9話
「アイテムボックス……!」
そう、アイテムボックス。みんなが知っているアイテムボックス。
スキル【アイテムボックス】
生きているもの以外を異次元に収納できる。時間は経過せず、重さも感じなくなる。
収納できる大きさは1km×1km×1km×スキルレベル。
と、いうものでとても便利なものだ。さらに、スキル【リミットブレイク】で、効果が上乗せされているので、実際はもっとあるだろうが。
裏設定で、レベル1では対象に触れないと収納できなかったのが、レベルが上がるにつれて遠くからでも収納できるようになる。
さて、今僕がアイテムボックスを使うのを躊躇している、というか使うのを怖がっている理由だが、実はこっちに来る前に、あっちの世界からいろいろ持ってきたんだよね。アイテムボックスに入れて。だから、これが使えないといろいろ損することになる。
それに、アイテムボックスの中には『マナポーション』、つまり魔力を回復する手段が入っている。他にも宝石や魔石、愛用していた武具だって入っている。金銀財宝だって頂いてきた。別にこれくらいいいだろう。世界を救ってやったんだから。
では、いざ!
「【アイテムボックス】!」
ーーーーーーーーーーーー
・聖剣エクスカリバー
・宵闇シリーズ
・僕の作った最強の剣
・ミスリル銀×99+
・アダマンタイト×79
・オリハルコン×56
・ポーション×99+
・マナポーション×99+
・
・
・
ーーーーーーーーーーーー
「よし!!」
思わずガッツポーズをしてしまった。問題なく使える。これで働かなくていい!遊んで暮らせる!
……いや、やはり難しいな。どこから出てきたかわからないし、そもそもこの世界にない未知の物質だろう。かなり面倒なことになる。……別にいいか。殺し屋を雇われても何も問題……あるな。家族に迷惑がかかる。まぁ、そのことは後で考えよう。父さん母さんに相談すればいいし。
「ん?もうこんな時間か」
腕時計を見るともう6時くらいになっていた。…まずい。片道20分くらいかかったよな。少しばかり間に合わない。晩御飯に。くっ、仕方がない!マナポーションがあると言っても無限じゃないのであまり使いたくはないがしょうがない。完全に僕のミスだ。けど、失敗から学ぶのが賢きものだ。次、気をつければいい。
「【テレポート】」
転移したい場所の情景を思い浮かべ、自分が今いる場所と、転移したい場所とを、点と点でつなげるようなイメージ。
景色が歪み、方向感覚が一瞬奪われる。慣れたからいいものの最初のうちはよく酔っていた。懐かしい。
一瞬で自分の部屋についてしまった。
便利なぁ。
「母さーん、ただいまー」
「タツキ?帰ってたの?」
「転移魔法で帰った」
「あら、そうなの…。タツキ、靴を脱ぎなさい……」
「あっ!」
完全に忘れてた。母さんが般若を呼び出している。ス○ンド!?
「綺麗にしなさいね?もとどおりに、いえ、前よりも綺麗に」
「ハイ!【クリーン】!」
一瞬で家中が綺麗になる。
また魔力を無駄に使ってしまった。……つ、次に気をつければいいよね!
「ご飯もうできてるからね」
どうやら許してもらえたみたいだ。よかった。
「わかった。手を洗ったらすぐ行くよ」
母さんと別れ、洗面所に行く。手を見ると以外と汚れていた。
うーん、もう風呂に入ろうか。気持ち悪いし、このままご飯を食べると衛生面で少し、問題がありそうだ。料理が冷めてしまうがしょうがない。
「チャチャッと入るかね」
そう思って洗面所のドアを開けるとーーー
「ん?」
「キャアアアァァァ!」
「ご、ごめん!」
鈴音が着替えの真っ最中でほとんど全裸だった。妹相手になんてことやってんだ僕は!全く、鈴音の気配を感じ取れなかったなんてたるみ過ぎだろう。
後でしっかりと鈴音に謝って……。なぜ謝る必要があるんだ?妹の裸くらいどうってことないだろう。そうだ、ラブコメっぽい雰囲気に惑わされるところだった。よし。
ガチャ
「あー!もうびっくりしたなぁもうってキャアアア!何入って来てんのバカ兄貴!?」
「ん?別によくね?」
「よ、よくないよくない!てゆーか私今からお風呂だから出てって!」
「えー僕も今から風呂入りたいんだけど…」
「ダメ!私の方が先だったんだから後にして!」
「えー、あ、そうだ!なら一緒に入るか?なーんて冗談冗談…。鈴音?」
鈴音を見ると顔を真っ赤にして口をパクパクしていた。面白い顔だなって思ってしまったのはしょうがないと思う。てゆーかこいつどうした?
「鈴音?」
「うっさいうっさい!いいから出てって!」
「ハイハイ、分かりましたよッと」
最近、鈴音の事がわからなくなってきた。あぁ、お前もいつの間にか成長していくんだなぁ。にいちゃんは寂しいよ。
とりあえずこの後【クリーン】を使って綺麗にした。生活魔法くらいだったらもういいか。