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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第二章 迷走するオレグ
115/257

第115部 オレグ、イグニッション!!

日本には「くだべ」という妖怪の伝承があります。件=人+牛の造語です。件=くだん、とは妖怪を現した漢字です。主に西日本に生息しているらしい。


 江戸時代には、そのくだべと遭遇した農民の話です。山中でくだべと遭った農民にくだべが言います。

「これからは、疫病が流行る時代になるであろう。このくだべの絵図を描いて人々に見せるがいい。儂の絵図を見た者は、疫病の難から逃れるであろう。」


 この件=ソフィアの物語を読む者は、「その者は難を逃れる」であろう。おりしも、新型コロナが蔓延しつつあります。


 どうぞご自愛を! くだべさま、バンザイ。


 1245年5月15日 ポーランド・マルボルク


*)マルボルク・デンボウスキー家


「旦那さま、ライ麦の出荷と共に出発いたします。オレグさまの手綱はしっかりと握っておきます。」

「期待はしていない。だが、マルボルクの資産だけは守ってくれ。それだけでいいからな。無理して寿命を縮めないでくれよ。」


 と言われてトチェフへ派遣されたギュンターは、すぐに面食らう事になった。オレグを食らおうとしたソワレが、実はオレグに食われてしまった、というのだ。


 ギュンターは、


「これが商人の世界かー!!」


 と、感心しているのだから。またギュンターは、キルケーさえも手なずけたオレグの実力にも感心するのだった。




 1245年5月15日 ポーランド・ブィドゴシュチュ


*)ギーシャが居ないブィドゴシュチュ


 オレグはマルボルクの買い付けが済んだから、ビスワ川の上流のグルジョンツとブィドゴシュチュを訪問する。


 今回はギーシャとへステアの夫婦が居ない。あの頑固親父には到底首を縦に振らせる事が出来ないだろうと、覚悟してブィドゴシュチュのギルド長を訪問に来た。



*)ブィドゴシュチュ支店 オレグ商会


「わぉ、すっかり忘れていたよ。ここにも俺の支店が在ったんだ!」

「旦那、なにのんきな事を言っていますか。」


「あはぁ~ボブ二号船長。ここのクレーンの調子は、」

「はい最高です。もう少し時間があれば良かったんですが、ね!」

「すまね~な、マクシムが船を頼み込んできたからさ。断れなくて。結果、損は無かったが儲けには繋がらなかったね。」

「旦那、商人の間では、それが損した! と言うんですよ。違いますか?」

「俺もそう思うよ。あのマムシだけが得したんだよな。もう船は出さないから、またグダニスクまで超速で頼むよ。」


「おうボブ船長。長期の派遣、ご苦労だったね。どうだい、首の骨はちゃんと繋がっているかい。」

「いや~首の皮一枚! というところだね。もう女房にせがまれてさ、げっそりになっちまったぜ。」

「そうかい、それは気の毒だったな。」


「次は旦那の番ですぜ。女房はパブで手ぐすねを引いて待っています。ここは用心棒を連れて行く必要がありますぜ!」

「そうだと思うよ。牛一頭でいいだろう。俺の首の代わりに牛の首を捻って頂くとするか。」


 ここに集まった人員は、オレグ、ボブとボブ。シビル。エレナとソワレ。新人のギュンター。アンナとカレーニナ。合計で九人になった。他には倉庫番と魔女のメイドとボブの嫁が二人。馭者の三人とドイツ騎士団上がりの用心棒ざつようがかりの二人。これらでグルジョンツとブィドゴシュチュから、ライ麦を買い集めて回る事になる。魔女と人足はトチェフから随時に連れてくる。


