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ゼンと力を合わせて。

「聖女の時と全く同じ感覚だったので、あの男性が、神様だと思うのです。・・・あまり認めたくありませんが。」

「神託は、わたくしたちが無様に転がる所を見るための物だったということですか。」

「その、何と言ったらいいか。」

「いえ。いいのです。もともと神を崇拝しているわけではありませんし。わたくしたちがその神の思惑から外れて行動したことで、神の心が乱れているのなら、してやったりというところですかね。」


しれっと言うゼンに笑ってしまった。



「それでですね、ゼン。貴方の力をお借りしたいんです。ゼンと私が力を合わせれば、前世の世界の女神様とお話ができるんじゃないかと思うんです。」


すると、ゼンは驚いたように私を見る。


「わたくしも天音のようにセイジョになれるのですか?」

「ち、違います!聖女は女性を指すので、ゼンは聖女とはいいません。」


思わずゼンの女装姿を想像してしまった。美人さんだったけど。


「ですが、ゼンは聖女と同じ力を秘めていると思うのです。」

「わたくしにそんな力が・・・」


呆然と自分の手を見ているゼンの両手を握りしめ、まっすぐにゼンを見る。


「女神様は私の力が二倍あれば、勇者様を送還できるとおっしゃってました。違う系列の日本に干渉できるということです。そうすれば、身代わりをしてくれている、ゼンのお兄さんの運命の人を呼ぶ召喚陣を作り直せると思うのです。」


私の握った両手をぐいっと引くと、ゼンは私を抱き締めた。


「本当に天音に会えて良かった。そうですね、わたくしと天音が力を合わせれば何でもできるとわたくしも思います。」


何でもは言い過ぎだと思うけど。私は抱き締められながら、ゼンを見上げる。


「でも、今のままじゃまだ力は足りませんよ?ここの神殿にも修練の場がありますよね?そこで私と修行してください。」


そう言うと、ゼンは困った顔をした。


「この屋敷には結界がはってあるので、天音をここから出すわけにはいかないのです。この世界が別の人物を『異世界の乙女』として認識していますが、天音が外に出てしまえば、どうなるのかわかりません。」


そうか。この屋敷の優しい雰囲気は、ゼンの結界だったのか。結界だって簡単に作れるものじゃない。本当にゼンは凄いなあ。


「修練の場が使えないのなら、仕方ないです。とりあえずは、このお屋敷でできることをしましょう。」


そう言うと、ゼンに体を離してもらうようにお願いする。ちょっと不服そうなゼンがかわいいなと思う。


ゲームでゼンの事をかっこいいとか、大人な感じで素敵だなと思ったことはあったけど、かわいいなんて思うことはなかった。きっかけはゲームでも、私はちゃんと目の前のゼンが好きなんだと、暖かい気持ちになる。これは聖なる力を使うのに必要なこと。聖女の時は、自分の周囲の人の幸せを願って、みんなの笑顔を思い浮かべて使っていた。今はゼン一人を想えばいい。恋の力は偉大だ。


「ゼン、わかりますか?これが聖女の力です。」


私はさっきと同じようにゼンの両手を取る。


「これが!?・・・凄い、圧倒的な力の量なのに、とても暖かい。」


そういえば、勇者様を想ってもこんなに力は溢れ出なかったなと思っていると、やっぱりゼンに抱きしめられた。


「ゼン、これは修行」

「貴女がわたくし以外のことを考えている気配がしました。」


け、気配と来たか。鋭いの域を通り越してるよね?


