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空を地竜が飛ぶまでに  作者: こうづき
1 春の日は、雷鳥(イクル)のごとく慌ただしい
3/21

1-2 夜間部の新入生たち


 新しい教室、新しいクラスメイト、そして始まる新しい学校生活。異世界だろうと何だろうと、このちょっとした緊張感は変わらない。

 夜間部の教室は、昼間部――日本語では全日制と言うほうが適切だろうか――とは別の建物にある。一見すると明治時代の洋館のようなデザインだが、よく見れば日本とエルトラの様式が折衷された、挑戦的な建物。洋館らしい雰囲気を残しながらも、広い屋上が設けられているところにエルトラらしさを感じる。簡単に空を飛べるこの世界では、屋根の上も立派な道路のひとつだ。

 内装は日本の学校を参考にしているそうで、ビックリするほど普通の学校の教室だった。黒板があってロッカーがあって、一人掛けの椅子と机が二十個ばかり並んでいる。

 ――そしてその教室の真ん中に、さっき爆発していたあの女の子がいた。

 黒髪をポニーテールにした彼女は、髪留めのリボンこそエルトラの流行りだが、着ているのは明らかに日本のセーラー服だ。確か、さっきはその上からダサいジャージを羽織っていたはずだが。

「さっき大爆発してた割に、元気そうっすね……」

「爆発したから、無事なんだろう。地球の車についているエアバッグのようなものだ」

サラクが面倒臭そうに説明してくれる。あの爆発で落下の勢いを殺したということか。

 とはいえ、普通に魔法で飛んでいるなら、よほど粗っぽい運転とびかたをしない限り、エアバッグのお世話になる前に充分な減速ができるはずだ。だから普通の女子高生は、空から降ってきて爆発なんてしないはずなのだが……さてはコイツ、かわいい顔してスピード狂か?

「それではまず、皆さん順番に自己紹介をしていきましょう。これから一緒に勉強していく仲間です。夜間部にはさまざまな経歴の生徒たちが揃っていますから、お互いのことを知るのはとても大事なことなのですよ」

 担任の先生は、どこか百戦錬磨の雰囲気を感じさせる中年の女性だった。言葉はだいたい聞き取れそうだ。さて、話すほうはどこまで行けるだろうか。

 緊張しながら自分の番を迎え、黒板の前に出る。

「リツ・エイス・ヴァネイザ、昼間は魔具工房で働いてるっす。家の都合で、長く日本で暮らしてたんで、色々わかんないことも多いっすけど、助けてもらえたら有り難いっす」

 自己紹介をする俺の顔を、あのスピード狂がじーっと見ている。ひとまず、さっきのことはお互い忘れようじゃないか……という思いを込めて見返してみた。伝わったかどうかは分からない。

「サラク・タット・ワラグニスだ。リツとは同僚になる。ここには、職場の親方に勧められて入学した。よろしく頼む」

 うちの親方がサラクに入学を勧めたのは、いわゆるスキルアップのためだ。国境の町という土地柄、日本語は喋れるに越したことはないし、魔具ハイデラの製作にあたっては、魔法ハイデーレン工学の知識もあればあるほどいい。魔法を使う行為自体は、この世界ではよちよち歩きの子供でもやっていることだし、市販の魔具パーツを組み合わせれば自分なりのアレンジも簡単だが、魔具工房はそのパーツそのものを作り出すのが仕事なのだ。

 その後も自己紹介は続く。当然のことながら、クラスメイトはこの町の人間が多い。たとえば教室の一番後ろに座っている、安っぽい装身具をじゃらりとつけた黒髪の青年。

「俺はウァズ・ドロゥア・カーレヴィ、昼間は土産物屋の看板息子をやってます。土産物のことなら、ぜひ二番街の土産物屋『アマガラス』へ! お土産ひとすじ十七年、この星ナズリと地球の皆様に愛されてここまでやって参りました。人気の文房具やTシャツも充実してるんで、どうぞよろしく! サービスしちゃうぜ!」

