマークの金貨が不足しだした。国の経済が混乱を始める。そこにオレグが今回の金貨五億枚と昨年の三億枚をデンマークに持ち込んでいる。さ~大変だ。国の大臣は金貨欲しさにオレグになびいてしまった。オレグは袖の下が思うように使えるのだった。
デンマークの金貨欲しさに貴族らも飢え出したのだ。手持ちの資産や領地のライ麦を多数売りに出した。
マクシムはデンマークの貴族らに対して、
「それは大変ですね。でもこれの決済が金貨でしたら、元の値で七割に値引かせて頂きますが、よろしいですね?」
「むむむ…………ム。」
「り、とは言わないで下さい。私も今年は大損をして金貨を手に入れたのですからお互いさまでしょうか。」
「分かった、今年限りだと思われるから、来年は値引かぬぞ!」
「はい重々承知いたしております。この損は来年に取り戻して下さい。」
「は~い次の貴族さま~どうぞ~!!」x20
マクシムはデンマークより多大な金貨の売買を為替手形で行った。手形の決済は半年後だ。貴族らはまだ金貨を手中に収めてはいないのだ。
「ぎゃ! 糞だ!」x21
「さぁオレグさん。金貨の布石は済みましたぞ。存分にデンマークをいじめていじめて、いじめ抜いてくださいね! この半年が勝負ですよ!!」
オレグは現金を持って城の建設材料を買いたたく事ができた。人足に支払う代金も一日の労働時間を増やしてしまった。
「日当だ、ここまでやり切れたら金貨で支払う。出来なければ銀貨で支払う。」
「旦那は鬼だ、二割も三割も得をしやがって……。」
オレグの建設資金は三割が節約できた。国の大臣にはその分多くの裏金が流れた。もうどの大臣もオレグに頭が上がらない。
「おい、オレグという貴族が居るが、お前、顔を見た事があるか。」
「いや俺はいつも顔を伏せているから全然見た覚えがないぞ!」
という会話が出る始末だ。
半年が過ぎた。大量の金貨がデンマークにあふれることになった。今度は国や貴族が金貨でもってライ麦やその他の食糧品、生活用品を買おうとするが。
「はい、このライ麦は金貨決済ですと二割増しになります。銀貨がお得です。いかがされますか??」
「どうしてだ、それは無謀だ!」
「はいこの国の金貨は多すぎますので暴落いたしております。」
「んな、バカな!」
(ハンザ同盟ですものカルテルは当たり前です。)とマクシムは思いながら、
「これが時価ということです。この私でも損して商いは出来ません。」
「そんな~あんまりだ~!」
オレグはデンマークから一番遠いエストニアの貴族と、そのエストニア出身の大臣には特に多くの金貨を渡してがんじがらめにしていた。遠方では金貨の暴落は関係ない。エストニアはデンマークの飛び地だ領地である。
ある日オレグは大臣を連れてエストニアの貴族を訪ねた。
「なぁ○x大臣。ここは匿名でいこうか。なぁ、○x大臣。」
「はい、して、今回のご用件とは?」
「国王の息子を捕まえて牢に入れてくれないか。まぁ人質だな。息子を返す代わりに国王を辞任させて次の王にアーベルを据えてはくれないか。」
貴族は、
「いやいや、ここは人質と国土の交換が先でしょう。国王から手足となる直轄の領地を巻き上げるのです。なに今の国王のエーリクⅣ世さまは、そのう、アーベルに暗殺させればよろしいかと?…‥ん? どうですか?」
「そのほう、アーベルを自由に扱えるのか。」
「はい共謀いたしまして次期王様になられましたら、地方都市を頂きまして貴族になれる契約を交わしておりまする。」
「そうかそうか。で、あと資金はいかほど必要じゃ。援助だ、遠慮はいらぬ。」
○x大臣は、
「はい。エーリクⅣ世さまを討つには軍隊を動かす必要がございます。デンマークの南に在ります国へ遠征に行った処で殺害を……。」
「アーベルの二人の部下はそちと、もう一人は?」
「はいオレグさま。それは申せません。もし漏れましたら私の命も★になってしまいます。」
「おうそちも悪だのう。」
「はいオレグさまほどではありません。」
「そうか! ア,ハハハ~!!」
(ヴァルデマーⅡ世が家臣の姦計で領地が奪われたのは、1223年です。ですのでエーリクⅣ世とは違います。)
エーリクⅣ世とはアーベルの兄である。一年に亘る期間の対立で二人の部下と計画を立てて、アーベルの二人の部下によってエーリクⅣ世は殺された。王位継承でもつれ、領地も少なくなって金貨不足・財政難に陥ったのだった。
1250年11月1日にアーベルは国王の座に就いた。簒奪である。
オレグは置いた布石がようやく実ったと考えた。
オレグは魔女らの居場所を掴んだ。
「ようしあの魔女らを捕まえに行くか!!」
とオレグはエレナやソワレ、ルシンダらを従えてオーフスに乗り込んだ。するとオレグまでもがオーフスで消えてしまった。どこにも居ない。痕跡すら残ってはいなかった。
オレグが行方不明になってしまった。
「エレナ、魔法でオレグは感知出来ないのですか?」
「ソワレさん、全力でサーチしておりますが、まったく感じとる事ができません。もう死んだとしか……。」
「まぁそんな~。」
「ソワレ、コペンハーゲンを探しに行きましょう。見つからない時はトチェフへ戻りましょうか。」
「はい、ルーシーさま!」
(ルーシー、……!)??
