もふ怪談
これは実話を素にしたものである。
それは高校の時だった。その家には犬が一匹いた。鎖に繋がれている。
さらに猫もいた。3匹もだ。
しかもそのときメス猫が妊娠していてしばらくすると4匹の子猫が生まれ、里子に一匹、つまり3匹も残って計6匹にも増えることを知らない平和な時だった。
夏場になり暑くなった。猫どもは、ここに来てからの2度目の夏だ。
毛皮を着ていて暑そうだった。
ひんやりした床で寝転がっていることが多くなった。
ある夜、寝苦しくて俺は起きた。真っ暗だ。
2階に寝ていたため、下、つまり1階の台所へ行くことにした。
スリッパなんて履くのも面倒だったので裸足で飲み物を取りに行く。
階段も真っ暗で足元も見えやしない。が長年住んでいるから適当に進む。
階段を一歩、二歩と降りていく。
――むにっ
何か、柔らかい物が足の裏に触る。
猫!
咄嗟に足をさらに前に出す。意識が冴える。目を覚ます。
当時はまだ十代。若い。反射神経もある。なんとか回避。
そんな間違ったことを思ったりもした。若いということは経験不足ということ。
また一段飛ばした先にも危険が潜んでいた。
――ふわっ
ネコ!
2段構え!
だが、さらに足を前へ。後ろの足を蹴り、さらに踏み出す。
クラスでも2番目に背が高かった。もちろん足も長い。
2段飛ばしで対応する。
恐るべしっ!連続攻撃だった。
まだそんな甘い考えだった。
――もふっ
ね~こぉーー!!
二度あることは三度ある!!
頭を後ろに反らし、更なる前進を足へ与える!
踏むことは回避した。だが、体勢は立て直せなかった。
つまり階段を滑り落ちた。
けがはなかった。
俺もだが、猫たちも。
それから俺は階段を降りる際は必ず点灯して足元を確認している。