「オレグ商会さ~ん、お花のお届けにまいりました。」


 オレグは花の贈り物を見てゾッとした。


「また、かわいい魔女より!! だぜ。」

「いいや旦那。違いますよ。バラの花束と一緒に、……。」

「で、なんだ。早く読め。」


「もうパブで待っています。ですと、書いてあります。」

「今日俺が来ることを知っていたのか。油断できないね。」

「旦那は麦の穂と共に現れますので、予想もなにも必要ありません。」


「??……よし分った。事務所開きが済んだらパブへ行くか。」


 女たちは最初は顔を出していたが、すぐに消えている。ここには男しか居ない。


「オレグさま。この爺の机も欲しいのですが、在りますでしょうか。」

「ギュンターさんは、俺の横に座ってくれ。その机でいいでしょう。」

「はい、とても上品な机でございますが……、」

「そうなんだ、ソフィアの机です。あれは居ませんから自由に使って下さい。」

「はて、お留守とは存じませんでした。」


「あのな爺さん。ソフィアの姐さんは、」

「ボブ船長、それは言わなくていい。いつになるのか見当もつかないのだよ。ホント、泣きたいよ。」


「それはそれは、お察しいたします。お逃げになれた奥様に代わりましてこの爺が働きます。」


「ギュンターさん、早速だがマルボルクのライ麦は収容するのに、あと何日かかりそうかい。」

「はい明日からが本番になります。昨年は九万袋でしたが、今年は十二万袋にまで増えております。」

「そうだったな、三万袋は積立になるからそれはトチェフの倉庫に入れて九万袋はここに運んでもらおうか。」

「はい承知いたしました。明日私はトチェフにまいりまして、倉庫への収納の指示とブィドゴシュチュ支店への配送を指示してきます。ですので完全に倉庫に収まるには……五日はかかります。」


