第116部 オレグ編 マルボルクの落城
ポーランド国王 コンラトⅠ世の、1230年前後の時代になります。年代が違いますがお含みおき下さい。
詳しい内容が分りません。殆どが架空になります。
マルボルクはドイツ騎士団を招聘した。
1245年4月1日 ポーランド王国
*)ポーランド・コンラトⅠ世
コンラトⅠ世は、家臣のシンカら十人ほどを呼んで協議していた。1226年の事である。
「なぁシンカ。隣国のプロイセンを、なんとか滅ぼすことは出来ないかな。」
「ブランデンブルクの腹いせに、東へ侵攻なさるのですね?」
「いや、ワシは純粋にだな、隣国にキリスト教を布教させたいのだよ。」
「はい東の隣国には、1228年よりポーランド騎士団を作り侵攻を続けてまいりましたが、未だに征服できずにおります。」
コンラトⅠ世は、プルーセン人にキリスト教を押し売りしようと考えたのだ。これは聖教戦争、宗教戦争になる。それがどうして滅ぼすと言うのだろうか。
コンラトⅠ世は、
「異教徒のプルーセン人にキリスト教を教えなくてはならない。」
プルーセン人にとってははた迷惑な事である。コンラト1世は宣教師ではないから、武力で布教を開始した。いや戦争を開始したのである。
コンラトⅠ世も旧ユダヤ教・現キリスト教の宣教師に騙されたのだ。
宣教師はキリストの教えに従いなさい。従いて徳を積めばきっといい事が死後に待っています?
「おう、そうだな。この俺は自国をキリスト教に改宗した。次はプルーセン人にキリスト教を布教するのだ。」
死後に訪れるいい事、とはなんだろうか。
理不尽な教えである。改宗が目的なのか領土が欲しいのかは分からない。野蛮人=蛮国の扱いだったのか、親子で七つの国に分裂されていたから親子では喧嘩が出来ない、隣国へ侵攻だ! なのかもしれない。
分裂させる意味とはなんだろうか。だだっ広い国土の開発が目的だったのか。否! 子共から王座を簒奪されないようにという、王自身の保身のためだった。否、隣国からの侵攻に備える防波堤だった。
とある家臣の奸計が採用された。自国の腹が痛まない方法だった。
「いい計画を考えました。今のハンガリー国にいる十字軍の騎士修道会を、隣国のプロイセンに侵攻させればいいのです。いかがでしょうか。」
コンラトⅠ世は、
「そのような方法があるのか、ソチは÷だのう!」
「お褒めを頂きありがとうございます。冬季オリンピックも開催出来ました。」
「であるならば、コンラトⅠ世としてはどのようにすればいいのだ。」
「はい朱印を与えるのです。隣国のプロイセンはお前らの国として、認める”のですよ。」
「そうかこのワシが国として認めるだけでいいのだな。」
「はいさようでございます。つきましては、この私は新しい国の大臣になりたいのです。許可をお願いします。」
「おう分かった。富の十%をワシに贈れ。よいな。」
「はい喜んで~!」
「ふんバカめ! 末代がどこだか想像ができそうだ!」
この家臣の末代は、後のポーランドによって絶えてしまう。
1245年4月4日 マルボルク
*)マルボルク
「エルブロさま、大変でございます。十字軍の騎士修道会が北のプロイセン地方へ侵攻を開始いたしました。」
「ギュンター、それは真か!」
「いいえ、そのう~。」
「??・・・・・??」
「エルブロンクのステファン伯爵さまが討たれました。」
「そんな~ステファンさまが、」
「ステファン伯爵さまはおそらく、十字軍の騎士修道会の方針に従わなかったからでしょうか。はいとても残念です。」
「たぶん東のプロイセン地方と交易を行っていたのがバレたのだろうか。」
「今、連絡しに来た騎士と家臣をここへ通します。」
「あぁ食堂がいいな。きっと気力も腹も減らしてきているだろう。」
「はい食事の支度を始めておきます。また奥様をお借りいたします。」
「すまないな、すぐに頼む。」
