第120部 ソフィア編 ソフィアとリリーの危機
1245年1月13日 神聖ローマ帝国・リエージュ司教領・リエージュ
*)ロベール・ド・トゥロットの修道院
「聖女ジュリアーヌって、どんな魔女かしら。」
「教会で生きていける位の、そう、きっと悪魔だよ。」
「でーも、ん? な訳ないでしょう。キルケーの方が可愛いかもしれないね。」
「だったらいいね。でーも角が在ったらどうしよう。」
「角ですか……。」
金髪のロングで可愛い容姿。年齢は二十歳ほど。五人の人格を持っているというのだ。ストレートが聖女。縦ロールは生意気。くせ毛はお転婆娘。丸めた髪は淑女。最後が****の悪魔の魔女の姿。
でた~物語を書けない時のなんとやら。下記の事項を書きながら今後を考えている。
当たらずとも遠からず!
リエージュは古くから教会により栄えた街だ。史上は六八二年から在る聖マルタン教会。その後も次々に教会が建てられていく。その原資はどこから湧いてきたのだろう。
リエージュ司教領は九八五年から一七九四年まで長く続いた。神聖ローマ帝国の一部でありながらも、北部の地域は統治が乱雑だったのだろうか、ネーデルランド同様に独自性を持って都市が繁栄している。
西側諸国の境界らしく戦争が絶えない地域だった。また富国強兵の原資も必要だったから、ネーデルランド(オランダ)との交易で栄えたのかも知れない。付近の国を侵攻したという史実は書かれていないが、隣国はフランク王国だからフランク王国が敵国なのだろう。
とするとネーデルランドはフランク王国の東の貿易の窓口だから、そのネーデルランドと仲が良かったとも思えない。当時のフランク王国は異端の南の地方の制圧にかかっていたし、西のスペイン等の制圧にも忙しかった。だから東の国の穀物を中心に大量に輸入が続けられることとなる。
フランク王国>リエージュ司教領<ドイツ。この関係で伸びたのだろう。
「ツートラックの政治だったのね!」
小国でありながらも財力に満ちた大国だった。
教会の建設や維持管理費は、貴族の寄進によるところが大きい。だが、未だに貴族という輩が私には見えてこないのだ。困っている……。
領主がすなわち貴族なのか。王族とはまた違う。寄進、すなわち富の贈与。収入すなわち土地、農民からの税、となるのか。触らぬ貴族にタタリなし。
リエージュ司教領の領主とネーデルランドのギルド館長とは親子という間柄に設定した。それは上記の理由によるものだ。
「オヤジ、今月もたんまりと美術工芸品を送ってくれよ。」
「息子よ任せておけ。今年も安く貿易品を送ってやるよ。」
となるのである。もちろん嘘であろう。
リエージュ司教領は宗教的、文化的で教皇の宮廷で演奏会を催している。どういう事か、金が在るから堕落していくのである。いわゆる修道院を世俗化して繁栄していく。髪を伸ばした坊主の始まりだ。(言葉が悪くてすみません)
また国民を搾取し続けていて一揆に国王が打たれたりしている。ここは後で出てきますので覚えておいて下さい。たぶん私は忘れますが。
これらのだらだら書きで今後のストーリーを考えて纏めなくてはならない。難しい……。
「ちょっとリリーさん。」
「なぁにお姉さま。」
「妖精になつて私の要請に応えてよ。」
「うん分かったわ。空から眺めてくるのね。待ってて!」
リリーはいつものようにシュルルル~と妖精の姿に戻り空高く昇っていく。小さい身体は直ぐに豆粒になり砂粒の大きさで見えなくなる。見上げるソフィアの首が痛くなった。
「今日は晴れているから、まぶしいじゃない。」
と言うと、空から黒い物が降ってきた。
「なによこれ! リリーの落とし物だが? 文字が書いてある。なになに……目に掛けてご使用下さい?? な~んだサングラスか!」
「お姉さま、そのメガネがあれば、私が見えますわ。序でに声も聞こえるよ。」
「あら~ホントだ。可愛いお尻が見えてる!」
「キャ! お姉さまのH!」
なんという便利な魔法道具だろうか。これでリリーの空からの中継が出来る。
リリーは、
「この街はとても古いわ。でも建物は大きくて背が高い。トチェフ村の長屋とは もう別次元だね。オレグが見たらきっと悔しがるね。」
「そうなんだ他には?」
「うん大きな教会が五棟も在るみたい。いや、六棟だね。星のように周りに五棟で、中心に馬鹿でかい教会、いや、これは、お城? だね。国の城だよ。」
「へ~そうなんだ。農民や町民の姿はどうなの?」