「ぎゃ~俺はイヤだよ!」x2


 とボブ船長の二人が悲鳴を上げるのだった。


「一日に二往復。それは無理だ!!」

「俺だって無理だと思うぞ!」


 ボブ船長の船は四千袋で、新造船のボブ二号船長は五千袋が限度である。とてもじゃないが一日に一往復が限度だろう。


「あぁそうだったな。あれが居ないから無理だ。一日に一往復でいい頑張って頂戴。」

「馬車で運べないのか。」

「グルジョンツとブィドゴシュチュから、ここの倉庫まで各十五万袋の三十万袋を馬車で運ぶ予定だから使えないよ。」

「ケッ……。」


「あっ、オレグさま。トチェフからのライ麦は七万袋でございましょうか。小耳にはさんだだけですので、正確には存じあげません。」


「おいおい、そんなには無理だぜ。去年と同じようにグダニスクへ届けようぜ。ここに運び込むのは二度手間だ!」

「合計で四十六万袋でございます。いくらオレグさまでも不可能かと。」

「そうだな、三か月はかかるだろうし、終わればまた収獲でまた三か月か!!」


「はい、さようでございます。マクシムさまも四十六万袋をオランダまで輸送されるのも、二往復の延べ三か月はかかるでしょうか。」

「ギュンターさん、あんたが言うとおりだろう。ライ麦は減らすか。」


「オレグさま、グルジョンツとブィドゴシュチュからはまだ決まっていませんのでしょうか。ここが少なければよろしいですね。」

「そう願いたいよ。明日からが勝負だ。今日は飲んで休むとするか。」


 場所はオレグ商会の事務所から隣接のパブへと変わった。当然貸切の看板が見てとれる。


「デーヴィッド商会にも送らないといけないな。ソワレに訊くか。」


 オレグらはパブに入った。すでに賑やかな声が響いている。


「おいおい、やけに人が多いな。」


 オレグがトチェフから多数のビールや肉野菜を運んできたから、その人足も集まっていた。だが、そればかりではなかった。


「げっ頑固親父!!!……、それにキルケーも……。」

「おう若造! 待っておったぞ。早くここに座れ(ソワレ)!」

「まぁいやだ。私は椅子ではありません。」


 とのんきにソワレが冗談を言った。ジジイとソワレがキルケーと並んでいる。オレグは(あの堅物のソワレが冗談を??)と思いつつギーシャの父親のギルド長の横に座った。


「違った、そこはキルケーだった。オレグは俺の向かいだ!」


 すっかり上機嫌なギルド長。(??この親父、顔色がいいぜ!)と思いながら言われたとおりに前の席に座った。


「やぁ、お久しぶりです。息子さんたちはまだ新婚旅行中です。もう暫くは国々の見学で勉強されるのでしょう。」

「おう儂の目が黒い内は不要じゃ。居なくて生々するわ。」

(清清するというのが正解だが、これはイキイキすると読むらしい)

「ははぁ!! ギルド長。羽目を外しすぎではないでしょうか。」

「いいや全然。老いてますますじゃわい。が~っはっは~~!」


 オレグはキルケーの仕業だと直ぐに気が付く。キルケーは笑いながら席を立ってギルド長の肉を切り分けているところだった。だからキルケーの席は空いていた。そんなキルケーの顔を見たら、


「オレグさま、ささやかなお礼でございます。」


 と言うのだった。オレグは、


「これが? なんでだ??」

「若造、この春のライ麦は三十六万袋を譲ってやるぞ! わ~っはっは~!」


 ギルド長は何度も高笑いをする。ライ麦の三十六万袋は二つの都市の収穫の七十~八十%に該当しようか。昨年は頑なに断られたから少なかったのだ。それでもあの二人の尽力でライ麦は三十万袋を確保できたのだった。


「ギルド長、少し多すぎませんか??」

「そうだろう、そうだろう。昨年は十八万袋だっただろうか、それに比べたら二倍だろうて、ぎゃ~っはっは~!!!!」


(そうかギーシャは無理して十二万袋も多く寄こしてくれたのだった。思い出したぞ。)とオレグは思い返していた。


「ちょっとキルケー、これはいったい。」

「はいソワレさんから相談を受けたのですよ。ギーシャさん夫婦が行方不明だから、あの頑固ジジイをどうにかできないか! ってね。」

「ソワレ、そうなのか?」

「はいオレグさま。そうでございます。少しでもお役に立てればと思い頑張ってみました。」

「むむむ・・・・・・・むむむ!!!!!」


 言葉も出ないオレグだった。喜ばしい事なのだろうが、リリーが居ないので移送手段に思い悩むはめになってしまった。


「りりり・・・・・・・りりりーーーーーー。」


「オレグさん、む・り なのでしょうか???」

「あぁ、ああああ。そうだとも。むとりで、無理と言うのだ。」


「まぁソフィアさんが居ないと、ホント! ダメで、使い物にならなくて、どぶに捨てたいくらいですわ!!」


 と酔ってもいないソワレが、これまた酔ってもいないオレグに噛みつく。


「ば~ろう……てやんで~!!」


 オレグの逃げの一手を打つが、ソワレはそれを許さない。


「オレグさん、酔ったふりしてもダメですよ。私に金貨10枚を下さい。ここのライ麦の三十六万袋全部をグダニスクへ送って見せます。」


「げげ、出来るのか!!」

「は~い喜んで~~!!。」(目指せ! オレグのゲット!! オー!!)


 本当にオレグはあの二人が居ないと、両目を塞がれたようになるらしい。これはソワレの観察日記で明らかになったという。怖ろしソワレ!!。。。。


「な~に、この俺さまがどうにかしてやるよ!!」


 と豪語するギルド長だった。オレグは酔うに酔えない夜になった。ここでソワレが甘い言葉でオレグを誘ったら?? どうなっていただろうか。少し興味がある問題だ!! 離婚したマクシムへの同情が湧く! というものだろう。二号さんに最適なソワレの実力とは??


