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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第一章 駆け出しのハンザ商人 オレグ
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第10部 境界の魔法は便利だ!


 1241年4月3日 バルト海・ゴットランド島、ヴィスビュー



*)船積の交渉


 俺はリリーに頬ずりをしていたのだ。そんな俺をソフィアは見て、俺の頭をぶん殴ってくれた。


「なにすんだい!このブス!」

「パコ~ン!0パコ~ン!0パコ~ン!」


 三回はいい音が出た。他に鈍い音が5回はあったようだった。


 翌朝、俺はターバン巻の姿になっていた。今日の俺の頭は冴えている。昨日はボブとの打ち合わせをすっぽかした。怒ってはいないだろうが早く行くに限る。


「おはよう、ボブ! 今日もいい天気だね。」

「なんだい? 兄ちゃんは日本人になったようじゃないか。ここはいつもいい天気だよ。兄ちゃんの、あ・た・まの様にな!」

「そうだな、雨や雪、嵐は来ないものな。ところでさ! 船賃の見積もりは出来たかい? この頭は無関係だが。」


「ああ、出来たぜ。人足を五人だが、いいかい。鉄の商品があるからさ、全体的に重いのさ」

「いや、ダメだ。三人にしてくれ。出来るだろうさ。な?」

「おいおい、兄ちゃん。マムシの見積書は見ていないのかい? 木箱の荷姿で五百箱だぜ。一人当りで百箱だが、五人でも足りね~くらいの量なんだぜ?」

「いいさ、この俺が運ぶさ! 二箱運べば三で割れるから大丈夫だ。百六十六個な。」

「OK、割増で対応するよ。船賃は二十%増しな!」


「おいおい! それは出来ないよ、二十%の割引で運んでくれ。隣の船もあるようだからね。乗り換え、大いに結構じゃないかい。」

「なにが結構だ、ざけんな! 欠航にならようにしなよ。兄ちゃんよ。」

「ご忠告ありがとさん。」


「オレグ、箱は三百箱なるようだよ。少し大きい箱を半分にして、数を増やしてるみたいだね。OK? オレグ。」

「ああ、OKだ。俺の見込み通りだ。人足の三人雇用で突っぱねてやる。」


「ボブ、また明日に来るよ。それまでには、見積書は出来てるよな?」

「ああ、じょうがね~な。書き直しておくよ。バッキャロウ! が・・。」

「情はあるさ。じょうがね~? は間違いだろう?」

「そうさな、間違ったな。いちいち突っ込まないでくれ。俺は忙しいんだ。」

「ありがとう、ボブ!」


「ポーランドのグダニスクという街の情報を探しに行くが、ソフィアと二人はどうするかい?」

「付いて行かなくていいの?」

「ああ、いいよ。好きな所へ行っていいよ。ハンターにだけは注意しろよな。」

「うん。服を買いに行くね。」

 ソフィアは答えた。


 この俺が見込みが有ると判断したのは、


************************************************************

 ポーランドのグダニスクは、

 1224年頃は村民も少ないが、ヴィスワ川という大きな河があり、港湾都市としての機能を持ち始めていた。ハンザ同盟で発展したドイツの都市、リューベックと同じように都市基本法を制定し、ポーランド王国とは別に統治されてきた。


 その百年後に、ポーランド王国よりこの地方を含め、ドイツ騎士団に賃借されている。ドイツ騎士団の下に開発が行われて都市へと成長し続ける。1361年にハンザ同盟の貿易加盟都市にまで大きく発展し、ポーランドの主要輸出資源の重要な貿易港までになった。その後は、ドイツやロシアと戦争が繰り返されて、1800年頃にはポーランドの国自体も消滅している。


************************************************************


 ポーランドの内陸の地方は、かのスケベ親父の子孫が侵攻し、農民すらも皆殺しにしてしまう。侵攻後はモンゴルの王様が死亡し、モンゴル軍の統治も行われずに放置された。この地は人の住まない退廃した地方になってしまう。


 この地方に目を付けたのがドイツ騎士団で、彼らは、モンゴル侵攻で霧散したポーランド人を集め、さらに、ドイツ人、ユダヤ人をかき集めて、ヴィスワ川の運河を利用し各地に都市を建設していく。こうして当時のポーランドは大きく発展して行くことになる。簡単ですが以上。

(この中のユダヤ人がキーポイントとなります)

************************************************************


 である。大きく成長していくポーランドに魅力を感じたからだ。グダニスクはまだ小さい村だが、そのうちに、街になり大きな都市になると考えた。



*)境界の魔法は便利だ!


