17話
【生命感知】を使ったところ、サクラに近づく二人の影があった。妙にコソコソしているから良いことではないだろう。流石にこのままでは性別や力はわからんが、テンプレだとチンピラとかその辺だろう。
三人を視界に捉えた。
さて、ここからどうしよう。別にこのまま助けてもいいが、それだと人外の力を見せてせっかく仲良くなったサクラに怖がられてしまう。それは嫌だ。
どうする?【偽装】を使ってもいいがアレは周りの人全てに幻覚を見せないといけないから地味に魔力消費が激しそうだ。監視カメラにどう映るかわからないし。
あっ、サクラが気がついた。
うーんどうしようかな。お面でもつけるか?アイテムボックスの中になんかあったかな。
やべ、サクラがチンピラを怒らせた。あーもういいや。景品(異世界の)でもらったこのお面でいいや。
「おいおいテンプレすぎるだろう」
本当に。もうね、なんかの作品みたいなね。
「誰だてめえ!……誰だてめえ?」
「え?」
な、名前?名前かー、どうしよう。なんも考えてないぞ。
「仮面サトゥーだ!」
お家帰りたい。
もうね何言ってんだろう?ウケルー、一周回ってウケルー。
「なめてんじゃねえぞ!」
はははは、何?サトゥーって。もう少しマシな名前あるだろう「この野郎!」ライダーの方がよっぽどカッコいいよ。「うおぉぉお!?」たまに『ダッセ』とか言ってごめんなさい。僕の方が全然強い「てめえよくも!うぎゃあ!?」とか思っちゃってごめんなさい。「死ねえぇぇ!」あーもう消えてしまいたい「う、嘘だろ…。なんでナイフを折れるんだよ…?」死んでしまいたいー!
「はあぁぁ」
さて、自分の新たな黒歴史は置いておいて、
「ぐぁぁ…」
「ずいまぜん」
こいつらどうしよう。通報しようにもめんどくさそうだし、放置でいいか。……苦しそうにしてるけど骨も折れてないよね君たち。
「大丈夫かい?見知らぬお嬢さん?」
「タツキ?」
なんでバレたしー。もう死にたい。せっかく変装したのに意味がありませんでした。ただ黒歴史を作っただけでした。
「ちがうよ?」
一応しらを切る。
「タツキ?」
「…はい」
「なんで…ここに?」
なんて説明しようか。
①「僕、実は勇者なんだ!」
はい却下。信じないだろうし、変な目で見られる。それに、むやみにバラしていいわけがない。万が一、広まってしまったら、解剖されるだろう。抵抗するのは簡単だが、家族のことを考えるとな。
②「お前のことが気になって来てしまったんだ」
いいかな?いや、これじゃあ下手したらストーカだと思われてしまう。
他は?
③黙って去る
もうめんどくさい。これにしようか?ただ、せっかくできた友達とこんな風に別れるのはちょっとな。
あっ、ちなみになんでこの短時間でこんなに考えていられるかっていうと【思考速度上昇】があるからね。集中しないといけないし、疲れるからあまり使いたくはないんだけど。
さて、この中じゃ②が良さそうだな。
「お前のことが気になってきてしまったんだ。あっ別にストーカーじゃないぞ!女の子を一人で帰らせるのってどうかなって思ってそれで……サクラ?」
「ぐすっうううぅぅ」
泣き出してしまった。
「怖かった…どうなっちゃうんだろうって…怖かった…」
そりゃそうか、チンピラに絡まれて怖くないわけないもんな。
「あー、安心しろ。家まで送ってくから。チンピラももういないし、僕がついてる」
「…うん」
「心配すんなって、ちゃんと守るよ。だから元気出してくれよ。で、家どっち?」
「あっち」
「歩けるか?」
「大丈夫」
うーん、なんか調子狂うな。どうしよう。
…とりあえずお面を外そうと思った。