第12部 最初の地 コバレは最悪だった
ポーランドはドイツに戦災補償の要求を出していますね。これがまかり通るなら世界は混とんとした世界になります。ソビエトなんかは手当たり次第でしたから、どうなんでしょうか。第二次世界大戦は、アメリカの陰謀でしょう? 銃の世界ですから今後も自国の利益の為に、と、また何処かに戦争を嗾けるとか? ありそうです。
1241年4月11日 ポーランドのグダニスク
*)最悪なコバレ
昨日、俺らはポーランドの村、グダニスクに着いた。今日は荷物の整理と目録と現品の照合作業が待っている。二人一組で検品作業にかかる。妖精にはリストの読み上げを、俺とソフィアは荷姿の開梱と照合を行う。3日はかかってしまった。
次に馬車の購入になるが、馬が無いのだ。入植者が買い占めて行った後だからとにかく馬がいない。どこか近くの村まで買い取りに行かなければならない。
1241年4月14日 ポーランドのコバレ
「リリーさん! 今日からよろしく頼むよ。港の荷物みたいにさ、この俺を境界経由で近くの村まで届けてくれないか。」
「無理を言わないで。行ったことの無い所には行けないよ。鏡魔法で先に調査して片っ端から調べてみるわ。待ってて。」
「よろしくね。リリーだけが頼りだから。オレグはヴィスビューから調べておけば良かったのじゃないかしら?」
「ごもっとも、ソフィアさま。」
「ゾフィもリリーと一緒に行けるのかい?」
「鏡魔法と境界の魔法とは一緒に使えないわ。先に村を探してからだね。境界の魔法を使うにはね。」
ノアが変身魔法でゾフィになっているのだが、ソフィアそっくりに化けている。ソフィアの子供で良いのだろうか。それとも妹か! いずれにせよ、女の子の方が何かと都合が良いと思う。このまま、ノアよ、汝は女たれ!
「イヤだよ。でも、女の姿はいいぜ。なんたって揉み放題だしな?」
「もう、ノア! バカを言わないでちょうだい。私みたいに大きくには成れないくせにさ!」
「俺だっ、いや、私だって、ミルクを沢山飲めばさ! パイパイも大きくなるさ! でもさ、ここはホルスタインは居ないんだよね。」
「腐乱した犬は見るけれども。」
「何だ? それは。俺は見た事はないぜ。」
「フランシタイン、これで解るかい?」
「すまね~な、ノアさんよ。来生でも言わないでくれよ。気持ちが悪いぜ。」
早いものだった。バカな事を話していたら、リリーが戻って来たのだった。
「オレグ。この先には、コバレとコルニク。その先には、トチェフが在るよ。トチェフには大きい川が在るからさ、少しは裕福かもね。そのず~つと先には、ツァルリンという村が在る。どうするの?」
「先に、コバレとコルニクに行くさ。近くて遠い村だろう?」
「ううん、違うよ! 遠くて近い村だよ。」
リリーの魔法で、遠くの村も直ぐに行けるのです。
「そうか、では、馬が手に入るように祈って行きましょうか。」
「OK! オレグ。コバレに行くよ!!!」
リリーはゲートを開いて俺らを蹴飛ばした。別の土地に入る門? みたいな不思議な魔法は、ゲート! と言うらしい。この蜃気楼のような、陽炎に飛び込めば目的地に到着する。何とも便利な魔法をお教え頂いたことか。あの魔法使いには感謝すべきか。
三人はゲートに飛び込まされた。お尻を蹴飛ばされてようやく飛び込んだのだから、俺としても情けない。
「オレグ! なんであんただけが失神してるのよ。もう情けないにもほどがあるわ!」
暫くして目を覚ました俺にリリーは、悪態をついたのだった。
「くそ! バカにするでない。俺さまだっていろんな事情があるのさ。」
「な~に? その事情とはさ。話せる事は無いよね~~~~!」
クスクスと、他の二人が笑っている。リリーはことさら大声で笑っていた。
「ばーろう! 今に見て措け。・・・・・・。」
俺はぶつぶつ言いながら状況把握に努めた。ここはコバレか。何だか寂しい村だと思った。クダニクスに近いにもかからわずに発展していない。どうしてだろうか。
