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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第二章 迷走するオレグ
104/257

第104部 マクシム編 マクシムの凱旋!?


 1245年1月1日 オランダ・アムステルダム


*)尻ごみする海運業者


 アムステルダムは被災した街だ、買える物は何もなかったから、空荷で帰る事になる。西の国の商品が多数あったはずだと残念がるマクシム。


 マクシムはアムステルダムの再建に協力して、ひと儲けをしたいと思ったのだが、いかんせん本拠地とは遠すぎるから諦める。


「またすぐにライ麦を運んでこよう!」


 十五艘の船団は西風に乗り半分の日程で帰れる……。


 年が明けた……1245年1月1日になり、ソフィアたちが旅立って二か月が過ぎた。もちろん音信不通が普通だろう。


 オレグとの賃貸契約は三か月、残り二か月でオランダとグダニスクを三往復をしたいと考えるマクシムだった。




 1245年1月11日 ポーランド・グダニスク


 マクシムは超速で帰還した。


「やろうども~今から五日間は休暇だ。しっかり母ちゃん孝行をしてくれや~!」

「おう!!」


 マクシムは直ぐに傭船ギルドに立ち寄ってから、新築の自宅へ帰った。


「誰も居ないのか~淋しいなぁ~。どうしようか眠れないよ……。」


 シビルはパブへ魔女たちを連れ立っての豪遊を楽しんでいる、はず。一方、ボブ船長のクルーはというと?


「船長、俺らには休みが無いのですかい?」

「いいや、休みならあるだろう、金が無いだけさ!」

「また船で野宿ですかいな?」

「あぁそうだ。我慢しろ!」


 と言いながらボブは給金を払っていた。


「どこかで飲んでこい!!」


「わ~い、」


 と叫ぶ人足にはボブ船長も混じっていた。


「ボブ船長、どこもかしこも満員ですよ、人が多すぎます。」

「おかしいな、新年の休みはもうとっくに終わっているはずだろう、今日は十一日だぜ! どうしてだ?」


「船長、港には多数の船が停泊していましたでしょう。だからですよ。」

「やっぱりそうか。仕事が無いのか~可哀そうに……。」


 待つこと二時間、ようやくテーブルが四つ空いた。


「お前らは立ち飲みだ、その分料金は半分を支払ってやるよ、いいか。」

「はい、ボブ船長の財布に敬礼!」


 ボブ船長は、グダニスクに船がタムロしている理由にまだ気づかない。


 中世ヨーロッパの居酒屋などのテーブルは二人掛けでした。四人掛けや長いテーブルはありませんし、明かりは多くのローソクですので暗くてよく見えない室内ですよ?