「うん街は市場があって賑やかな感じがするよ。農地はしっかりと管理されている。ライ麦が少し伸びているね。」
「街は大きいね、中央の道路は広いし、ムーズ川を挟んで両方で栄えているよ。川沿いが市場になってる。」
「へ~ぇ。」
「でもおかしいよ。今日は晴れているのに所々に雲がかかっているんだよ。だから霧に隠れて見えないのが…… 八か所も在るんだ。」
「そうか~リリー早く降りてきて。狙われているかもしれないよ。」
「うんそうだね。おおよその土地勘も掴んだから戻るね。」
リリーは無事に戻って、
「さぁ行きましょうか。」
「どこへ!」
「パブに決まっていますわ。宿屋があるパブを見つけたの。」
「どうやってさ。」
「うん企業秘密ね。……それよりもこの服は着替えようか。目立つし教会の異端に見られたら捕まっちゃう。」
「じゃぁピアスタの貴族の服がいいわ。出して!」
「は~いイワバの農婦の衣装だよ。これで十分でしょう。」
「え~イヤだ。チェックの入った服がいい。」
「お姉さま、柄が悪いですわ。女の品格が下がります。」
「この服でいいのです。街で見かけた柄ですから。」
「ふ~んそうなんだ。だったらこうしようか。」
ソフィアは自分の服を破いてしまった。
「んもうお姉さま、実力行使をなさるのね。だったら私も魔法で修理をいたします。」
すると、
「あっ、しまった! 継ぎはぎがチェックの柄になってしまったわ!」
「リリーとても上手よ。惚れ惚れしちゃう。」
「[@*\^:-\/*@]。」(チョベリーグー)
意気盛んなソフィアがパブのドアをくぐる。つられるようにソフィアの後から入店するリリー。ソフィアは明るく前を向くがリリーは悲しそうに下を向く。
「らっしゃい。なんにするね。」
「うん女将さん、ビール二つとアップルパイ。それにアンチョビのピザをお願いね。」
「外は寒かっただろう、温かい野菜スープはどうだい。」
「それはいいわ。」
「??…… どういう意味だい。」
「お姉さま、スープは召し上がるのでしょう?」
「あっ! ごめんなさい。欲しいです。二つください。」
「あいよ、すぐに用意するからね。」
少し大きい両手鍋を、
「ドスン!」
「これ全部食べておくれ。熱くて美味しいよ!」
「???……なにこれ。大きな石が入っているわ。」
「お姉さま、これは保温用の石ですよ。オレグ兄さまも時々使っていますでしょ。」
「そ、そうでしたわ……。」
両手鍋をソフィアが持ってリリーは鍋の石を押さえてお皿にスープを注いだ。
「お姉さま早く! 手が熱いですわ。」
「リリー指で野菜を掴んだらそりゃ~熱いでしょう。私のお皿にも入れて!」
「ガァッハッハ~! あんたらは上手いね。初めてだよ。それにそのお皿は初めて見たよ。」
「これは村の特産品です。他にもお皿は多数あります。」
「どれどれ木の板よりもいいね! パイとピザはこのままでいいね。ほらビールだよ。なんなら温かいワインがいいかな。」
ソフィアが返事をする。
「はい二杯目はホットワインでお願いします。」
「すると、あんたらは貴族かえ?」
「いいえ勤めているだけです。」
とリリーが言う。また続けてリリーと女将は話をする。
「どこから来なすった。ここは初めてだろう?」
「はいデンマークから来ました。この国はとてもいい国だから、見て来なさいと領主さまから言われました。ですから姉妹で旅に出たのです。」
「まぁずいぶんと、おっそろしい領主さまだね。女の二人旅とは物騒だよ。」
「はい世間知らずのお嬢様ですもの。どこに居ましても命を懸けています。」
「おやおやまぁまぁ、ご立派だこと。」
女将は目を丸くした。
ピザを食べるソフィアは一口で終わった。リリーは二口で終わった。
「いや~よっぽど腹空かしてたんだね。次はどうする?」
「はい焼き豚と豆の煮ものをください。黒パンに載せた豆がいいな。」
「あいよ、すぐに持ってくるよ。」
それぞれが三人分が出された。
「今晩、どうするね。」
「はい、お世話になります。空いていますでしょう?」
「そうだね、たくさん空いているね。」
「お~いネルラン。部屋はたった今塞がったよ。嬢ちゃんたちは一番奥に通してくれないか。」
「あいよそうするよ。……良かったね。すんでのところで追い出すとこだったね。広い部屋だからゆっくり休んでおいき。」
「はい、ありがとうございます。」
ソフィアは常にワインかお肉が口に入っていて一言も話していない。そんなソフィアにリリーは問いかける。