 グダニスク中心部には、ヴィスワ川があり大きな中洲がある。ここはポーランド最大の港湾都市となる。ここの大通りに倉庫を借りる予定である。


 リリーの鏡の世界に入る魔法以上に境界(=四次元の世界だろうか)は便利だ。私には理解が出来ない。三次元+一次元が四次元なら、任意の地点に跳躍が出来るはずだ。リリーを呼べば、たちどころに現れる事だろう。


「おーい、リリー。聞こえたら来てくれ!」

「はいは~い、何でしょうか? 御主人様。」

「おお、リリー。何と素晴らしい魔法だこと。ところで買い物は済みましたか?」

「うん、もう少し時間がかかるよ。だって、女の子だもん!」

「そうだよな。ソフィアだものな。着せ替え人形になってるんだろう?」


「もう昼だ、昨日のパブで待ってるぜ。」

「OK! オレグ。お腹空いたから沢山注文をしておいてね。」


 リリーは、俺との遣り取りの間だけ姿を見せていた。


 さて、俺さま一人で淋しいが、パブに入った。


「ニャァ、にゃ~、兄やぁ~」


 俺の足元に猫が纏わりつく。邪魔な猫だと思いながら席に着いた。


「こんにちは、ご注文は、ビールとホッケの塩焼き、サケのムニエル、アンチョビのピザとベーコンのピザですね。」

「そうだね、でもピザは食べる人間が違うから、後で、いや、後がいいな。」

「いいえ、もう食べたくて待てないそうです。ですので、お持ちいたします。」

「はい? 何でそうなる?」

「こちらの黒ネコさんがそう申されますので。直ぐにお持ちいたします。」

「ああ、分った、赤ワインを1本、甘いやつを頼む!」


「ありがとう、オレグ! うれしいな。」

「なに、境界の魔法のお礼さ! まだ何か頼みたい物はあるかい?」

「みんなが揃ってからがいいな。人数が増えると楽しいしさ。」

「んだな。キキは俺と半分こしような。」


 俺の座るテーブルの反対側に、かの魔女様が姿を現した。不思議な事に誰も気づかないのだ。たぶん、この魔女さんの任意の人にしか存在が分らないのだろうか。


「ええ、そうよ。お尻の打撲の治療費を現物支給でお願いね? ニコッ!」

「あんたの尻までは知らないよ、しかし、リリーが世話になったしね。この分はきっちりとお礼をしないとね。でも、よう、リリーが居なくなって心配したんだぜ。さらわれてしまったと考えたら、いても立ってもいられなかったんだから。」


「リリーが迷い込んだのは、私たちのせいじゃないわよ。文句を言わないで!」

「キキ、もう少し穏やかに話そうね。可愛い黒ネコさんだもの。」

「無理を言わないで。これ位でちょうどいいのよ。私が年上だわよ!」

「で、キキさんはお幾つで? らっしゃるかな。」

「女の子に年を訊かないで。返事は無しよ。」


「おい、リリー、今は何処に居るかい? 白魔女さんが会いたいとさ。」

「はいは~い、ここに居ますよ。もう直ぐ着くからね。」


「お待たせいたしました、追加のご注文を承ります。」

「なんだい、随分と手回しがいいな。ピザの同じものを2枚ずつと、ビールの一番でかいものを一杯。アップルパイの上等なやつを1枚ね。ニシンの塩焼きと、サバのみりん焼きを各三枚。いや、四枚だ。それと、ビールを追加ね。」


「はい、沢山ありがとうございます。直ぐにお持ちいたします。」


 暫くして全員が揃う。白魔女はいつの間にか消えていた。


「オレグ、アイネさんはもう帰ったの?」

「そのようだな。お腹を空かしていたから、俺んとこに来たんだろう?」

「何か言ってなかったの?」

「いいや、多分、リリーの境界の魔法のお礼をさせたかったのだろう?」

「それで?」

「ピザをご馳走したよ。それだけだぞ?」

「ふ~~ん。」

「なにか、問題でも?」

「べ~~~つに!」


 翌朝にボブの支払いと、届いた荷物の積み込みを行った。本格的に届くのは明日と明後日になる。九日の早朝にポーランドのグダニスク向けて出港した。


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