 翌日になりギルド長を矢面に立てた計画が行われる。




 1245年5月16日 ポーランド・ブィドゴシュチュ



*)ソワレの実力


 ソワレは金貨三枚で多数の人足を集めて、この港である作業を始めた。


「なぁ、あんた、ここで作業をさせたらライ麦の受け入れが出来ないぜ。」


 ボブ二号の船長が優しくいちゃもんを付けにきた。


「ここが一番いいのです。それよりもグルジョンツからのライ麦はまだですの?」

「もう船に載せたころだ。だから、ここを開けろや!」

「片方を開けていますでしょう。片方では出来ませんのかしら。船は??」

「あぁ、一艘だが……??」

「だ~ったら、船溜まりは二つありますから、片方は私が使います。序でにライ麦の輸送は私独りで行います。ザ~ん念ですね、運賃は私独りの稼ぎですわ。お~っほっほ~ほっ~ほ~!!」


「旦那と掛け合ってくる。覚えていろ!!」

「私、もの覚えは悪いのです。とても残念ですわ~、お~っほっほっ~ほ~!!」


 ボブ二号船長は告げ口外交が得意だった。


「旦那、あのじゃじゃ馬をどうにかして下さい。目障りでございます。」

「あれでライ麦を全部輸送するらしいのだ。」

「じゃぁ、旦那。俺の仕事はどうなるのです。」

「自然消滅ですよ。すまね~な!」

「それは困ります、仕事を戻して下さい。」


「だって、お前ら二人は五日間では無理だと言ったわな。」

「でもそこをなんとか!! ね、旦那。」


「無理だ、俺はあいつに負けたのだ。だから、ライ麦の輸送はソワレ一人に任せたよ。ボブ二号はボブ船長と同じくトチェフとマルボルクの仕事をしてくれ。航海中にくれぐれも筏を沈めるなよ、いいな!」

「へ~い。」


 ボブ二号船長はグルジョンツからのライ麦も無くしてしまう。


「順調、順調!!」


 と喜ぶソワレ。ギルド長の命令でブィドゴシュチュのライ麦が集まってくる。同時に十万本もの木材も上流から流れて集まり出した。


「魔女はもっと必要ね。ライ麦が多すぎて筏が沈んじゃう。」


「ソワレさま、筏に浮力を与えるだけでよろしいのですよね。」

「はい、ただそれだけですよ。一人でできますでしょう? あ~あん??」


 ソワレの指示により筏一つに一人の魔女と船頭が充てがわれた。


「オレグさん、トチェフの渡し船を貸して頂けませんか。グダニスクから船頭と魔女を高速輸送したいのです。」

「おうおう、好きに使って構わない。」



「この木材は全部、デーヴィッド商会へ卸します。デーヴィッド、高く買って下さるかしら。」


 グダニスクは発展途上だから、建設資材は常に不足している。ソワレが多数の木材を筏で流してきたからデーヴィッド商会は、さらに羽振りが良くなった。


「ソワレさん、秋も来春もお願いね!!」


 と感謝されるのだった。


 もうみなさんお分かりでしょう。ソワレは筏を多数組み上げてライ麦を川下りで輸送したのだった。勿論、オレグは直ぐに気が付いた。だが、


「くそ~、ソワレにいっぱい食わされた!!!」


 悔やむオレグの姿が、背を丸めて独りで飲んでる姿が寂しそうだった。当然、ボブ船長の嫁さんはそんなオレグを許さなかった。


「あんた、正気でないなら、出て行きな!!」


 と、逆に追い打ちを食らわせていた。


「あんたには、追い打ちがお似合いさ! ……もっと食らえばいいさ!!」


 ボブ船長の嫁は、


「あんた、かたきは討ったよ!!」


 ボブ船長は遠くから、


「俺のカネヅルだ、ほどほどにしてくれ!!」


 と言う声が聞こえてきそうだった。


 ソワレはオレグからの金貨の半分五枚を浮かせて、木材の十万本で金貨百枚を稼いでしまった。同様にデーヴィッド商会も一か月で臨時収入で金貨百五十枚を稼ぐ。後にソワレは金貨二枚をグラマリナに支払っていた。