「お姉さま、どうです、なにか物音が聞こえましたか?」
「そうね、宿泊するのは男たちだね。靴音が大きく響いていたわ。人数はそうね、十二人というところかしら。」
「なんなのでしょう、男が一ダースも!」
「あぁ、あれは神聖ローマ帝国の神官さまたちだよ。新年の行事が終わって明日にでも帰られるのだろうよ。毎年の風景さ。」
「へ~そうなんだ。オランダの木靴ですか~。」
「そうだね、少し珍しいよ。」
神聖ローマ帝国の靴は黄麻と布製で編んだ革底のサンダルのような物が使われる。したがって歩く音、足音は響かない。
「お姉さま、どちらが嘘なのでしょう。木靴が本当ならばデンマークの兵士かもしれませんわ。」
「…… 。・|・。……」
「ですからお姉さま。もうワインはお止め下さい。私一人では戦えません。」
「もう結局そうなるのね。……これも運命。嫌だな~!」
「はい、ここまでです。お勘定を払ってまいります。」
「すみませ~ん、ごあいそうをお願いします。」
「それは間違ってるよ。ご愛想”とは店の者が言う返事だよ。だからさ、普通にお勘定をお願いします、と言えば私は、ご愛想、と返事をするのさ。どうだい分かったかい。」
「そうなんですか、愛想をつかされたらここには泊まれませんね。」
「?? あいよ、部屋に案内してやるよ。……全部で銀貨四枚でいいよ。」
「お高い、いやお安いですわ。ありがとうございます。」
「そうかい? なんならもう一枚払ってもらうかね。」
リリーは店内を見渡していてバラの花が飾られているを知っていた。
「このバラは高いのだろうな~。」
バラを見るリリーに女将は、
「この時期は温室で咲かせるんだよ。高価だとよく知っているね。」
「はいバラの香りが薄いですもの。それ位は判断が出来ます。」
「では銀貨を二枚お支払いしますので、バラの花を全部ください。私、お花があるとよく眠れますの。」
「んん?……そうかい。今用意するいよ。銀貨六枚ね。ありがとう。」
「お前さん、シーツは置いているだろうね~。」
女将の大声に亭主は返事した。
「階段を上った所に置いたままだったよ。持っていってくれないか。」
「あいよ……もうズボラしやがって……。」
と女将は小言を漏らす。
「この部屋だよ。ゆっくりとお休み。」
「はいありがとう。……とても綺麗なお部屋です。」
二階の部屋に案内された二人。
「ねぇリリー。この部屋には窓が無いよ。親父が選んだ理由はここにあるのね。」
「逃亡防止ですね。理にかなっています。」
リリーはバラの花を使い部屋を強固に作り替える。ドアも二重にした。らら? 二重にしたドアが元のバラの花に戻った。
「あらあらお姉さま。もう遅いですわ。わたくしたちはすでに捕獲されてしまいました。」
「あら~ずいぶんと早かったわね。銀貨の6枚を損したわ。もっと飲んでおけば良かったな~!」
ソフィアはどこまででも神経が図太い。リリーは逆に神経は細い方だ。
「お姉さま、そこ違うでしょう。もっと悔しがるとか、逃げる手段を講じるとかするところでしょうが? 違いますか?」
「うんそうだね。でも今日はお休みしましょう。夜は見張りだけで襲っては来ないでしょうよ。」
「そりゃ、そうですが……。」
1245年1月14日 神聖ローマ帝国・リエージュ司教領・リエージュ
*)バカだった二人
いともたやすく捕虜になった姉妹。朝になり腹減った”と騒ぎだした。見張りの兵士は中の二人があまりにも騒がしいので女将に頼み込み朝食を届ける。
「ほら、騒いだ甲斐があったでしょう。」
「昨日の残り物で喜ばないで下さいまし。」
リリーは機嫌が悪い。それもそのはず、退魔ようの香の煙が満ちていた。良い香りだが魔法を使う人間には苦痛を与える。
「リリー食べないの? 食べないなら私が一口で頂くよ。」
「お姉さまのいじわる。私は食欲がありません。逆に吐き気がいたします。」
ソフィアが笑ったのはそれが最後となった。香の煙はとどまる事無く流れ込んで来るのだった。
「もうお姉さま。私は吐き気で死にそうです。……だから隅に逃げて下さい。」
「リリー大丈夫なの? どうして隅に行かなくちゃならないのよ。」
「すぐに分かり……ゴゥェ~、ゲ~!!」
リリーはたちまちお腹の境界の物を全部吐き出してしまった。もう部屋中にリリーの私物や絹の反物などがたくさん満ちている。広い部屋が用意されたのはこういう意味があったのかと思い知らされた。こんなにも在ったのかと言うほどに出てくる。凍りついたパイソンが一頭出てきたのには驚いた。
