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ようこそ!ファンタジアへ!~レベル上げは必須でした~

あ~猫カフェに行きたい。

「す、凄い……」


そう表現するしかない。突然現れた目の前の赤毛の少女は小柄な体からは想像もつかないような力でグリーンウルフ達を剣の一振りで吹き飛ばした。


「ふふん。さぁ、何処からでもかかってこい!犬コロども!」


少女は剣を構えてグリーンウルフへと突き付ける。グリーンウルフたちは先程仲間を吹き飛ばされた為か警戒して中々近づけないでいる。


「き、君は一体…」


「話は後!先ずはコイツらをブッ飛ばすぞ!」


そう言いながら少女は突き付けた剣を構え直す。


「どうした?来ないのか?ならばーー」


「こっちからいくぞぉぉぉ!!」


そう宣言をしながら少女はグリーンウルフ達へと駆け出す。グリーンウルフ達は突然の彼女の行動に身動きがとれずにいる。


「せああっ!」


「ーーギャウン!」


動かないグリーンウルフ達の一体に少女の剣の一太刀が襲い一刀に伏す。ただそれだけの行為が僕にとってはまるでプロスポーツ選手の絶技のように遠い物に感じられた。


「い、一撃!?」


「ついでに、どおりゃぁぁ!!」


そのまま返す刃で右方向にいたグリーンも切り伏せる。たった一瞬でグリーンウルフはその数を半分以下に減らした。

驚きだ!あの狼達を剣一本でこうも一方的に吹き飛ばすとは!ここまで圧倒的だと連携も何もないだろう。


「ウォォォォォォォォォォン!!」

「オォォォォォォォォン!!」


ーッ!体が硬直した!『遠吠え』のスキルか!まずいぞ。いくら彼女が強くても動きが封じられたら形勢が逆転する!


「うるさぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」

「ギャウオ!?」

「意にも介してなかった!?」


遠吠えを行った一匹の脳天に少女の剣が叩き付けられる。

その衝撃であっさりとグリーンウルフは絶命する。


「レベルに差があるんだ…。『遠吠え』が効かない程に」


だとしたら彼女は少なくとも奴らよりもレベルが高い

。最低でもレベルが3以上あるということだ。


「(彼女が何者かは分からないけど、今は頼るしかない。情けないけど……にしても……)」


ーー格好いい。そう小さく口から漏らす。今僕の目に映る彼女はまるで物語の英雄だ。だれかの危機に颯爽と突然現れ瞬く間に救っていく。恥ずかしながら僕は彼女の一挙一動に目を離すことが出来ずにいた。


溜まったもんじゃないのはグリーンウルフ達のほうだろう。各々が完全に目の前の少女(かいぶつ)に恐れを成している。突然現れ、突然仲間を失い、スキルも全く通用しない強者。グリーンウルフ達は今漸く理解したのだ。狩る側だった筈の自分達がいつまにか狩られる側になっていたという事実に。


「キャンキャンッ!」

「キューンキューンッ!」


何とも情けない声でグリーンウルフ達は散り散りになって逃げていく。そんな奴らを見て、少女は呆れながら剣の構えを解かない。


「なんだ、逃げるのか。じゃあ最後にこれを食らっていけ!!」


そう言った少女は自らの剣を天へと突き上げる。すると剣に何やら力が溜まっていくのを僕の目からでも見て取れる。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!オリジナルスキル!!『超絶切り』ぃぃぃ!!」


ズガァァァァァァァァン!!!!