騎士の二人と家臣の二人の四人が食堂に通された。
「こちらで少しお待ち下さい。ユゼフさまとベマさまもお呼び致します。」
「はい、その前に水を頂けませんでしょうか。」
「今用意させておりますので、じきに持ってまいります。」
「忝い。」
ギュンターは退室して一人のメイドが水を運んできた。その水を奪うようにして四人は飲みだした。
「お代わりでございます。」
差し出されたのは一杯のビールだった。アルコールは少な目の子供用の飲み物だ。
「こ、これは忝い。」
「あとは後程に! もう領主代行さまがお見えになられます。」
まだ飲みたいのを我慢して、身だしなみを気に掛けている。
「ここはそのお姿で十分でございます。綺麗な服装は逆に良くありません。」
「はぁ、そうでしょうか。」
「はい緊張感が飛んでしまいますわ!」
「むむむ……。」
「エルブロさま、この姿で失礼いたします。」
エルブロがドアを開けて入室した瞬間に家臣がそう言ったのだ。
「良いよい一向に構わぬぞ。それよりもエルブロンクの実情を話してはくれぬか。ステファン伯爵さまは無事なのか。」
エルブロに遅れてユゼフとベマが食堂に入ってきた。
「まぁステファン伯爵さまがどうされましたか!!」
「はい、捕虜となられて座敷牢に幽閉されました。」
「打ち首ではないのだな。」
「はい、ですがコンラトⅠ世さまがキリスト教を受け入れろと、迫ってありまして、それを頑なに拒んであります。」
「ステファン伯爵さまらしい行いだ。だがエルブロンクは十字軍の騎士修道会に占拠されたままでございます。」
「どうしてリューベック出身の領主さまがドイツ騎士団に打たれるのだ、意味が解らん。」
「十字軍の騎士修道会の連中でございます。ドイツ騎士団とは違います。これはポーランド王のコンラトⅠ世の差し金でしょう。」
「国王がなぜそのような事をするのだ。理解出来ない。」
「はい、ひとえにキリスト教の布教の為でございます。」
「く~もうすぐライ麦の収穫になり、納税の時だというのに。」
「はい、コンラトⅠ世はあの土地にプロイセンという国をつくりたいようです。ですので十字軍の騎士修道会に侵攻をさせてエルブロンクを陥落させたのでしょうか。」
「それでも意味が解らぬ。」
「私はここで失礼いたします。ユゼフ、あとは頼みましたよ。」
「はい、お母さま。」
妻のべマは退室した。
「お父様、これは国王の家臣が÷でございますので、もうひと捻りの計画があるのかも知れません。」
「どのような事が考えられるのだ。言うてみ。」
「では述べさせて頂きます。エルブロンクはやや湿地が多ございます。それで十字軍の騎士修道会にエルブロンクの開発させる気なのでしょう。」
「それがどうしたと言うのだ。」
「はい、他国の資本を入れさせて、大きくなった都市をドイツ騎士団に打たせるおつもりでしょうか。」
「ポーランドはドイツに西の土地を割譲してやったばかりだ。それで東の土地を手に納めたいのか。」
「はい、これもドイツ騎士団に従順になる手段かと思われます。」
「えぇ~い、まだ判らぬぞ。」
「それもこれもポーランドを守る為でしょう。ドイツ騎士団と戦争になれば、このポーランド国はどのようになりますでしょうか。」
「オレグが言うように負けて奪われるだろう。」
「はいさようでございます。ドイツ騎士団は欲張りですので、このポーランドを通り越して東のエストニア辺りに侵攻したいのです。」
「だからポーランドを足掛かりにして。東を攻めたいのか。」
「それとオレグさんが言っていました。ポーランドは一大ライ麦の産地まで昇り詰める土地だと。」
「そうかポーランドも開発して富を集約、手に入れたいのだな。」
「はい、そう判断して間違いはありません。戦争には食糧が大量に必要です。」
「く~~~~このマルボルグもドイツ騎士団に侵攻されるとオレグが言っていたのが、いよいよ現実になるのか!!」