*)五十五艘からの船団


「おらおらおら!! もっと飲め。俺の財布だもっと遠慮しろ!」

「船長、矛盾した事は言わずに、こう、どぱ~っと、いきましょうよ。」


「ふん、てやんで~。」


「そうでした船長。マクシムさんは傭船を四十艘を探しているそうですよ。」

「何処で聞いたのだ?」

「へい席待ちをしている時にです。ただ応募が無いとも聞きました。」

「マクシムさんは倉庫に四十万袋は抱えているだろう、ひと船に???、幾つだ。」

「へい、一万袋になります。」

「だということは、俺らを除いての四十艘だな。あれだけ港に停まっているんだ見つかるだろう。」

「いいえ、それが西に行くのは海賊に船を奪われるから行かないそうです。」


「そうなのか、ま、無理もないか。俺たちだって運が良かったのかも知れないしさ。」

「それよりも船長、もっと飲ませて下さいよ。こう、船長の顔のように豪華にですね……?」

「俺の顔がハンサムか?! そうだな、新年でもあるからご馳走してやるか。」


「カラン、カラン、カラン。」

「ん? あのベルはなんだ?」


「本日も食材が無くなりました~閉店いたしま~す!」

「すみませ~ん閉店で~す。」

「あぁ船長! 俺らは不運なのでしょうか~。」


「しょうがね~船で飲もうか。」

「乾パンで? ビールと? んん…?…?…?」

「だったな、シビルが売っぱらったから魔女シビルに出させるか。あいつらは何処だ、どこに居る!」

「街外れでしょうか、馴染みの店が在ると言っていましたよ。」

「だったら食い物も在るだろう、梯子はしごするぞ。」

「アイアイサー。」


 シビルの行っている店はすぐに見つかった。ボブは思いっきり腹を空かせた三文芝居を始める。


「シビル、ここに居たのか。俺らは食い物が無いんだ、一緒に頼む。」


 他の連中も、


「港のパブは満員でさ、最後は食い物が無くなって閉店したぜ。」

「そうだな、俺らは追い出されて何も食っていないよな~。」

「俺はビール一杯だけだぞ。」


 等々、腹減ったの言葉のオンパレードだった。


「俺らも麦を下すのを手伝っただろう? な、違うか!」

「……消えな!」

「それはないだろう、なぁシビル。でなければ今度の航海には、手伝う事が出来ないな~あ~~腹減った腹へ……、」


「しゃ~ない、今日だけだぞ。」


 ボブらは他の客の追い出しにかかる。通路で立ち飲みを始めてワイワイと大声で騒ぐのだった。店主が、


「すみません、今日はお引き取りをお願いします。」


 と馴染みの客にお願いをして回った。大きい店ではないから貸切状態へと変わり、魔女たちは魔力の補てんにと、大食いになって……いた。


「カラン、カラン、カラン。」

「ん? あのベルはなんだ?」


「わカランか、売り切れのベルだ。」


 またしても中途で放り出されたボブらだった。ボブは三軒目に向かった。ここは少ないようだった。


「オヤジ、まだ飲み食いが出来るだろうな。」

「はい、十分に揃えてございます。ごゆっくりどうぞ。」


 ぼったくりのパブだった。だから客は少なかった。ボブのでっ腹とは裏腹に金貨が無くなってしまう。



 翌日になり、船賃の催促にマクシムの事務所を訪ねたボブ。


「旦那、船賃を先に払って下さい。シビルがアムステルダムで肉とビールとパンを売ってしまいましたので、仕入れをおこしたいのですよ。」


「あ、それならば私が補充させておきます。心配は要りません。」

「それはありがて~。ところでマクシムの旦那、船は無いのですかい?」


「あぁそうなんだ。傭船のギルドに行ったが今の船しかないそうだ。困っているよ。オレグだったらどうするかね~、あぁホント、海賊が憎たらしいぜ。金儲けの仕事が転がっているのに、あ~残念だ!」


「だったら俺に任せな。半分は集めてやるよ。残りは、そうだな~提案だがいいか!」

「おうなんだ、言ってみろ。内容によっては聞いてやるよ。」


「次の航海も同じように海賊を撃退出来るだろう。だからさ、海賊に船を奪われた時には、新造船を補償してやる、と言えば集まるだろう。どうだい出来るかいな。」

「それはいい、一艘くらいならば安い買い物だよ。」


「それと、パブでこの前の航海の自慢話をしたいんだ。パブを予約してくれないか。素晴らしい内容で豪語してやるよ。この方が早いだろう。」


「分かった、四十艘を確保してくれ。お礼はパブの料金だ。」

「OKだぜ、任せな!」


 マクシムは成功すれば安い投資だと思っている。ボブ船長は本当はお人よしなのだろうか。


 この日の昼からボブの武勇伝が始まった。


「俺は前の航海で、海賊の十五艘の船団に囲まれたが、うち、十一艘を沈めてやっぞ。俺はうそは言わない、その四艘はお情けで見逃したんだ。全部をさ、沈めても良かったんだが、生憎俺は海賊には恨みを持っていなかったんだ。」


「今度海賊に襲われたら俺はお前らを全力で守りにいく。どうだ、今度は五十五艘になる大船団だ、怖いものは何もないんだ……どうだ、この俺と金儲けに行かないか、先着五十人だ。」