轟音が響きわたり、当たりに土煙が舞う。凄い威力だ!人間が出せる力とはとても思えない。本当に彼女は一体何者なんだろう。そう思いながら土煙が晴れるていく。そこには件の少女と、完全に沈黙したグリーンウルフ達がいるのだった。



「うーん。何体か逃げられたなー?残念だなー」


終わってみればただただ圧倒的だった。あまりの展開に僕は呆然とする。きっとアホ面を晒していることだろう。

怪我のせいで動きたくないのか、先程の衝撃で腰が抜けたのかその場を動くことが出来ない僕に少女が満面の笑顔で此方に近付いてくる。


「おーい!生きてるかー!大丈夫だったかー?」


「お、お陰様で……」


何と返せばいいのか分からず何処か投げ遣りな返事になってしまう。しかし、そんな事を気にした素振りは一切なく少女は誇らしげに僕の前に立つ。


「どうだワタシの剣技は!中々のものだろう!」


「ぁあ……はい」


突然そう聞かれて、また投げ遣りな返事になってしまう。


「む~?なんか微妙な反応だな~?」


「いや~その……凄すぎてよく分かんなかったというか……」


僕から見たら先程の光景は完全に漫画の世界の出来事なのだ。凄い凄くないという次元よりも、あり得ないといった方が適切だ。だが、これが夢ではないことはこれまでの行動で既に検証済みだ。


「そうかっ!?凄すぎたのか!えへへ~そっか~!凄すぎたか~!」


コロコロ表情が変わっていく少女に内心可愛いと感じてしまう。自分でも驚く程に僕はチョロいらしい。



「……づっ!ーーあいつつ!」


肩から鈍い痛みが襲ってくる。そういえば肩を怪我していたんだった!さっきまで必死だったり度肝抜かれたりとそんな事を考える暇が無かったからつい忘れていた。


「だ、大丈夫か!?肩か!?ちょっとよく見せてみろ」


「えっ!?ちょっーー」



少女が僕の肩を覗き込んでくる。ちょっ、近い近い!あ、でもいい香り……じゃなくて!変態か僕は!


「うーん。見た目よりかは酷くないのかー?これなら薬でどうにかなるな!」


そう言って彼女は腰に巻いてあるポーチから緑色の液体が入った小瓶を取り出す。……なんというか色がエグい。初見で青汁のイメージが浮かぶ。え、飲むのそれ?


「さぁ、飲め!」

「やっぱり飲むの!?」


ぶっちゃけ飲みたくない……!いや、飲まなきゃなんだろうけど色がもう……!近くで見ると青汁より色濃いし。


「んー?飲まなきゃ直んないぞー?」


「い、いやでもーー「いいから飲めー!」うおぼぅっ!?」


無理矢理口に小瓶を突っ込まれる。ギャー!飲んじゃった!緑の液体が喉元を通りすぎていく。


「うぶ?」


あれ?でも苦くない。むしろ甘い!


「お、美味しい!?」


「ふっふっーん!そうだろそうだろ!ワタシの村お手製の苦くないポーションだからな!」


意外だ。こんな青汁の3倍は濃い色してるのにまるでジュースみたいだ。ん?あれ!?痛みが引いてる!


「肩の痛みが無い!こんな一瞬で!?」


「このポーションは痛み止めだからなー。でも傷が治った訳じゃないぞ。次は包帯巻くぞ!」


成る程。さっきのは痛み止めの薬なのか。傷その物が癒えた訳じゃないんだな。

一応眼鏡を外して自分の体力を確認してみる。


シンドウ・クニハル level.1


HP : 34/34

MP: 23/23


状態:正常


攻撃力 13

耐久力 15

魔力 22

俊敏力 13

智力 32


汎用スキル:無し


マジックスキル:無し


オリジナルスキル


能力表示(ステータス) level.Max:パッシブ 対象の能力をデータ表示する 解析していないものは表示されない


異世界言語(アーテリア・バイリンガル)level.Max:パッシブ アーテリアの言葉を自動で翻訳する


解析能力(アナライズ) level.1:アクティブ あらゆる物を解析出来る能力 この熟練土では解析出来る情報は限られるうえに時間を要する




あっでもHP事態は回復してるんだ。一体何処までが基準になってるんだろう。怪我をしていても痛みと疲労がなければダメージとして見られないということなのかな。


「じゃあ服脱がすぞ!」

「ーーぶほっ!?うぉえ!?」


驚きの余り一瞬変な声が出た。



「な、何で脱ぐの!?」

「んー?脱がなきゃ包帯巻けないぞ?」

「いや、そうだけど!しょ、初対面だし、それに……お、女の子の前で裸になるというのはいかんともし難いものでーー」


無理無理無理!!いきなり異性の前で裸とか!別に鍛えてるわけでもないし!モヤシだし!恥ずかしい!