「はい、この春のライ麦はすぐにオレグに売却いたしましょう。納税は多く納めるほどマルボルクの損となります。裏金をオレグに管理させましょう。」
「おうおう。それはいいとしたら、オレグの金を管理させるには?」
「はいギュンターを差し向ければいいでしょう。きっとオレグもそう言いますでしょうか。」
「その後にマルボルクはドイツ騎士団を招聘しようか。」
「はい、ステファン伯爵さまには申し訳ありませんが、ここは見捨てます。」
「えぇ!!!! そんな、領主さまを見捨てるのですか!!」
領主の家臣らは大声で驚く。
「エルブロさまにお助け頂きたくて逃れてきましたと言うのに。」
「それはあんまりだ! と言いたのだろう。マルボルクには兵力は無いのだよ。それだけでも意味する事は理解できよう。」
「はい、申し訳ございません。」
「お前たちはここに残り妻子を呼べばいいだろう。ワシが雇ってやるよ。」
「ではステファン伯爵さまにはなんと申せば……。」
「黙っておればよい。そう、黙って……。」
「お前たち、食事の用意が出来たであろう。食べて休んでくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
「ユゼフ会議室へ行こうか。」
「はいお父様。」
べマはその別室にお茶の用意を整えて待っていた。ギュンターは使者に給仕を終えてやってきた。
マルボルクのデンボウスキー家の会議が始まった。
「トチェフのグラマリナとルシンダ姫も同席させたがいいだろうか。」
「はいお父さま。かのオレグにも参加させたがいいでしょうね。」
「お待ち下さい。すぐにドイツ騎士団を招聘する訳ではございません。ここは内密に致しましょう。」
「ギュンター、それはどうしてだ?」
「はいオレグさまにはライ麦を買って頂きますので、秘密がよろしいかと。」
「そうだな買い叩かれては困る。また口から生まれたグラマリナにも黙っていたが得策であろうか。」
「秋のライ麦を高く買わせてからの方後がよろしいでしょう。ドイツ騎士団の動きもまだ分りませんから。」
「うむ~裏金をどのようにして作ろうか。悩むな~!」
1245年7月12日 グダニスク
三十年後、マルボルクはドイツ騎士団を受け入れる。そうしてドイツ騎士団は1274年からマリーエンブルク城(マルボルク城)を築くのだ。バルト海沿岸地方征服の拠点にされた。それだけ土地が豊穣だったという事か。
後のプロイセンはドイツ騎士団国となり併せて統治されていく。
*)オレグの慧眼
「オレグの旦那。東のエルブロンクが十字軍の騎士修道会に侵攻を許したそうです。」
「とうとう侵攻が起きたか。それで領主のステファン伯爵はどうなった?」
「十字軍の騎士修道会の統治にも、地元の貴族や家臣は必要でしょうか。でも今年いっぱいでしょうね。」
「そうか、ルシンダもピアスタも悲しむだろうな。」
「するとマルボルクはもう落ちた頃だろうな。」
「でしょうね、マルボルクへ向かう騎士団が多いようです。」
「イワバはどうだい、何か情報はあるかな。」
「あそこは山奥ですので、なにもないでしょうね。」
「そうだよな、俺のトチェフ村と一緒だな。でも対策は講じなといけないな。あ~この時期にマルボルクの陥落かー!! ちきしょう!!」
オレグはトチェフに侵攻されないような方法が無いか、考えた。
「むむむ・…・。」
「旦那、難しい顔になっています。これでは絵にも描けませんよ。」
「そうかぁ? ハンサムに描けば絵になるぞ!」
「で旦那。冗談がでたのでしたら、その方法も出たのでしょう?」
「あぁライ麦は飯になるから戦争には必要だわな。」
「はいもちろんでございます。」
「では服や木工、石、ロウソクなどの食えない物を作ったらどうだ。」
「はい貿易の相手国となります。打たれる事はありますまい。」
「そうだろう、そうだろう!」