「おい、リリー! ノアはお呼びでないのでな。また空高く飛んでくれないか。この村は少し寂し過ぎるようだ。原因を知りたい。」
「あいよ! 少し待っててね。」
リリーは変身をといて直ぐに舞い上がった。ノアもその後に続いた。捻くれのノアだな。この寂しい村の原因が在る筈だと、俺は考えた。
「オレグ! ただいま。見てみたけれども、異常は無いよ。ライ麦畑も一面に広がっているしね。幹線の道も大きいよ。」
「いや違うよ、リリー。この村は湿地が多いんだ。ライ麦の畑もさ、きっと毎年同じように種蒔きしてるからさ、収穫が少ないいんだ。」
「そうか、この地は開拓の余地は少ないな。で、森はどんな感じだ。」
「ねえ、リリー。森は在ったか? 林が少しと小さな茂みみたいな森? が在った位だろう?」
「そうね、ノアが言う通りね。オレグ! まだ調べてみようよ。他にも隠れた事が判るかもよ。」
「そうだな。コルニクに向かおうか。道中で観察してさ、村人に尋ねてみるさ。」
「でだ。馬が居る所はなかったかい?」
「馬は見てないな~。ん~、小屋に入れられていたら見えないよね。」
「OK! お二人さん。偵察をありがとう。」
俺ら4人は歩きながら見て廻った。人口はどれ位だろう。見える範囲では農作業をしている人は居ない。この時期の農作業は、
「なあソフィア。この時期の農作業は何があるんだい?」
「種蒔きの準備があるからね、農地を耕すのが普通かな。まだ寒いので種蒔きはもう暫くは無いだろうけれども。」
「だよな。いや、違うよ。それは3月の農事だよ。だから今は家畜の放牧のはずだから、村人は森に家畜の放牧に? あれ、おかしいな。」
「オレグ。おかしかったら笑えば?」
「なに言ってるんだいノアは。ここには森らしい森が無いんだろう?」
「ああそうだな。無いな。」
「ノア、近くに川が在ったかい?」
「無いよ。沼地が在ったようだけれど、草地との判別が出来ないからさ。」
「そうか、草地が放牧地にならないのならば、湿地しかないんだ。」
「そうだね。オレグ、ここは止めましょうか。馬が見つかればいいからさ馬と荷車を探しましょうよ。」
「だな。ソフィア。」
「ではリリーさま。再度上空より偵察をお願いします。」
「OK! オレグ。任せて!」
リリーは任せて、と言って飛んで行ったが戻ってこなかった。待つ事1時間あまり、退屈したので先に行く事にした。
「リリーは探してくれるから、俺たちは先に進むよ。行こう。」
三人は歩き出した。ノアは誰も居ないと思ったのか、変身をといてしまう。ソフィアはやや不機嫌そうに先を歩いている。そうか、ソフィアの右手はグーになっているのだな。早くリリーが戻ってくれないと困るな。そう思いながら歩いていると、こちらに向かって来る人が居た。
「グーテン・ターク。」
「グーテン・ターク。どちらからおいでなさった?」
「グダニクスからです。この後はコルニクに向かう予定です。」
「そうですか、お気を付けて!」
「すみません、ご老人。この村は少し寂しいようですが、何かあったんでしょうか? あまりにも人を見かけないものですから。」
「あぁあぁ!そうでしょうとも。ここの若いもんはみんな金で買われて引っ越しました。なんでも、ドイツ騎士団の人が来てから、ドイツの国境付近に大きい都市を作るから、とゆうてね。」
「ああ、なるほど、よく分りました。ここは放棄された村になるんですね」
「そうですな。」
この老人は老人が故に取り残されてしまったのだろう。残念だが老人と少しばかりの働き手だけでは村の維持繁栄は出来ない。自給自足しか残る道は無いのだが、塩とか魚や肉とかを買うだけのお金は出ない。
後10年もすれば無人の村になってしまうか、どこそこの領主が買い取ってくれるのを待つしかないのだ。
「もう理由が判った。さ、先に進もう。リリーはまだかな。ノア! リリーを呼べるかい?」
「うん、呼んでみる。」