「私はルシンダです!」
と怒るのだが……。
オレグが居なくなってしまったのだ。
*)トチェフ村の領主は*****
一行はトチェフ村に帰った。ソワレがいの一番にオレグのことをグラマリナに報告した。報告を聞いてグラマリナはオレグの部下や協力者、はたまた魔女やパブの女将、倉庫の管理人に召集をかける。
「グラマリナさま、ビール工場と牧場や石工、大工らにも声をかけるべきです。」
「そうでしょうが、下々にはギュンターやユゼフ兄さまに任せます。それでいいでしょうか?」
「……ですね。早とちりをいたしましてすみません。」
「ソワレ、細かいことはいいのです。とにかくここはオレグが存在しているようにふるまって下さい。」
グラマリナは先にギュンターやユゼフ、ボブ船長とシビル、ルシンダを集めた。
「あなたたちはオレグが居るものとして考えて行動してください。ライ麦の買い取りや輸出はギュンターとユゼフ、二人で行いなさい。輸送はいつものようにボブ船長とシビルで当たりなさい。」
「グラマリナさま、ライ麦の買い付け代金はいかがいたしましょう。」
と言うギュンターに、
「マクシムに保証書を書いて渡します。ギュンターはその保証書で先にマクシムから代金を貰いなさい。残りは私に保証料としての代金の十%を。経費の支払い後の最後のお金はオレグのハンザの口座に振り込みしなさい。」
グラマリナの威圧的なマシンガントークに圧されて全員は、
「は、は~っ。」
と返事をするしかなかった。グラマリナは後ろで手の指を折りながら十%の金額を計算していた。エリアスはその様子を見て笑い出した。
「エリアス、何を笑っていますのかしら?」
「いいえ、なんでもありません。この子がお腹をくすぐっているからですよ。」
と愛娘の脇を抱えて上げてみせる。
「あらあらまぁまぁ、いつの子だったかしら……。」
とどえらい事を言うのだった。エリアスも、
「俺も覚えていないな~。」
ここの全員はえらいな領主に仕えているな~、と感嘆した。同時にオレグの偉大さに初めて気が付いた。
「爺はこのような教育はした覚えはございません。」
と言うが、グラマリナは、
「はい、毒学ですわ……。」
こうしてオレグへの送金は翌年も続いている。オレグが生きていれば口座のお金が減るだろうと思うが、口座の残金は教えて貰えないからもどかしい。
グラマリナは十%の保証料とは別に、農場やビール工場経費や給金の為に別途二十%の代金を預かって運用している。全体の二十%だ、多すぎるだろう。ギュンターらの給金を差し引いても金貨で1億枚にはなるのだ。
「この農場とビール工場はもう私のものよ!」
凍結のオレトチェ・ワインはアイスワインといわれ、高い金額で貴族に販売された。オレグの葡萄酒はトチェフ村の莫大な富を産む一大産業に成長しつつあるのだった。
「これも私の偉業ですわ!! 代金は頂きます。」
パブの女将は、
「隣のパブの女のオーナーは金の亡者だね~。わたしゃあの女は嫌いだよ!」
と言い放つのだった。パブのささやかな収益は確実にオレグの口座に振り込みがなされている。
金貨のやり取りが不十分ですので、いずれ書き直します。(120%おかしいので、責めないで下さい。)