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ヒロインと張り合うには。

そう、今更ながら気づいてしまった。ゼンの『学園生活』という言葉で。


ヒロインがこれから来るのか、それとも、もういるのかはわからないけれど、学園には私も通わなくちゃいけないんじゃないだろうか。『異世界から来た』なんてことは関係なく、ヒロインは王家が後ろ盾になっていたから強制的に学校に行くことになっていた。私だって、神殿が後ろ盾のようなもの。ううん、神殿というより、ゼンが後ろ盾なのだから、やっぱり王家が後ろ盾なのかもしれない。それならますますヒロインと条件は同じはずだよね。


一応、書物をあさってみるけれど、貴族や裕福な家庭は学園に通う義務があるのは間違いなさそうだった。


さて、学園に通うとして、ゼンに面倒を見てもらっているのに、酷い成績とかは残せない。勉強面ではどうだろうか、ゲームの中のことを思い出す。それと、こちらで読んだ本を照らし合わせてみる。うん、大丈夫そうだ。どちらかと言えば日本の方が水準が高いと思う。悪くない成績を取れそうだ。


体育はどうだろう。最近体をちゃんと動かしてない。ストレッチくらいしかやってないから鈍ってしまってるかな。でも勘を取り戻せば、いけると思う。運動は得意な方だ。


淑女の嗜みとかで、刺繍の授業もあったと思った。裁縫技術は聖女の時の腕が落ちずに転生できたので、それも得意だ。聖女は神殿の外へ出かけることはなかったので、自分自身で孤児院への慰問とかができなかったから、渡す品物だけは参加したくて服や布の玩具とかを作った。その時に技術が上がったんだろうな。日本では両親が忙しかったから、料理も自分でしてた。なので、家庭科関係は心配いらない。


・・・ヒロインに張り合えるだろうか。もし、ヒロインがいるとしたら、どのくらいのステータスなんだろうか。逆ハールートにいったという友達は、全部のステータスが満タンじゃないと駄目だったって言ってた。私が阻止したいのは、ゼンが不幸になる逆ハールート、それと、ゼンが幸せになれるかもしれないけど、できれば私が幸せにしたい。だから、ゼンルートも阻止したい、これはただの私の我儘だけれど。


でも、私はゼンと暮らしている。これって有利じゃない?ゼンは私の好感度が高そうだけど、ゲームのように目で見られる数値はない。ゲームとは違う生身のゼンだからこそ、私はゼンをヒロインに渡したくないのだ。なら、私ができることは・・・


「・・・色仕掛け?」


そう呟いて自分の胸元を見る。私と同年代の女の子たちより、ちょこっと寂しい・・いや、これからバンバン大きくなる予定ではあるけれども、でも今はこうなわけで・・。


「ゼンにイロジカケ・・・」


これほど現実味のない言葉もないだろう。それに確実に色っぽいのはゼンの方だ。


「虚しい。」


呟く言葉も『胸・なし』っぽいなと悲しくなっていると、ゼンが帰ってきた。


「どうしたのですか、天音。」


今の虚しいとか言う言葉を聞かれてしまっただろうか。いや、ゼンはノックして今この部屋に入って来たんだから聞こえてないだろうと頭を切り替える。


「お帰りなさい、ゼン。」

「ただいま戻りました、天音。おや、それは」


ゼンの目線を追うと、私が描いた花の絵を見ている。まだ、鉛筆の線で描いただけで、完成はしてない。


「ゼンからもらった白いバラを綺麗なうちに残しておきたくて。まだ、色は付けてないんですが。」


できれば写真に撮っておきたかったけれど、スマホの充電はとっくに切れていたから、絵で残しておこうと思ったのだ。


「色がついていなくても、素晴らしい絵です。天音は絵も上手なのですね。バラも、この姿を残しておいてもらえるのは、幸せなことです。」

「そんなに褒めてもらうと恥ずかしいんですが、ありがとうございます、嬉しいです。」


しばらく他愛のない話をしてから、学園の話を切り出した。



「ゼン、あの、私は学園とか行かなくていいんでしょうか?」

「何故、そんなことを急におっしゃるのです?天音はわたくし以外の誰に会いたいと?」


この間弟さんのことを聞いた時のように、少し怖いくらいの表情でゼンは少し早口にそう言った。


「え?誰かに会いたいとかじゃなくて、私は前の世界では学生だったので、こっちの世界でも通わなくちゃいけないんじゃないかと思ったんです。」

「本当ですか?天音はこの生活に飽き、嫌気がさしてきているのでは?外に出られず、会えるのはわたくしだけ。使用人はいますが、貴女とは会わせたことがない。そんなこの状況が嫌なのでは?」