「それと、このやり方は貴女がセイジョだった時にもしていたんですよね?」

「え、ええ。そうですね。」

「ということは他の男にも手を握らせていたのですよね?」

「・・・はい。」


嘘をついてもばれる気がしたので正直に言うと、さらに強く抱きしめられた。


「すみません。醜い嫉妬だとは思っているのです。ですが、我慢ができない。」


苦しそうに言うゼンには悪いけれど、私は嬉しくなってしまった。ゼンの背中をポンポンと叩く。


「私もごめんなさい。ゼンの嫉妬が嬉しいです。でも、聖女だった時と、今の天音わたしは性格も違うし、全く同じ人物じゃないんです。天音は男性とこんなに近くにいたことはないですよ。あ、聖女の時だってこんな、抱きしめられたことなんてなかったですけど。」

「このような、嫉妬深いわたくしは嫌ではありませんか?」

「じゃあ、ゼンは私が嫉妬していたら嫌いになりますか?」

「ありえません。」


そう言ってくれると思ったけど、即答されるのは嬉しいな。じゃあ、私も白状しようか。


「私も、私の身代わりをして下さってる方に嫉妬しています。」

「何故です?彼女は兄の半身ですし、恐らく彼女はわたくしのことを癇に障る嫌な奴だと思っているでしょう。」

「何でゼンがそんな悪印象を持たれてるんですか。私はそっちの方が不思議なんですけど。まあ、そう言う事情は関係ないんです。ゼンは何度かお城に行っていますよね?」

「ええ。」

「その時にその方に会っているんじゃないですか?私が知っている『異世界の乙女』はお城で過ごしていましたから。」

「そうですね、毎回会っているわけではないですが、何度かは話をしています。」


そうなんだ。毎回会っているのかと思ってた。


「それでも、毎回ではなくても、私がゼンに会えないのに、会っている彼女が羨ましいんです。」

「ふふ。なるほど。確かに嫉妬をしてもらえるのは嬉しいものですね。」


ゼンはそう言うと、落ち着いたようで私を放してくれた。でも、疑問が残る。だって、ゼンは召喚陣が不完全だったことに責任を感じていた。


「ゼンは、その方に文字を教えているんじゃないですか?もしかして、すぐに覚えてしまったから、毎回会わなくてもいいのでしょうか。」

「いいえ。わたくしは教えてはいません。兄が今も彼女にぴったりと付いて教えていますよ。わたくしがその役目を担ったら、兄に怒られてしまいます。」


ああ、なるほど。ゼンのお兄さんは優秀だって言ってたから、自分の仕事を早く終わらせて、夕方とか夜とかに文字を教えているんだろうか。


「彼女が学園に行ってる時以外は、一日中、一緒にいるようですから、そろそろ覚えてもいい頃なんですけどねぇ。」


学園に行ってる時以外は一緒?え、じゃあ、仕事をしながら教えてるの?いや、そもそも、一日中って、一日中って!?


「ああ、そう言えば、彼女が天音のことを心配しているようですよ。」

「私のことを心配?」


そう言えば、異世界から別の人物をって、その異世界って日本なんだろうか?もしかして、私の知ってる人?そう思ったけど、ゼンの話は違った。


「彼女に、本物の天音はどうしているのかと聞かれたので、わたくしの家にいますと言ったのですが、天音の意思を無視して、無理やり閉じ込めているんじゃないかと疑っているようなのです。」

「そんなことないです!何でそんな勘違いをされているんでしょう?」


きっと何か誤解があるに違いない、私はゼンの両手をさっきみたいに握りしめた。いきなり修行モードに入った私にゼンはびっくりしている。


「私、目標ができました。」


この世界の神様を何とかしようとしているのはこの世界のため、女神様と話そうとしているのは召喚陣の改良のため、召喚陣の改良はゼンのお兄さんとそのお相手のため。これは、私だけの目標。


「その方にゼンの素晴らしさを知ってもらって、好印象に変えてもらうんです。」


自分の好きな人を好きになられると困るけど、嫌われるのも悲しい。こんな複雑な思いがあるんだな。


「私が会えるのは、再召喚がされたときですよね、だから早く召喚陣を完成させなくちゃ。修行、頑張りましょう!!」

「わたくしは、どちらでも構わないのですがね。」


張り切った私にゼンは苦笑しながら、修行を再開し始めた。

ちなみに、ゼンは身代わりをしてくれてる人に、天音は自分だけのものだから、誰にも会わせませんよ。とか言ってます。

天音は天音で監禁されてる状態ですが、自分が気にしていないので、何で、ゼンが悪く思われているんだろうと不思議に思ってます。

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