「賦役は素晴らしいわ。黙って農民を送れば、金貨が勝手に向こうから歩いて来ますもの。最高だわ!!」

 グラマリナはソワレが稼いだ金額を知らない。知っていたらきっとせびってきただろう。


 一方ソワレの方は?? 金貨三枚は人足の食費に消えた。


「これも安いものだわ。オレグさんの食材を頂いたもの。金貨七枚分は飲み食いをしたかしら! るんるん!」


「さ~てオレグさんはライ麦の三十六万袋の輸送費、幾らで払うのかしら。少なかったら容赦しませんわ。」

「ぐしゅん、ぐしゅん、ぐしゅん。あ~、風邪を引いたかな。妙なくしゃみだ。今晩は温かくして休もう。」


 ソワレは金貨一枚も出さずに金貨百五十枚を稼いだ。残るはオレグからライ麦の輸送費を貰うだけだが、


「容赦する時は、私はオレグのお嫁さんになっていますわ。」


「ぐしゅん、ぐしゅん、ぐしゅん。あ~、オレグに不測の事件が起きたのだわ。きゃ~ここから出してちょうだ~い。ぎゃ~~~~~~。」


 ソフィアが大騒ぎを起し始めた。


 だがオレグは気にも留めてはいなかった。


「だってソワレは、金貨10枚でライ麦を全部送るから、と言ったのだ。だったら、金貨十枚が請け負い金額となるだろう。」


 と最後に言い残してトチェフに戻ってしまう。残ったソワレはエレナから散々にバカにされていた。


 るんるんは、オレグにほほ笑んだ!


「ボブ船長の嫁御よめごは最高だ!」


 オレグはパブの女将にけなされて重大な事に気づいたという。



「ボブ船長。明日俺をグダニスクへ届けてくれ。マクシムに会いに行く。」

「おう、いいぜ。乗船料は金貨で頂くよ。」

「でもたけ~な。幾らだ。」

「金貨十枚は頂きたいよ。俺のカミさんに感謝しろよ。」


「あぁ、明日は取りやめだ。次回にするよ。」

「ほんにゃら~か~!!」




 1245年5月16日 ポーランド・グダニスク


*)オレグのスイッチが入った


 ぼったくりのボブ船長を(かわ)して陸路で行く事にした。グルジョンツとブィドゴシュチュのライ麦はトチェフの農民の賦役と、ギルド長の指示で事なきを得たオレグ。ソワレにも感謝する。


 次はライ麦の決済が始まる。


「次からは金貨十枚では済まないだろうな~。ソワレが怖いよ!」


ソワレも次回からは黙っていないだろう。


 オレグは馭者と共に馬車で出かけた。デーヴィッド商会に卸す荷物を少し積んでいる。主に木の器になる。


 オレグは馬車に揺られて四年前の事を思い出す。


「ここは最初の地コバレだ。ここは最悪だったな~。」


 と感嘆しながらグダニスクへ向かった。黄昏たそがれるオレグに馭者は、


「旦那。ここはいつも感じるのですが、コバレは放棄された土地ですか?」


「あぁそうだな。領主が三流以下だったのだろう。農民を集める事が出来なかったと思っているよ、それがなにか?」


「でしたら、オレグさんがここの領主さまになったらいいのですがね。」

「あぁあ、お前はこの村の出身かな。それもいいな。考えておくよ。」

「旦那、絶対にこの村も救って下さいよ。」

「??……確か、湿地帯が多かったと思うが、どうだい。」

「はい、そうですね。ですからレンコンの栽培とか出来ませんか。」

「イヤだよ。穴の空いた商品は扱いたくはないのだよ。解るか?」

「そんなものですかね~私は何でもいいのかと思っていますがね~。」


 トチェフからグダニスクまでは三十五k程度であった。コバレは今ではトチェフ以上に大きい街へと変わっている。コバレ経由で進んだから、約五十kほどの長い道のりとなった。