「んー。そう言うことは考えたことないですね。それに、誰に会ったとしても、私はここにいたいと思います、ご迷惑でなければ。」


ゼンと二人でいることに喜びはしても、飽きたりなんかしないし、嫌になるわけもない。元々そんなに出歩くようなタイプでもないから、全然違和感はないんだけど。すると、ホッとしたような表情でゼンは学園に行かなくていい理由を説明をしてくれた。


「迷惑などありえません。すみません、天音。取り乱してしまいまして。実は、異世界から来た貴女を自分の物にしようとする輩がいるのです。そんな者たちから天音を守るためにはここが一番安全なのです。」

「私なんかを狙っても何も得るものはないと思うんですが。やっぱり物珍しさがあるからですかね?」

「それもありますが、知識欲のある者は異世界のことを知りたがりますし、天音のいた世界では普通のことだとしても我々にとっては大発見ということもあります。」


なるほど。確かに小説とかでも異世界知識をふんだんに使う主人公とかいたもんね。でも、知らない人に利用されるのは嫌だよね。守ってもらえるのはありがたい。学園は大勢の人が出入りする場所だもの、守ってもらう立場からすれば、そんな危ないところには行かないほうがいい。聖女の時だって魔王討伐の旅以外は、神殿から出なかった。ヒロインのことは気になるけど、ヒロインとゼンが会うのは神殿で学園じゃないし。


「何より天音の美しさを見れば、どんな男も貴女をさらって自分の物にしたいと思うでしょう。」

「それはないと思いますけど。」


ゼンは何故か私を可憐だとか美しいとか言ってくれるけど、いたって普通の女子高生には褒め殺しは対応が困ります。


「あの、守ってくれるのは嬉しいです。でも、ゼンの負担になってしまうなら言ってくださいね?私は保護してもらってるのに、何の役にも立ってないし、滞在費だって馬鹿にならないだろうし、こっちのことを教えてもらうのに精一杯で、世の中を変えちゃいそうな便利な異世界知識も思い浮かばないし」

「天音。」


ゼンは段々自己嫌悪に陥ってきた私の両頬に手を添えて、じっと私を見つめた。う、うわー大好きな人がものすごく近くて、きっと私の顔は真っ赤になってると思う。


「天音。」

「ひゃ、ひゃい!」


ゼンはクスッと笑った。息がかかるくらい近い!!


「窮屈な思いをさせてしまって申し訳ありません。ですが、一年はこの生活のままだと思っていただきたいのです。他にも事情があるのですが、半分以上はわたくしの独占欲です。天音を誰にも取られたくない。」

「え!?」

「わたくしは一目で貴女の虜になってしまったのです。貴女がこの世界で一番初めに会ったのがわたくし、そして今後もわたくしだけを見つめてほしい、わたくしだけと会話をしてほしい。そんなことを願ってしまっているのです。」

「え、ええと」

「このようなわたくしの気持ちは天音にとって、悪いことでしかないのはわかっているのです。」

「え!そんなことないですよ!?すっごく嬉しいです。元々ゼンだけを選ぶつもりで」


嬉しいけど、あれ?それって軽いヤンデレってジャンルの人っぽいような・・・気のせいかな!ゼンは優しく笑って私を抱きしめた。こんなに男の人が近くにいるのは前世を含めて初めてなんですけど!しかも相手は大好きな人。手、手はどこに置けばいいのかな。


「天音。」


そんな混乱している私にゼンは耳元で艶っぽく私の名前を呼ぶ。もういっぱいいっぱいですってば。こんな私が色仕掛けなんて到底無理な話だった。


色仕掛けなんてしなくても襲われそうですね。危険危険。

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