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太った幼馴染をダイエットさせたらすごいモテるようになって、慌てて俺は自分のものにすることにした

 俺、楠守くすのきまもるには幼馴染がいる。

 多分ものごころがつく前から知っている「あかね」だ。

 近くの家に住むあかねの親は遅くまで帰ってこないことが多いから、俺の家で面倒を見ることが多い。

 そのためかわからないけど、あかねは俺にベッタリだ。

 ちょっとグータラなタイプだからすぐに俺に頼ってくる。

 まぁ、俺も妹みたいな感じに思っているので頼られて嬉しくないわけでもない。

 だが、それが悪かった。

 甘やかしていたら、小学校のときからだんだんと太ってしまったのだ。


 「マー君。お菓子とって〜」


 今もソファーに座る俺の横にひっつくようにしてあかねがそう言ってくる。

 まんまるな顔にお腹にも余分なお肉がついている。

 このままではいけない。

 俺は心を鬼にして、あかねに言ってやることにした。


 「ダメだ。これ以上お菓子を食べるな。

  いいか、あかね。ダイエットだ。

  ダイエットしろ。やせるまでお菓子抜きだ!」

  

 そんな俺の言葉を聞いて「そんな〜。無理だよ、マー君!」と叫ぶあかね。

 だが、俺はここで立ち止まるわけにはいかない。

 保護者である俺が責任をもってこいつを元に戻さなくてはならない。

 硬く決心した俺はいまだにブツブツと文句をいうあかねをなんとかなだめすかして、ダイエットに取り掛かったのだった。




※ ※ ※




 「まさか、あそこまで変わっちまうとは……」


 俺はいま、自分が見ているものを信じられない気持ちになっていた。

 あかねダイエット計画を始動して早くも数ヶ月が経過していた。

 紆余曲折ありつつも、なんとかダイエットは成功したと言っていいだろう。

 ただ単に体重を減らしただけではなく、リバウンドしないように、急激に痩せて体に悪影響が出ないように細心の注意を払いながら計画を遂行してきた。

 そのおかげで、あかねは痩せるごとにどんどんきれいになっていったのだ。

 最初はダイエットに文句を言っていたあかねもやはり女の子なのだろう。

 きれいになっていく自分が嬉しかったのか、途中からは自分でダイエットのことを調べたり、美容のことを親に聞いたりと積極的になっていった。


 そして、今、俺の視界には美少女と言っていいレベルの女の子がいる。

 サラリとした肩まで届くくらいの長さの美しい黒髪。

 まんまるだった顔の輪郭はスッと細くなっているが、つついたら気持ちよさそうなもちもちのお肌。

 痩せてもなおボリュームの残る胸。

 その胸に反してほっそりとしたウェスト。

 すらっと伸びたきれいな足。

 あかねはどこをとっても文句のつけようがない体へと生まれ変わっていた。

 今では、学校中の男子があかねの体のどこが好きかを語り合う「フェチズム討論」などといったものが行われている。

 そう、あかねは学校中から注目されるまでになっていたのだ。


 ここ最近の俺は自分のした仕事を誇らしく思う反面、本当にこれでよかったのかという気持ちにもなっている。

 あかねがきれいになりすぎたからだ。

 今までは俺が隣にいるのは当たり前で、それについて誰かが何かを言ってくるということもなかった。

 もちろんクラスメートに茶化されたりしたこともあったが、「妹みたいなもんだからな」と軽く流してこられた。

 だが、今はどうだろうか。

 俺はあかねの隣に立てるほどの何かを持っているとはいいがたい。

 今まで感じたことのないモヤモヤした不安のような感情が俺の胸の中にくすぶっているような気がした。


 あかねはモテるようになった。

 きれいになった今でも少しタレ目なためか、おっとりした雰囲気を感じさせ、優しげな雰囲気を振りまいている。

 その上、男子がなにか手伝いなどをしたときにはニッコリと笑って「ありがとう」といったときなどの笑顔の破壊力はハンパない。

 あれでコロッと落とされた男子も多いのではないだろうか。