「旦那、後ほどデーヴィッド商会でお会いいたしましょう。いい者を紹介させて頂きます。」
「どのような物だ?」
「ウッヒッヒ! 両方ですよ、だ~んな!!」
オレグは男と別れて、デーヴィッド商会に出向く。
「なぁエルザさん。トチェフに行きたいが馬車は在るかな。」
「あぁ在るよ。ついてに荷物を運んでくれないかい。」
「だったら無料になるのだな。」
「そうだね、オレグさんの荷物が無いならね!」
「ケッ! 条件付きかよ。ならば帰りの荷物は運んでやらないよ。」
「あぁそうだったわね、あんたはローソクと塩を運びたいと言ってたね。」
「どうせ空になった樽を俺に売るつもりだろう? 今すぐに買い取ってやるよ。幾らだ。」
「ビールとワインの樽と、鰊の塩漬けだよ。いいかい?」
「あぁいいぜ、金貨一枚だな。」
「いいですよ一枚で……。」
「トチェフからは満載して帰るから金貨三枚だね。だから金貨一枚を払ってくれ。」
オレグは金貨一枚を損した。エルザは直ぐに気づいて、
「ぎゃっはっは~!! 負けたよ。鰊は領主さまに頼むよ。あんたの頭は?」
「空だと言いたいのだろう? だったら無料で引き取るよ。」
「空かい、あ~そでしょうね! でも? ディポジットだったでしょうが。」
「いやデポジットだ。単語を間違えている。銅貨一枚だろう? 細かい数字は気にするな。次回はその分値引きしてやるよ。」
「ふん上乗せする癖に!!」
「あは~……。」
「で、馭者はどうするね。うちの旦那が帰ってこないと居ないよ。」
「いや一人でいい。」
「あぁ二人も居ないよ。」
「だから独りでいいよ。俺一人ね!」
「そうかい、パブに寄ってお昼を食べて行きな。その間に積み込みをさせておくからさ。」
「おう、ありがとうな。俺も積み込みがあるのさ。飯は今度ご馳走になるよ。」
「ただ飯はないよ。帰んな!」
オレグは独りで空の樽を積み込む。エルザは誰か居るような事を言ったが誰も居ないのだから。雑用は馭者の兄ちゃんがすると決まっているのか?
「さっきの奴はまだ来ないのかい。積み込みをさせるのにな~。」
さっきの情報を教えてくれた商人だ。マクシムに言われてオレグにローソクを届ける予定だという。
「旦那、お待たせしました。ローソクと……。」
「待っていたよ。鰊の箱を片方持てや。俺では運べないよ。」
「いやな時に来ちまったぜ! ……十箱ですね。」
「あぁそうだ。俺の荷物は……、」
「はい二十箱ですね。旦那、半分運んで下さい。それでちゃらにしますよ。」
「俺の方が働き過ぎだろう。五箱にするよ。」
「ケッ チ!!」
「そう言うなよ。ろうそくは手出しで領主に納めるのだ。あの女には敵わないよ。何かギャフンと言わせれば俺の気も鎮まるのだがね。」
「だったら旦那。この小さくて綺麗な琥珀を売り付けませんか??」
「ほほう、これが琥珀か。」
「はいとても綺麗でしょう? 今後の北欧での主要な産物になりますよ。旦那もこれからどうです、扱いませんか?? あ、ぁ、あ?。」
「よし、俺が全量を買い上げよう。だが……、」
「独占契約ですね、喜んで契約をいたしましょう。」
「あのマムシには内緒だよ、出来るかい?」
「はい喜んで~!」
バルト海産の琥珀は一大産地だと名が知れている。グダニスクから東のリトアニアが世界の八十五%を産出するという。(サンクトペテルブルク・エカテリーナ宮殿に琥珀の間が再現されています。)宝石のように硬いので、宝飾品に加工されて流通している。
(これを加工して、西に売り付けるか。絹の服と同じく一躍有名になるだろう。)
「旦那、取らぬ狸の皮……ですよ。技師も付けますか?」
「おう、それはすぐに派遣してくれ。長屋と職場は直ぐに提供できる。」
「では、あの女らを連れていって下さい。よく仕込んでおきました。」
仕込むとうはどういう意味かと考えたら、
「オレグさまですね、いつも父がお世話になっております。」
「あは~綺麗なお嬢さまがたですね……。」