「お姉~ざま~、じぬ~!!」
「ほら、このビールを飲んでみなさい。元気になるわよ。」
「そうかしら……。」
「ゲボ~ッ!!」
「無理だったね。……。 ごめんなさい。」
リリーはとうとうベッドに倒れてしまった。万事窮すである。ソフィアは介抱でリリーの背中をさするがそれまでである。もうどうしようも無かった。
「ギブUPよ! ここから出しなさい。リリーを解放してあげて~!!」
「……。」
「お願い。私はなにもしませんから、リリーを助けて頂戴!!」
ソフィアはドアを蹴破るほどにけり続けた。ドアの下はボロボロになっていた。
「よし許可が出たから連行する。騒ぐとブス、だぞ。」
「私はブスではありません。かわいいです。」
「??…今麻布の袋で包むから騒いだら妹を突き刺すからな。あ、あぁん??」
「はい……。」
ソフィアはおとなしく麻布を被ってひもです巻き状態にされた。
「これくらいでいいだろう。……おい生きているか!」
「うぅ~、うううううう~~~!!!」
「生きているからいいか。逃げだしたらブス”だぞ。いいな。」
「うううううんんん。」
「そいつは麻布を被せるだけでいい。明日までは起きないらしい。」
「はい……。」
若い女の返事が聞こえた。
二人は馬車に乗せられ揺られて運ばれた。二人は共に三人の男に抱えられて牢に運ばれる。ここの牢も魔女の結界が張られていてリリーは魔法を封じられている。
「あぁ~ぁ、ドジッたな~もう。」
何度も何度も同じ手にかかって捕まる二人だった。魔女の常套手段だ、ほんとに学習しない二人だ。オレグが居ないとこうもたやすいのもか。
ロベール・ド・トゥロットの修道院の座敷牢に幽閉された。
------完-----
十一世紀から始まり十二世紀は、豪華絢爛の修道院の新しい時代と変貌していく。ダンテ・アリギエーリ(1265年~1321年9月14日)に代表されるように中世独自の神学が発達していく。
------完、ちゃ~う!-----
1245年2月14日 神聖ローマ帝国・リエージュ司教領・リエージュ
それから一か月が過ぎたころに、
「おい、これから移動する。……おい……こら、起きろ!!」
「お腹が空いて動けません。どうせす巻きにして抱えて運ぶのでしょう?」
「ま~そうなるわな。だったらそのまま寝ていろ。今、魔女を入れてやる。男でなくて残念だな。」
「えぇいいわよ。どうだって……。」
六人の魔女が牢に入り二人を麻の袋に押し込む。
「ねぇあんたたち。押し込まないで袋を被せなさいよ。」
とソフィアは言う。
「細くなられたから大丈夫ですわ。」
と魔女が言う。
「そうね、お姉さまは胸が支えないわね。」
とリリーが言う。
「まぁ~お二人とも、もともとが小さいから無くなりましたか?」
と魔女。
「ブ~!!」x2
「ちょとあんた! どこを触っているのよ。そこは掴む処じゃないわよ。」
「いいじゃありませんか。掴んだら元に戻るかもしれませんよ?」
「ブ~!!」
「ブ~!!」
二人は抱え上げられたまま運ばれた。今回は念が入っていた。
「ちょとあんた。耳元で大きな音を出さないでよ。うるさいわ。」
「これでいいのです。ご自慢の耳で周りの音を拾われたら大変ですもの。我慢してくださいね。」
「ブ~!!」
本当に二人の顔の前で金属を叩くから脳みそまで音が響いている。ソフィアにしてみれば五感の全部が遮断されたようなものだった。味覚、視覚、聴覚、触覚、…… 臭覚。
「あっ忘れるところだったわ。あんたには腐った卵をかけるわね。臭い封じをさせてもらうからね。」
「ブ~!!」
「第六感。オオカミに変身!!」
「うるさい、黙れ! おたんこなす。」
「パコ~ン!」
と兵士はソフィアをぶんなぐる。第六感とはただの掛け声なのだが……。
「なにを!! このおたんちん!!」
「パコ~ン!」「パコ~ン!」「パコ~ン!」
バカにされた兵士は怒って三度も殴っていた。おたんこなすとは、おたんちんが語源なのだが,それは遊女達が男をバカにした言い方で…………、日常的に使うには恥ずかしいのが語源となっている。
「男から言わせていただく……差別用語だ~!」
兵士が言うのは誤りでソフィアが正解。男は使えない言葉だった……。
「う、動けない、力が入らない……。」
頭をぶたれてへたったソフィア。もう一言も話せなかった。