 あれはきっと俺が面倒を見ていたときに得た笑顔スキルだろう。

 そんなあかねだが、急にモテだしたからといって女子たちに目をつけられているということもないようだ。

 というか、もともと太っていたときからあかねはマスコット的な感じになっていた。

 ダイエットをしながらきれいになっていくあかねを見た周りの女子は、その秘訣を聞いてきたり、化粧テクを教えたりと一緒に楽しんでいる。


 それをみて、俺はあかねの存在がどこか遠くに行ってしまったように感じていた。




※ ※ ※




 「ねえ、聞いた? あかねがあの先輩から手紙もらったんだって。一人で校舎裏にきてほしいって」

 「え、うそ。先輩ってサッカー部の人だよね? いいな〜、あんな人に告白されたら、私すぐにオッケーしちゃうよ」

 「でも、悪い噂とかもあるらしいよ。いろんな女の子と遊んでるのを見た子もいるらしいし」


 学校の授業が終わり、俺は一度行ったトイレからカバンを取りに教室に戻ってきた。

 そのときに、まだ教室内に残っていた女子たちの話が聞こえてくる。

 先輩ってのはあいつのことか?

 俺も聞いたことがある。

 顔がいいからモテるけど、黒い噂が多いやつだったはずだ。

 思わず俺はカバンのことを忘れて、あかねが向かったという校舎裏へと駆け出していった。

 転がり落ちる勢いで階段を降りていく。

 一階に着くと、足をもつれさせながらも息を切らせながら全力で走る。

 後ろで体育教師が何か言っているようだったが、かまうものか。

 なぜこんなに必死になっているのか分からなかったが、俺は汗だくになりながらも走り続けた。

 そして、校舎裏が近づいて来たときになって、まだ見えない位置ながらもあかねたちの話し声が聞こえてきた。


 「……その、ごめんなさい」

 「ちっ、こんなに言ってもわかんねえのか。最近きれいになったからって調子に乗ってんじゃねえぞ。いいから、こっち来い」

 「いや、やめて! 誰か助けてっ! たすけてマー君」


 俺の名を呼ぶ声がした。

 それを聞いた瞬間、俺の頭は沸騰した。

 後のことなんか何も考えられなかった。

 俺は走る勢いを落とすことなく、校舎のかどを曲がる。

 するとすぐ目の前には、泣きそうになるあかねとそのあかねの手を無理やり掴んでいる男の姿が見えた。


 「あかねに触るな、クソ野郎が!」


 ろくにケンカをしたこともないが、無意識に手が出ていた。

 だが、悲しいかな。

 運動部でも主力メンバーとして活躍している男はケンカも強かった。

 最初に一撃を食らわせたものの、俺はその後は反対にボコボコにされた。

 俺を追いかけてきた体育教師がその現場に来てくれなかったら、まずかったかもしれないとは後で聞いた話だった。




※ ※ ※




 「もう、無茶しないでよ。マー君になにかあったら、わたし……」


 あれから職員室で話を聞かれて、だいぶ遅い時間になってようやく開放された。

 今は俺の家に戻ってきている。

 あかねはきれいになったはずの顔をクシャクシャにし、涙を浮かべながら俺の傷の手当をしてくれていた。

 せっかくの可愛い顔が台無しだ。

 俺は指を伸ばして、零れ落ちそうになっている涙を拭ってから、宣言した。


 「いいか、あかね。

  俺はおまえがまた今回みたいなことになるんじゃないかと心配だ。

  だから、これからは俺がおまえのことをずっと守る。

  おまえが嫌だって言っても絶対に守る。

  いいな?

  そのかわり、おまえの全ては俺のものだからな。

  おまえの体も心も時間も全部俺のものだ。

  絶対に手放さないからな!」

  

 「え……マー君、それってプロポーズ?」


 「う、うるさい。これは決定事項だ。

  あかねに拒否権なんかないんだからな!!」

  

 「うん、うん。分かった。私はずっとマー君のものになるよ。

  だから、ずっと守ってね。約束だよ、マー君」


 こうして俺はあかねを自分のものにしたのだった。

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