「旦那、手出しはいけませんよ。奥さんが逃げたからと言われましても親は許しませんよ。」
「いや~三人も相手には出来ません……。」
「伸びてますぜ!」
「鼻毛は今朝切ったところだぜ??」
「一通りの道具は持たせました。婿を三人用意して下さい。」
「お婿さんね~!! トチェフには居るかな~。」
「若くて頭脳が良いのが、居ますよ。探して下さいな。」
「OK任せておけ! 手先の器用な鍛冶職人を探してやるよ。」
「では旦那。これだけの琥珀をありがとうございます。」
「馬車一台分も!!!!」
「はい金貨で百枚でございます。」
「分かったすぐに払う。だが娘三人は人質にする。」
「はい、お好きにどうぞ。」
「お好きに????・・・・」
琥珀の箱は大きくはない。ただ、琥珀どうしが擦れて傷が入らないように、麦の敷き藁が入っている。その麦わらが多いのだ。
*)貴族崩れ風情の二人の男
二人の男が訪ねてきた。年の頃は二十八歳と二十六歳くらいに見える。身なりがとてもいいのだった。
「こちらにハンザ商人のオレグさんという方が、出入りされてあると聞きました。今はいらっしゃいますか?」
「?? あんたらは貴族かい? オレグは俺だけれども、なんの用件かな。」
「はい私たちは兄弟でございます。私は兄のカウナスといいます。こちらは弟のクライベタと言います。今後ともよろしくお願いします。」
「なんでお前らを贔屓にする必要があるのだい。帰れ帰れ!!」
「はいオレグさまにお見せしたい農機具がございます、? 弟が、でございます。兄の私は金物商品になりますでしょうか。工芸品が主な商材になります。」
「ほほう、それは面白い。でだ、お前らはどこから流れてきたのかな。その恰好だと東になるかな。」
「はい二人ともリトアニアからでございます。」
「あは~んドイツ騎士団に背いたと言うことかね?」
「いや~ん追い出されまして彷徨っていましたら、オレグさんを紹介されたのでございます。ハンザ商人に凄腕が居る”とですね。」
「いつ、どこで、誰にだ。」
「1242年12月。ポーランドはエルブロンク。お若い娘さまでした。お名前がお教え頂けなくて不明でございます。私共がドイツ騎士団に呼び止められた時に助けて頂きました。その時に私の農機具を見てそう言われました。」
「1242年12月?? ポーランド・エルブロンク?? 若い女??」
「二年以上も昔だ、俺はまだエルブロンクには行った覚えはない。」
「そうでしょうが、ここはおひとつ……。」
「兄さん、私たちもオレグさんに付いていって、商人魂を仕込んで頂きましょうよ。このまま弟子入りしましょう!」
「旦那、いい男ではありませんか。ここは一つ。」
「そうだな。二つだ。」
「はぁ?? なにが二つですか。……旦那。」
「お前の娘婿が二つだ。それでいいだろう。」
「そんな~、急に決められましても娘たちは……??」
「すでにバトルが始まっているぞ。オヤジは仲裁しなくていいのか?」
「まぁ姉妹で喧嘩だと、なんとハシタナイ!」
「お父様、ここは上から順に嫁に行くべきです。下はまだ早すぎます。」
「中はそうだろうが、上と下がなんと言うか。」
「お父様、中を外して上と下に決めて下さい。」x2
長女と三女が親父に詰め寄る。次女は父の後ろから、
「お父様、上から順番でございます。」
行き遅れの三姉妹を見ていると、ソフィアたちを思い出した。
「あぁ、あいつらが居たらすぐに決まるのだろうがな~。」
兄のカウナスがオレグに尋ねた。
「オレグさん、あいつらとは?」
「あぁ俺の女房とその妹の二人の事だ。気にするな。」
「あ、はい。でも、あの家族は放置してもよろしいでしょうか。なによりも私たちが獲物らしいのですよ。」
「ぎゃはははー! そうだったな。で??」
「はい、まだ独身でございます。……嫁もいいですね~。」
兄のカウナスは目を細めて大きい声になって言う。