そもそもこれくらいなら自分で巻けばいいし!


「んー?初対面じゃなければいいのか?なら自己紹介だ!」

「え!?いやそう言うわけじゃなくてーー」


どういう解釈なのか、少女は慎ましやかな胸を強調しながら、誇らしげに名乗りを挙げる。


「ワタシの名前はレティア・チェ・ネッレヴッル!!トロック村出身の15歳!世界で一番の超絶すごい戦士になることが夢なのさ!」


こんなちっこくて同い年かとか、トロック村って何処だよとか、色々と突っ込みたいところ大量発生中だけど、まずこの子の名前何て言った?


「えと、ちぇ……何?」


「レティア・チェ・ネッレヴッル!」



ーー言い辛っ!舌噛みそうな名前してるな!


「えと、僕は新堂 邦治(しんどうくにはる。よろしくね。それじゃあ、そのレティアって呼んでもいいかな?」


「おー!いいぞ!じゃあワタシはシンドウだな!変な名前だなー?」


「あ、いや新堂は名字、ファミリーネームなんだ。クニハルが名前だよ」


「そうか?じゃあクニハルだ!えへへ~これでふたりは友達だな!」


おぅふ。そういえばナチュラルに名前呼びしてるし、されてるな。にへへ、と笑うレティアを見て若干顔が熱くなるのを感じる。女の子とここまで長く会話したこと何て今までなかったし、何て話せばいいのやら。


「よし!じゃあクニハル脱げ!」


ぎゃあ。振り出しに戻った。



「や、やっぱり脱がなきゃダメ?」


「当たり前だぞー!もう初対面じゃないから脱いでも問題ないぞー!」


「いやーあると思うよ?」


「うるさーい!つべこべ言わずに脱げー!」


いい加減痺れを切らしたレティアは実力行使で僕の服を剥ぎ取りにかかる。


「ぎゃー!やめてー!ひんむかないでー!せめて、せめて包帯位自分でやるからー!」

「遠慮するなー!脱げー!」

「いやー!お婿に行けなくなる~!!」



<hr>


「よし!これで完璧だな!」

「あぁ、うん。ありがとう……」


あの後結局上半身全部取り払われて包帯を巻いてもらうことになった。

は、恥ずかしい……!治療行為とはいえ会って数十分の異性に裸を見られるとは。異世界に来てから踏んだり蹴ったりだチクショウ。


「ところでクニハルはどうしてここにいるんだー?」


「え?どうしてってそれはーー」


ーーどう説明すればいい?異世界からふざけた案内状と一緒に飛ばされました、とか信じて貰えるか?最悪頭が可笑しい奴と思われる可能性がある。というかそもそも制約のせいで喋ること出来ないし!!


「ん~?」


うわぁお。滅茶苦茶ピュアな目をしてるよこの子!隠し事してる気分で何か罪悪感が半端じゃない!いやでも本当のことは言えないし……。しょうがない。


「が、学園に行こうとしてたんだけど道に迷っちゃって~、あっあははは~……」


嘘は言っていない。だが、本当ことも言わない!呪うぞクソ案内状!


「おー!?もしかしてファンタジア学園に行く途中だったのかー!?」


ーーえっ!?


「も、もしかしてレティアも!?」


「そうだぞ!ワタシは冒険者になるためにファンタジア学園へ入学するつもりなのさ!」


なるたる幸運っ!!まさかここで謎に包まれたファンタジア学園を知り、尚且つそこに入学するだなんて!


「てことは今そこに向かってる最中!?」

「うん?そうだぞー?」


イエス!イエス!イィィエス!まさかここまで上手く事が運ぶとは思わなかった!これは行幸だ!このまま彼女に同行させて貰えば、安全に学園に着く!そしてこの案内状を送り付けて、僕をこの世界に連れてきた奴を探しだし、元の世界に帰る方法を見つけ出す!