 グダニスクはもう間もなくと言う。


「旦那、そろそろ見えてくるころですよ。」

「もう……なのか? こんなに近かったとは、思いもしなかったよ。」

「そうですね、船は遠回りしますから、遠いですね!」

「そんな事よりも、ドイツ騎士団に見つからなければいいのさ。」

「そうですね、あいつ等はキリスト教をかたる偽集団ですよ。本当にヒドイ連中でさぁ。」

「そうだよな。もう襲撃が無いといいのだがね。」

「ホンとそう思います。あいつらが居ると、」

「もうよせ。悪口を言うと出て来るぞ。俺はしっぽ巻いて逃げるからな。お前は適当に捕まれ!」

「そんな~旦那さまでしょうが~、私を守って下さい。」


「はは冗談だよ。次の大きい四辻よつじを左に折れてくれないか。田舎道からグダニスクへ入りたい。」

「了解であります。」


 オレグはさらに西へ進んでドイツから通じる道へと出る。


「ここだろう、この道を右だな。」

「この道はドイツからグダニスクへ通じる道ですよ。この道はよした方がよろしいかと思いますが……?」

「この道がグダニスクからドイツへ通じる道なのか。じゃぁこの道を進め。きっと安全だよ。」

「@*?¥・・・・。」


 グダニスクとドイツの名前を入れ替えただけで安全になるはず、はない。



 百年後には、ポーランドのビスワ川沿いは一大穀倉地帯にまで農地が拡大されていく。その西側への輸出の窓口がグダニスクだ。


「この街は大きく発展していくんだ。」

「旦那、こんな小さな漁村にハエが飛んでいるような街ですよ。大きくなるんですかい。俺には信じられません。」

「なにを言う。この俺がグダニスクをポーランドの穀倉の窓口に飛躍させるのだ。なんか文句があるのか。」

「だったらコバレも一緒に大きくさせて下さいよ。」

「それはお前がすればいい。グダニスクは俺ができるのだ。だったらお前にも出来るだろう。まずはトチェフのように大きくさせてみろよ。」

「無理です。旦那と同じにしないで下さい。」

「だったら作者に言えよ。私をコバレの主にして下さい、と。」

「@*?¥・・・・。」


 西側諸国も人口が増えて東のライ麦が必要となってきた。また、世は戦争へと進んでいくから、兵士をより多く雇う必要があるので麦の消費も必然多くなる。


 どんどんとライ麦の価格が高くなるのだった。当然、フランスやドイツは自国の通貨を増産していく。輸入品の支払いに充てる為と、貨幣制度がより充実、発展していくからでもある。自国通貨があれば強いものだ。


 貴族が幅を利かせる、そう大きな城を築くのだ。農奴を囲い込んでどんどん国や他国へ輸出して金を稼いでいるのだ。比例して教会も力をつけていく。貴族が教会に寄付することが、一種のステータスと見なされている。貧しくても教会には寄付をしていたという。他にも面白い・意外な逸話がありますが……。


 オレグへの追い風が吹く。


「ふん! 俺は教会が嫌いだ!!」


 オレグへの逆風は教会なのだ。今度の事件はどう進めて行きましょうか?




売り 500,000 50x800枚=金貨で40,000枚 1袋=8000 5k=800円程

買い      50x150枚=金貨で 7,500枚 1袋=1500

利益            金貨で32,500枚

船賃    ボブ船長     15x13=195枚

船賃    ボブ二号船長   15x10=150枚

ソワレ                 10枚

最終利益          金貨で32,145枚=32億円



オレグはライ麦の集計をした。

ブィドゴシュチュは   180,000袋。

マルボルクはライ麦は   90,000袋。

トチェフはライ麦は    50,000袋。

グルジョンツはライ麦は 180,000袋。

   合計で、     500,000袋。になった。


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