「トチェフには直ぐに住める家もあるぞ。お前らのような者をすぐに収用できるようにだ。」
「お召し抱えですね!!。客分収容して頂けるのでしたら大歓迎です。」
「客分ねぇ。お前らもハンザに加盟したいのか。」
「はい、まずはオレグさまの子分で構いません。」
「そうか金貨一千枚でどうだ。」
「ゲゲ! そのような大金を私どもに投資されるのでしょうか?」
「そうだ、その前に嫁を決めてくれないか、誰が死んでもおかしくはないぞ。あれを見てそうは思わぬか。」
「では止めにはいりましょうか。クライベタお前は右を頼む。俺は左だ。」
「はい兄さん。」
二人が止めに入ったらすぐさま争いは収まった。ただひたすら泣く女がいた。中の娘だった。
「くすん、どうせ私は除け者です、姉と妹をお願いします。」
「ゲゲゲ・・・・、なんという失態!!!」
男二人が引き離そうとした娘は、それぞれの男に抱き着いて、
「私の好みです。お嫁にして下さい。」x2
「えぇ~~~そんな~!!」
「良かったな。夏祭りで式を挙げるといいぞ!」
「わ~い、やった~!!」x2
呆気にとられた親父と兄弟。一人が溢れている。
「中には家具職人のヘンリクを充ててみようか。」
「はいお願いします。足と手が二本あればいいです。」
「????・・・・・妖怪でもいいのか??」
オレグは戸惑う。
「よしトチェフへ行こうか!」
「はい。」x5
オレグは兄弟にあるものを見出していた。なんだろうか……。
1245年7月13日 ポーランド・トチェフ
*)オレグの策略
オレグの行動は早かった。女たちには翌日から宝飾の仕事を与えた。馬車一台分の琥珀を見て驚く兄弟。この二人にも宝飾の仕事を指示した。
「これが!……。」
「そうだ金貨一千枚だ。」
「……?」
中の女にはヘンリクを引き会わせたが、
「いやです。この人は嫌いです。」
と、なった。だったら誰がいいのか! と、トチェフの村中を歩いて探した。すると入植者で無職のあの男がいい”という。
「そうかぁ? こんなふーてんがいいのか?」
「えぇそうです。この人は私を待っていたんです。」
「おいおい、その言い方はなんだか、変だぞ。男の方はどうなんだ。結婚するからには、紐では許されないぞ。」
「この人は、お貴族さまですわ!」
「ぎぇ~、チチュベリゲ~、お貴族さま??}
「はい、私が貴族に仕立ててあげます。」
中の女は男の言う事は聞かずに夫に選んでしまった。
オレグはそぉっと男に尋ねた。
「お前は貴族なのか?」
「はい私はデンマークの元貴族です。ですので働く方法が判らずにふらついていました。」
「そうか~デンマークか~。」
「お前ら二人はグラマリナさまの下で働け。特にお前は貴族の修行をさせるからいいな。今後は俺の下で働いてもらう。デンマークの貴族にさせたる。」
「えぇ~~~ぎゃい~ん!」
「そう喜ぶな。あの二人の男も貴族に上げようか。金で買えるだろう。」
「はい売りに出ている処はあるはずです。私には上の爵位を、二人には下の爵位をお願いいたします。」
「おう任せておけ。」
「でだ、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、巻尺どれがいい??」
「,/@[;+*-……。芋と巻尺以外ならなんでも。」
オレグがデンマーク食らう手段が着々と進みだした。
「おうさ、俺が貴族には成れないから、偽貴族を使ってデンマークを内部から食らってやるよ。」
オレグのオーフスへの再潜入が始まる。
二人の兄弟と元貴族をオレグは三億の金で爵位を買う算段を始めた。
*)グラマリナと三組の夫婦
「グラマリナさま、これらの夫婦をデンマークの貴族として送り出したいのです。ぜひにご協力をお願いします。」
「それならば、かのお嬢さまに協力を求めなさい。」
「かぁ~のお嬢さまですね……??」
気が進まない、みたいなオレグの顔。