 店名のアマガラスは「ドロゥア」の日本語訳だろう。二つ年上の彼の進学理由は「店がヒマすぎるんで、勉強でもしようかと!」だそうだ。いいのかそれで。

 かと思えば、異世界に憧れて、わざわざ遠くから引っ越して来たという物好きもいる。

「うちは北部州から来た、ユイル・ハラン・シャルメネって言います。卒業したら、異世界ちきゅうに渡って絵の勉強をするつもりや。よろしゅうな!」

 そんなボブカットの女の子のあとには、上品な雰囲気の老婦人が続く。

「わたしはメリサ・ハラン・エリクゼム。もうこの年ですから、思い残すことがあってはいけないと思って、前から憧れていたこの町へ移って来たの。おととし連れ合いを亡くして、今は身軽なものだしね。子供達にはずいぶん反対されたけれど、知ったことですか」

 首都のほうでは怖い所だとウワサされていたけれど、自分の目で見てみなければ分からないものね――と続け、メリサはきゅっと目を細めて笑う。顔のしわの入り方にさえ上品さを感じるが、雰囲気とは裏腹にアグレッシブなバアさんである。

 ちなみにユイルとメリサのミドルネームが同じだが、これは資称ナレハといって、ひとことで言えば、自分がどういう魔法に向いているか、という体質を示すものだ。魔法というのは厄介なもので、同じ魔具を使っても、人によって効果が大きく違ってくる。それは異世界ちきゅう人だろうと同じことで、この世界に渡ってくる人間は、必ず魔法の適性検査を受けて、三十種類以上ある資称ナレハのうち、どれかひとつをミドルネームとして授かることになっている。

 大昔は同じ資称ナレハの人間としか結婚できなかったとか、資称によって就ける職業が決まっていたとかいう話だ。とはいえ、今は魔具の進化によって補える部分もあるせいか、そこまで厳しいものでもないらしい。実際、俺は魔具職人に最も向いていると言われる「エイス」という資称ナレハを持つが、同じ魔具工房で働くサラクの資称は、一般には土木作業向きと言われる「タット」だ。

「カレラ・ヴァージェ・アーリドゥス、主婦よ。よろしく」

 続く明るい茶髪の女性は、それだけ言って引っ込んでしまう。サラクと同じくらいの年で、流行りの服を着てメイクもばっちり。地球のブランドものの鞄と、もうひとつ、編みかけのマフラーか何かを入れた、ファンシーなウサギ柄のエコバッグが机の横にかかっている。

 そしていよいよ、気になっていたスピード狂の番が来た。

「ネーヤ・イクル・ハヤサカです。昼間は日本の高校に通ってます。《銀翼杯》に出たくてこの学校に来ました!」

 明るい学校生活は自己紹介から。元気なのはいいことだと思う。《銀翼杯》ってのが何かは知らないが、誰も妙な顔をしないので常識なのだろう。ネーヤという名前はエルトラ風だが、苗字は日本のものだ。俺の両親が「リツ」という、どちらでも通じる名前をつけてくれたのに比べると、「ネーヤ」という名前は漢字を当てるのも難しそうだ。流暢なエルトラ語を話しているのだが、日本人なのだろうか。それとも、俺と同じ混血か。

 自己紹介の最中に、ちっ、と小さな舌打ちが聞こえて驚く。声の主はさっきの主婦、カレラ・ヴァージェだ。……何だかすごい目でネーヤを睨んでいるが、とりあえず、気付かなかったフリをしておこう。

 ネーヤは特に反応する様子はなく、流暢なエルトラ語で《銀翼杯》とやらへの愛を語り続けている。

「以上です。一緒に《銀翼杯》を目指したい人がいたら、ぜひあたしに声をかけてね!」



「それでは皆さん、今日から一緒に頑張っていきましょう」

 そう言って、担任はホームルームの時間を締め括った。

 二十名あまりのクラスメイトのうち、日本から通っている生徒はネーヤひとりだった。考えてみれば、わざわざこんなところに来る必要のある日本人も少ないだろう。家庭の都合でこちらに住んでいるという高校生なら、普通は掛け持ちを考える前に日本人学校を検討するはずだ。