「おい、こら! アンポンタンのリリーやい。早く帰って来い。ソフィアさまが怒ってるぞ!」
「なによ、もうひどいわ! ゾフィはこんなはしたない言葉は使ってはいけません。おしとやかになりなさい。それもこれも、オレグが悪いのですわ。」
「なんでこの俺が悪者になるんだい?」
「早く気付きなさいよ、おたんこなす。」
「分ってるさ、月一のあれ? だろう。」
ソフィアは怒って俺を叩きまわした。ノアに助け舟を求めるも、却下される。
「はは、そう怒るなよ。腹減ってかなわないのだね。」
「ゾフィ! リリーはまだかい?」
「まだだ。もう村はずれに居るようだよ。ここには数人の村人が居るので話しを聞いているそうだ。」
「ソフィアさん、一声! お願いします。リリーが帰る様に、念、を込めて」
「余計にお腹が空くよ。一声だけね。」
「ウオ~~~~~オゥオ~~~~ン。」
オオカミの遠吠えだ。ここは特に何も無い所だからさ、声も通ると思うが。
「ソフィアお姉さま、向いた方向が真逆でしてよ。これでは聞こえないよ。」
「もう、オレグのバカ! しっかりしてよね。損したじゃない。」
「そうでも無いさ。リリーには聞こえるよ。」
暫くしたらリリーは帰ってきた。遅れた理由はこうだ。
「遅くなりました。人が多くて隠れる場所が無かったの。妖精がバレたら困るのだから、人の居ない所まで歩いて来たのよ。私にだって都合はあるのよ。」
「はは、リリー。催促してごめんなさい。ソフィアがどうしても、ね? 月一の事だから許してね。」
「何ですって? この私を侮辱するのね。許さないわ。」
「オレグ、早く銀貨二十枚出しなさい。」
「おいおいおい! 十枚で十分だろう? 後の十枚は明日の分? じゃあー無さそうだが・・・・・。いいよ、二十枚を出すよ。」
「オレグ! 女を怒らせたら怖いぜ。もう少しはソフィアを可愛がってやりなよ。」
「今後はそうするよ。損するし、痛い目にも合うしね。」
リリーとゾフィは、ゲートでクダニクスに昼食の買い出しに行った。俺はテーブルになりそうな物を探すが、有るはずがない。人が居ない村では本当に何も無いのだ。仕方なしに道の平たい所に布を拡げて待った。
「ソフィア、農民を金で買うとは、初めて知ったぜ。こんな事も有るのだな。」
「そよね、人が少ないと必然的にそうなるわね。大きい都市を築くには沢山の労働力が必要だわ」
「煉瓦も焼くんだろうし、沢山の森が消える事になるんだね。
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当時の都市は煉瓦積の建物だった。大量の煉瓦を焼く為に、莫大な森林が切られ消費されていった。話しはここで終わればいいのだが、森林が無くなるという事は放牧が出来なくなる事になる。家畜の飼育は森で飼育するのが一般的であった為に肉の供給が絶たれてしまう事に繋がったのだ。当然の如く、広範囲の乱開発だから気候も変動した。
増えた人口を養うために、家畜用の放牧地も農地に変えられた。このせいもあり肉は減り、土地は無理な作付を行っていったので、穀物も不足気味になっていくのである。1500年ころより、食糧を求めて農民一揆が始まり出す。
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「ああ、そうだね。森が消えたら木の実はもちろん、キノコも無くなるし、森の動物も居なくなる。それこそ肉が食えなくなる事に繋がってしまうんだ。」
「お肉が食べられなくなるなんて、最低だわ。ね! 私が生きている内は大丈夫なのよね。どうなの。」
「心配はいらないよ。まだ百年も先の事さ。な?」
「でも来生に関係して来るわよ。いいの?」
「そうなんだが、歴史は変わらないからどうもしようがないよね。」
「ホントね!」
「そのうちにさ、人工の肉が開発されるさ。」
「でも、そこまでは転生を繰り返したくは無いわね。」
「ごもっとも。」