「………?」


「おうおう、気概の塊りは居ないのか、大儲けが出来るぜ!」

「アムステルダムは災害復旧で物不足だ、なんでも売れるから、ガッポ、ガッポだぜ!」

「水だって売れるんだ、どうだ、俺と一緒に航海しないか。」


「パンでも豆でもかー!」

「あぁそうだとも。服でもたくさん売る事ができるぜ。」


「おう、俺が行くぞ、そして建設金物を売ってやる!」

「俺も行く。俺はパンを持っていくぞ。」


 等々、チェリーちゃんが一声上げれば、すぐに五十艘が集まった。


「これから俺が船長の面接を行う。合格者のみを連れて行く、いいな!」

「おう任せた~。」x55

「少し……増えたか?」


 マクシムはライ麦の他にも積み荷を探し出した。商魂がたくましい。


「ボブ素晴らしい! 感激したよ、ありがとう。」


 ボブも言っている傍からアムステルダムで何を売ろうかと考えていた。今度は俺の荷物になるんだ、シビルにはやらないぞ、と気を引き締める。


 ボブは重量の負担にならない衣類を選択して後日には大いに売れて完売となった。




 1245年1月16日 デンマーク近海


*)六十五艘の大船団


 マクシムは予定以上に船が集まった事に喜び、マクシムは建築金物を多数用意した。これは領主が喜んで買いあげる。


 ボブらは四日間の休暇で出港で後れをとった。だが、マクシムは休みなく働いていたから、積み荷は完了していた。ボブは街中から服を買い集めてもなお、中古・古着も集めていた。


 ボブは古着を載せればよかっただけだが、他の船は自前で用意する必要があったからか難儀していた。マクシムは注文の依頼が入ってくるも、却下していたのだった。

(ふん、バカ目。要望を聞いていたらワシの積み荷が少なくなるわい。)

 と心は正直に呟いていた。


 積み荷が完了した、いや、そうそうに完了させたというべきだろう。


 六十五艘の大船団が出港した。威圧でヴァイキングを押しのけて進む。ヒゲの軍団はオレグの船の威力を知っている。先頭に立ってヴァイキングたちを追い立てけん制すると、ヴァイキングは寄りつこうとはしなかった。


「おらおら!! どけ、道を空けろ~。」

「船長、ここには道はありません。」


 隠れて航海は出来ない軍団だから白昼堂々として進む事が出来たのだ。


 

 アムステルダムでは早く積み荷満載の船が来たらいいな! と、桟橋の建設を完了させていた。誰かが大きい水溜りと言ったゾイデル海に面した、波が穏やかな場所に桟橋を十五列も建設させていた。もちろん杭に丸太を結んで板を張った簡単な物だったが、大いに役にたっていた。主に、立ちし****には役にたった。


「お姉さま、このような出来でいいかしら!」

「うん上等よ!! 二重丸だわ。」


 これらの施設を一か月以内で完成させた、凄腕が居たのを誰も判らなかったのだ。オレグだったら十日間で完成させたであろう桟橋。


 ライ麦は人海戦術と魔女の魔法で三日間で完了した。マクシムは終わり次第に帰る予定だったが、売れない商品を持ち込んだ船主からはクレームが寄せられた。


「待って下さい。私たちはまだ完売していません。」


「あぁ~面倒だ、ハンザ商館に納めてしまえ。二足五文だ!」

「えぇ~安すぎますよ~。」

「売れない物を持ち込んだお前らが悪いんだ。観念しろ。次にかけろ。」

「へ~い……。」


 西風に押されて早くグダニスクへ帰り着いた。第三便の準備を始める。マクシムの倉庫には既に三十五万袋のライ麦が運び込まれていた。この莫大なともいえるライ麦は二日で積載された。一日の休みを入れてアムステルダムへと出港していった。