 ネーヤについては逆。《銀翼杯》とやらに出たいのなら、素直に昼間からこちらの学校に通ってしまえばいい気がするのだが、そういうわけにはいかないのだろうか。エルトラの学校の第三課程を出ていれば高校卒業資格と同等のものと認められるから、ここから日本の大学には行けるわけで、進路の問題もないはずだ。なんでまた、わざわざダブルスクールをする気になったんだろうか。


 ちなみに、このクラスの最年長はもちろんメリサばあちゃんで、俺とネーヤは数少ない最年少チームのひとり。日本では俺のほうがひとつ年上だが、区切りの問題でこちらでは同じ年度の生まれになる。

 クラスメイトたちは職業も年齢も、学校に来た目的もバラバラだ。仕事や将来のために、日本語を学んでおきたいという生徒が案外多い。これは国境の町という土地柄ゆえだろう。一度は就職してみたものの、やっぱり上級学校に行きたくて勉強しているという生徒も数人。

 そんな中で、「《銀翼杯》に出たい」というネーヤの入学動機は、ちょっとばかり異彩を放っていた。

「なぁなぁ、さっきの自己紹介のときの話なんやけどな、夜間部からでも《銀翼杯》って出られんの? あれって昼間部だけじゃないん?」

 休み時間に入るなり、絵描き志望と名乗っていたボブカットの女子・ユイルが、興味津々という顔でネーヤの机を訪れる。声が大きいので、会話は俺の席まで筒抜けだ。

「それがね、第三課程に在学してて、年齢が十一年生相当までなら、夜間部でもいいって規約に書いてあるの!」

 日本で例えるなら、「年度の初めに十八歳以下の生徒なら、高校にさえ在学していれば、全日制だろうと定時制だろうと、大会には出られます」……ってところか。

 俺はサラクの腕をつつき、小声で訊ねる。

「すんません、《銀翼杯》って何すか?」

「あいつに聞け。きっと親切に教えてくれる」

 迷わず説明をネーヤに丸投げするサラク。いっそ潔い。しかも、まごついている俺の代わりに、親切に取り次ぎまでしてくれた。……そんなに説明が面倒ですか。そうですか。

「おい、ネーヤ・イクル。こいつが《銀翼杯》に興味を持っている。よく知らないそうだから教えてやってくれ」

「え……?」

 突然の申し出に、ネーヤとユイルは揃って目を丸くする。

 だがその直後、ふたりはそれぞれパアッと輝くような笑みを浮かべた。まるで、飢えたライオンがよく肥えたシマウマを見つけた時のような、実にイキイキとした笑みだった。

 ――ヤバい。これはイヤな予感がする。

「すごーいっ! ホントに日本から来たんやなぁ! 日本の人は《銀翼杯》を知らないって、本当なんやねっ!」

 ユイルは何やら謎のポイントに感動していて、

「《銀翼杯》っていうのは、日本で言ったら『高校野球』みたいな、第三課程の生徒のための重大イベントだよ! あっ、よく混同されるけど、イベントとしての名前は《銀翼杯》で、競技の名前は《ヴェルガ》ね。日本語だと『レース』って訳してあったりするかな。首都のほうなら、大人の大会もあったりするんだけど、この辺で《レースヴェルガ》って言ったらやっぱり《銀翼杯》だよ!」