「ねぇレティア。僕もファンタジア学園に行くんだ。だから一緒に行かないかな?」


「いいぞ!」


即答!ナイスだね!何か利用してる感じで気が引けるけどこれも目的のため!耐えろ僕!


「けどクニハル大丈夫かー?」


「え?何が?」


「ファンタジア学園はレベルが低いと入学出来ないぞー?」


ーーーーえ?


「クニハルはグリーンウルフに苦戦してたからなー。今レベルいくつだー?」


「……1です」


「全然だな!?」


いやまって。そんな話聞いてない。この案内状があればいいんじゃないの?レベル上げが必要とか全然書いてなかったんだけど!?試験とか無いんじゃなかったの!?


「レベルとか、そんな話聞いてないよ!?」

「聞いてないも何も国の法律で決まってることだぞー?レベルをあげたことのない奴は冒険者の学園に入れないって」

「そんな……」


国の法律って、そんなのありかよ!もしここで学園に入れなければ、この異世界で宛もないまま、変な制約に縛られたまま、元の場所にも帰れない!最悪だぁぁぁぁ!!!


「ど、どどど、どうすればいい!?どれくらいレベル上げれば!?」


「せめて、グリーンウルフと同じレベルにならないとだなー」


グリーンウルフと同じ。つまりレベル3か!良かった。それなら2つ上げればいいだけだからそこまでじゃ無いかも。



「まぁ入学まで時間もあるし、行く途中で修行するか?」


「あ、うん。是非お願いするよ」


至れり尽くせりじゃないか。もうレティアには足を向けて寝られないな。

しかし、修行か。筋トレとか、体育授業とかでしかしたこと無いけど。


「それじゃあ頑張ってモンスターを倒すぞー!」


「おー!……お?」


ぱーどぅん?


「あのー。修行って筋トレとか素振りとかなのではー……」


「そんなのより魔物倒して経験魂(エクス)を貯めた方が早く成長するぞー?」


えくす?


「何?えくすって?」

「クニハルは何も知らないんだなー?外に出たこととか無いのかー?」


うっ。怪しまれてる。ここは話を会わせないと!


「……いやはは。お恥ずかしながら、外とは無縁のド田舎から来たもので、皆が知ってるような常識が分からないことも多いんだよ」


「そうなのかー?」


「そうそう!そうなんだよ!」

「ふーん?そっかー。じゃあレティアが教えてやるぞ!」


正直、彼女深く考えない性格で良かったと思う。


経験魂(エクス)っていうのはな?魔物を倒した時に出てくる魔物の魂ことでな?その魂を自分の中の魂に取り込むことで魂が成長して結果として自分の体も成長するんだ。これがレベルアップだな」


成る程、つまり普通に修行して肉体を強くするよりも魂その物を強くした方が手っ取り早いと。


経験魂(エクス)を取り込んだ時に体が何かポカポカしたらそのときはレベルアップした証拠だぞ」


すっごいアバウト。


「ねぇ他にレベルアップの確認方法ってないの?」


僕の場合スキルで可能だけど他の人が同じ事が出来るか知っておく必要があるからな。


「あるぞー?魂見聞球(ソウルオーブ)っていう水晶球があるんだけどな?それに触れば自分の情報が出てくるぞ」


あ、やっぱりそういうのあるんだ。じゃあ僕のこの能力表示(ステータス)って実は然程希少でもないんじゃーー


「でもなー?かなり珍しいから特定の場所にしか置いてないし、お金もかかるんだぞー」


前言撤回!かなりヤバイかもしれない!!下手すりゃこの世界の経済狂うかもじゃん!!この能力はこのまま秘匿すべきか……。


「むつかしい話はもういいぞ!そんな事より早く修行だー!!」


「あ、ああうん。ごめん」


とにかく今は強くならないと何も出来ない!何とかモンスターを倒して学園に入らないと!


こうして僕らはモンスターを倒しながら学園を目指すことになった。


あ~猫と戯れたい。

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