 出港の前日、とある男からデンマークの海賊船の情報がもたらされていた。なんでだろうか……この相談を受けたボブとシビルは、ある物を積み込んだのだ。


 今回はライ麦が少ないし、儲ける事が出来なかった船が脱落した。それでも四十八艘の大軍団が出来た。


 なお、軍団はここだけではなかった。憎きデンマークも大小合わせて九十艘の船で出迎えの準備を整えている。デンマーク王のエーリクⅣ世の沽券に係わるというから国中から集めてきていた。


 ただ残念な事に、アムステルダムと同じく津波に襲われたデンマークも、大きいい災害を受けていたから、ボロボロの船が半数以上に及んでいた。これらの船は強い季節風で海賊稼業には出れなかった。


 グダニスクには事前にこの九十艘の大船団の情報が流された。はて、情報原は誰だろうか。



*)憎きデンマークとの海戦の開戦


 シビルはデンマークとの開戦に備えて魔女らを温存した。四十八艘の船団だから曳航も出来ない。ならばと、魔力ビールの補給に務めさせていた。


 これを見て苦々しく思うマクシムだったが、時期に感謝の念に変わっていくことだろう……か。


 デンマークの海軍が主力となるようだ。エーレスンド海峡とカテガット海峡の二か所で待ち構えていたが、これは小さい船が多かった所為でもある。


「将軍、海賊船の準備が出来ました。いつでも出港できます。」

「ご苦労、船が見えたら教えろ、五秒で出ていく。」


 将軍が言う五秒の意味が理解出来ないという兵士らだ。 


 デンマークは手ぐすねをひいて待っていた。   来た、マクシムの船団だ!


「将軍、船が来ました。起きて下さい。」

「あと五秒だ、寝かせてくれ!」

「はい?!!!!!」


 とあきれる家臣。五秒でベッドを出るという意味だった。


 将軍を迎えてデンマークの船団は帆を上げた。狭い海峡だから直ぐに鉢合わせ状態になった。


 将軍は、


「かかれ~~~~!!」

「ゥオ~~~!!」


 これを見たシビルは、


「あいつらは本当にバカだ。なんでエーレスンド海峡とカテガット海峡の狭い海峡で攻めてくるんだ?」


 狭いから多数の原理が役に立たないというのが、将軍には理解出来なかったのだ。


「これではほぼ一対一の対戦ではないか。周りから攻められる事がないからあんたたち、前から順に石を落として沈めなさい。」

「はい、シビルさま。」


 九人の魔女が三十cmほどの石を持って箒にまたがり飛んでいった。


「出来るだけ高いところから落とすんだよ、しくじったらビール抜きだからね。」

「はいシビルさま、すてきです……。」


 高い上空から落とす石は甲板、船室を通り越して船底…海中まで到達した。


「ほら、やったわ、一丁あがり~~~!」


 次々とデンマークの軍艦が沈められていく。シビルは舵の利かなくなった船に体当たりをした。舳の丸太が船を貫く。


「うっひょう~オレグの提案は最高だわ~。」


 戦いが見れない後続の船は無残に沈没していく船を見ながら、


「や~い、ざまぁ~みろ~!!」


 と、はしゃいで櫂を漕いでいた。ヒドイ奴が居て泳いでいる海賊を櫂で殴っていた。


「ポカ~ン!!」

「んん~ん、いい音!」


 主力のデンマーク軍の船はほぼ沈んでしまった。魔女らが何度も爆撃で往復した作戦が功を奏したのだ。シビルは誇らしく思った。だが、マクシムからは金一封きんいっぷうしかなかったのが残念。


「ビールが給金の代わりだ。」


 という、マクシム。


 ボブは笑い転げて、はしゃぐ。


「ざま~、見ろ!」


 この夜、シビルは夢食いの大規模魔法を発動させて、……魔女の秘密は守られた。


 マクシムはこの三回の航海で莫大な資産を作る事ができたのだ。オレグさまさまと喜ぶ。


「オレグには金貨五十枚で良かっただろうか。あの二人にはどのようなお礼をしたらいいのか、値切るの悩むね~。」


 最後尾の船にある人物が乗船していた。***と*-**だ。♪ ♪ ♪



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