「は、はあ……」

「動画くらいは見たことあるでしょ? でもね、実際にやってみたら絶対にイメージ変わるから! すっごいんだから!」

 ネーヤは熱心に――できればもう少しゆっくり話してほしい――語りかけてくるのだが、しかし。

「悪いけど、動画も見たことねえな。有名なのか?」

 俺の言葉に、ネーヤはきょとんとした顔をして、それからじろじろと俺の制服を見る。さっきの自己紹介のときの視線も、俺の制服を気にしていたんだろうか。

「リツ・エイス、もしかしてきみ、日本にいたときに住んでたのは古里こり市じゃなくて別の町? その制服も、古里の学校のじゃないよね。見たことないもん」

 東京都古里市はトンネルの向こう、日本側にある国境の町だ。東京都でいちばん新しい市でもある。

「ああ。住んでたのは横浜だし、学校は上野の近くだよ。両親は、俺をできるだけ日本の文化の中で育てるつもりだったらしい。……んだけど、家が商売で失敗してさ。しょうがなく、高校辞めてこっちに帰ってくることになったんだ」

 いちおう少しでも身元を隠すため、俺はこの世界では純粋なエルトラ人を名乗ることにしている。実際、書類上はたしかに俺はエルトラ人でもあるし、リツ・エイス・ヴァネイザという名前もこの世界での俺の本名だ。母親が面倒くさがって、エルトラの役所に結婚したことを届け出ていないそうで、俺はこちらでは母親――こちらの名前で言えばアヤ・ベナス・ヴァネイザの息子、父親は不明、ということになっている。すまん親父。でも元はと言えば、ぜんぶその親父のせいだからな!

「悪いこと聞いちゃったかな?」

「気にするな。その《銀翼杯》とか《レース》とかってのは、古里こりの人ならみんな知ってるのか?」

「そうだね、まったく知らない人はいないと思うよ。だからリツ・エイス、あなたが知らないってことに驚いたし、興味を持ってくれて嬉しい!」

 さすがに国境の町となると、お互いの文化にも詳しくなるというわけか。

 とはいえ、古里の外で育った人間は、俺に限らずエルトラという国の文化にはさほど詳しくないだろう。もちろんそういう国があることは知っているし、まったく興味がなかったわけじゃない。どんな文字を使っていて、どんな動物がいるかくらいは知っているが、それだけだ。ウェブを検索すればいくらか情報も手に入ったのだろうが、あいにくと興味を持つ機会に恵まれなかった。おまけにエルトラ国は、お上の方針で、地球への情報開示にあまり積極的ではないのだ。撮影した映像をテレビ放送する、なんて程度のことにも、ずいぶん難色を示すらしい。まあ、何を考えているか分からない異世界人に自分達のことを知られるのは、ちょっとばかり恐ろしいことなのだろう、とは想像できる。

「競技……って言ったな。何をする競技なんだ?」

「そこから? ええと、ひとことで言うと、皆で空を飛んで、ゴールした順位を競うんだよ」

 なるほど、空を飛ぶってことは、魔法ありきのスポーツか。

「だから、エルトラこっちの学校に来ないといけなかったんだな」

「そうなの! 日本じゃ、絶対に練習できないからね」

 電力に代わる妖精力ルーシュがさまざまな魔法ハイデーレンを可能にするこの世界。その技術が地球にもたらされれば、人々の生活は変わりそうなものだったが……しかし、そうはならなかった。なにしろ、この世界で便利に使われる魔法の大半は、地球では発動できなかったからだ。

 原因は、魔法の原動力となる、妖精力ルーシュと呼ばれる存在にある。

 この世界ナズリでは空気中にいくらでも存在し、使ってもいつの間にか補充されているその力が、地球には存在しない。ちょっとした魔法ならば、妖精力を電池のようなカートリッジに閉じ込めて持ち込むことで地球でも使えるようになるが、空を飛ぶような複雑な魔法になると、それではエネルギー不足だ。

 さらに言うなら、住人ひとりひとりが持つ魔法への適性の問題もある。繰り返すが、魔法という技術は、同じ魔具を使っても同じ効果が出るわけではない。地球人の感覚では妙な話だが、この世界の人間から見れば、「誰が使っても同じ効果が出る」という地球の機械のほうが奇異なものに見えるらしい。そんな技術に頼っている世界だから、当然の帰結として、より魔法への適性に秀でたものが多く生き残ることになる。そんなことを考えていない地球人と比べれば、平均的にこの世界の人間のほうが、魔法を上手く使えるのである。

