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よみがえった聖女の力

「何で別人になってんだよ!!」


男性の苛立った怒鳴り声で目が覚めた。いや、目が覚めたんじゃない、意識が覚醒したって言った方が正しいかな。懐かしい感覚。聖女の時に夢で女神さまと話していた時と同じ感覚・・・ってことは、この男は神様?


髪の毛は茶色、だらしなく伸ばされている感じで、とってもへいぼ・・・親しみやすい顔をしている。その(恐らく)神様はテレビを横になって見て文句を言っている。


「んだよ、そろそろ面白い風に人間関係が荒れてるんじゃねーかって期待したのに。なんかおかしいと思ったらこいつ、別人じゃん。」


何を見ているんだろう?別人ってなんだ?


「本物どこだよ、確かに来たのはわかってんのに。・・・探れねー、なんなんだよ、俺神様だぜ!?異世界の人間は把握しづれーのか?」


異世界の人間・・・って私のことかな?恐らくこの神様が探しているのは私の魂だろう。だけど、今私の魂はココにいる。神様の斜め後ろだ。そりゃ下界を探したって見つからないと思うんだけど。そもそも、この世界に聖女というか、それに近い存在はいないから私がココにいることも気づいてないんだろうな。


「あーもういいや、どうなんの?この後・・・」


そう言いながらリモコンを操作して、早送りしてるんだろうか、テレビ?の画面が速い速度で動いていく。


「・・・っつっまんねーの。この国亡ぶどころか繁栄しちゃうじゃん。」


そう言うと、神様はぽいっとリモコンを放り投げた。


「も、最悪~~。やっぱ神託とか教えなきゃよかったわ。『異世界の乙女が現れて、その乙女の奪い合いで国が亡ぶ』なんて聞けば慌てふためいて何もできなくて絶望するか、その現れた乙女をどうにかしようとするか、どっちにしろ面白い展開になると思ってたのにな。」


え?何の話?『異世界の乙女』ってヒロインのことだよね?もしかして、もしかすると、異世界から来た私がヒロインだった?友達はヒロインが逆ハーを作ったら国が亡びたっていう文章が出てきたって言ってたよね。私って国を亡ぼす原因になるんだったの?


「まさか、別の異世界の人間を用意するとか、人間のくせに神様のこの俺の楽しみ邪魔すんじゃねーよ。あーあ、この世界に『異世界の乙女』として、この偽物が登録されちまってるからな。今から書き換えることもできねーし、そもそも本来の奴は見つかんねーし。国が亡ぶところ見たかったのになー。」


とりあえず、落ち着こう。今はこの神様の独り言を聞けるだけ聞いておいたほうがいい。私はそのまま神様の領域に居続け、ここである程度の情報を得た。



恐らく、この世界は前世の世界と同系列の世界なんだ。私は前世で女神さまのお話の中で聞いたことを思い出した。前世では日本から勇者様を召喚した。その勇者様を何とか日本に帰してあげられないかと相談した時、女神さまは日本は系列が違うから、自分では手出しができないとおっしゃった。


同系列の世界であるならば、移動させることは女神さまのお力でできると。ただ、その範囲で魔王を倒せるものは見つからなかったから、女神様の助言の元、異世界召喚をすることになったのだ。召喚の術は作れたけど、送還の術は作れなかった。女神様と何度も相談をしたけれど、勇者様を無事に日本へ送るには力が足りなかったのだ。聖女が二人いれば、できたかもしれないけれど、聖女わたしは一人だった。ただ、聖女が一人でも魂だけなら送れるという結論は出た。その時は意味がなかったけれど。


送還の術を研究していたからだろうか、私の魂は元の世界と系列の違う日本に移動した。そして、元の世界と同系列のこのセルドニー王国に魂が引かれて、異世界トリップしてしまったのではないだろうか。だから文字とかにも違和感がないし、日本じゃ全く感じられなかった神様の気配もこの世界に来てから感じることができた。そしてこちらの世界に来たことで、聖女の力も戻ってきて、こうやって神様の領域に足を運ぶことも可能になったのだと思う。


それにしても、このセルドニー王国の神様はダメすぎる。この世界にはこの神様しかいないんだろうか、前の世界ではもっと何人もの神様がいたんだけど。まあ、別の神様がいればこの神様の行動を諫めてるよね。こんな神様でよくこの世界は滅びないと思う。神様っていうのは世界を存続させていく為にどうするか、常に考えている方だったよ、前の世界では。


聖女の力をもう少し頑張って増やして、前の世界の神様とコンタクトが取れないだろうか。うちの女神さまはそれは優しい人だったけれど、隣の国の女神さまは確か、女王様系の女神様だった。その女神さまにこの神様を躾けなおしてもらいたい。そうすればこれからは、こんな神様を楽しませるためだけの神託の出し方をすることはなくなるだろう。


今回は神託に対して、人が考え、その神託を回避するために対策を立てたけれど。そうでなかったら、私は、ゼンに保護されなかったら、私は・・・逆ハールートでセルドニー王国を亡ぼしたんだろうか。


それって、牢屋に閉じ込められても不思議じゃないよね。すごい危険人物なのに、ゼンは私のことをお屋敷にかくまってくれてる。身の安全も保障してくれてゼンはかなり無理をしているんじゃないだろうか。私はゼンを救うと決めたはずなのに、逆に迷惑をかけてしまってる。


どうしよう、すぐにでもゼンの所から出ていった方がいい?


嫌だ、離れたくない。


私をかくまっていることでゼンが処罰されるんじゃないの?


嫌、ゼンと一緒にいたい。


二つの気持ちがせめぎ合っていて結論が出ない。


多分ゼンは私のためにこの神託を隠しておいてくれたのだと思う。それなら、私一人の考えで勝手に行動したらいけないのだろう。私が出ていくことは簡単だけど、ゼンは事情があるって言ってた。この神託のことだけじゃないかもしれない。私が聞いてしまった真実、そして前世のこと、乙女ゲームの話、そう言うのを全部含めてゼンと話そう。


天音は簡単にゼンの家から出られると思ってますが、たぶん出られないでしょう。

だって、ゼンだもの。逃がしはしません。

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