「そうだ、リツ・エイス! あなたも一緒にどう?」

「は?」

「そっかぁ、体育の授業でもやったことないんやなぁ! 初めての《レース》かぁ、きっとめっちゃ楽しいでっ!」

 ユイルが満面の笑みで両手を広げる……が。

「断固としてお断りだ! 魔具ハイデラで空を飛ぶなんて正気の沙汰じゃねえ!」

 ネーヤとユイルが、困った顔で視線を交わす。何とでも言ってくれ。食べ物にしろ服にしろ風習にしろ、大抵のことには慣れたが、これだけはどうしても受け入れられない。

「バスならともかく、なんで好き好んであんな代物で空なんか飛ばなきゃいけねえんだ! 死ぬだろ! 怖いだろ!」

「ええ? そう簡単に死なないよ。もしかして、車はいいけどバイクは無理、って人?」

「あ? タイヤが地面についてりゃ、バイクでも問題ねえよ」

「はぁー、地球の人ってそんな所を怖がるんやなぁ! かわいいわぁ」

 くそっ、話が通じてねえ。ネーヤとユイル、可愛い女の子に挟まれているというのに、両手に花と言うよりは八方塞がりな気分だ。

「もっと言ってやれ、ユイル・ハラン」

 挙げ句、サラクまで話に乗ってくる始末。

「おれもそいつの意気地無しを治してやろうと、魔具ハイデラを持たせて一番街の鐘楼から突き落としてみたりしたんだが」

「あん時は死ぬかと思ったっすよ! なに考えてたんすか!」

「結果的には死ななかっただろう。それとも、うちの製品が信じられないとでも言うのか」

「そういう問題じゃねえっす!」

 はあ、とため息をつく俺の肩を、ユイルが慰めるように叩く。

「気にすることあらへんよっ、リツ・エイス。どんなに頑張っても、どうせウチらは《銀翼杯》の本戦には出られんからねっ。緊張せんと、肩の力を抜いて、楽しくやったらええんよっ!」

 ユイルの言葉は訛りが混じって分かりづらいが、それでも言いたいことはだいたい分かる。だがその言葉の途中に、引っかかるものがあった。

「……本戦には、出られない?」

 ユイルは頷く。この国でも肯定を表す仕草だ。

「《レース》中の進路調整に一秒もかけとったら、どうやっても勝てっこないやんなぁ。障害物とか妨害とかあるんやし、こう、シュシュっと一瞬で切り替えせんと」

 ああ、ただ飛ぶだけの競技じゃないのか。話を聞く限り、マ○オカートのように、山あり谷ありのコースを、互いに妨害しながら飛んでいくようだ。

 俺のようにエイスという資称ナレハを持つ人間は、魔法の持続力はあるが瞬発力に欠ける。複雑な魔法になればなるほど、発動速度がはっきりと遅くなるのだ。バランスやら何やらを無視して、ただ宙に浮く程度のことなら一瞬でできるが、飛びながら臨機応変に速度や高度をコントロールするような複雑な魔法となると、とてもじゃないが一秒や二秒じゃ発動できない。

「その点、イクルやったら、たまにやけど見かけるしなぁ! イクルの人が、飛ぶのが得意なリグの人たちを蹴散らしたりしたら、めっちゃ盛り上がるんやでっ!」

 それはつまり……番狂わせとして、か。

「まあ、一発逆転ってのはカッコいいからな。応援はしてるよ。俺は絶対にやらんが」

 何にせよ、そのために学校を選ぶってのは大したものだ。たとえ生まれつきの適性がなくても、好きこそものの上手なれ、なんて言葉もあるし、本人がいいならそれでいいんだろう。

 タイミング良く鳴ったチャイムに従い、俺はさっさと席について、タブレット状の魔具を起動した。

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