選択
タケルたちが解説を聞いている頃、両親は解説をスキップし、一足早くゲームの世界にいた。
「うっわぁぁ久しぶりの感覚だぁ」
「そうね。がんばらないと」
「おっと、母さん、今回は負けてもいいんだぞ別に」
「目的が違うものね。あの子たちはどこまでやれるのかしら」
「あぁ、わくわくしてるよ俺も。まぁ手を抜く気はないけどな。しかし、よくマップレーダーに応じたなぁあいつら、乗らなくてもよかったのに」
「龍がなんか言ったんでしょうねきっと」
「別に受けなくてもいいのにな俺らが楽になるだけだし」
「でも、いいじゃない。それもそれで楽しいわよきっと」
「そうだな、楽しみだ。おっと、そろそろ行くかな、あいつらも来たことだし」
「えぇ」
タケル達はゲームの世界に入ったとたん、驚いていた。
「ここって・・」
「多分みんなの考えてる通りだと思うよ」
「だよね、そうだよね」
「こりゃ驚くなぁ」
「リアルすぎる、てか現実?」
そう、ゲームのステージは、我が家だった。
「しょっぱなからやるなぁ、父さん」
龍兄は不敵に笑った。
『みなさま、武器を選択してください』
「「うわぁ」」
急に声が聞こえたので驚いた。
あ、そうだった、確かエメルさんが言ってたような。
みんなの前に武器の選択画面が出てきた。
なるほど、ピストル、ライフル、ショットガン、マシンガンの中から選べって事か。
武器をスクロールすると、横に小さく説明文が出てくる。
俺は、一番見たことがあるライフルを選んだ。
ボルトアクション・フルオートのどちらかを選べと言われたので、使いやすそうなフルオートを選んだ。
「なるほど、連射できるってことかぁ。うんうんこれでいい。てか、重みまで感じられんのかよおもっ」
みんなもそれぞれ選んだ様子。
龍兄はマシンガン、チカはピストル、ダイは俺と同じくライフル、シイはショットガンを選んだ。
ピストルは二丁拳銃なのか、てか、シイはショットガンかよ。初心者が使うのには無理が、、まぁいいか。
それより、ずっと気になっていたことが1つ。
「フィールドはどこまでなの?」
そう、シイが言う通り、どこからどこまでがフィールドなんだろうか。あ、でも父さんがなんかいってたような。
「まぁ、その確認も含めて少し歩こう。相手がこちらのマップだけ見れる状況だったら、とまってるのはまずい」
確かに。
「じゃあ行こっか……」
「ちょいまち」
皆を呼び止めたのは、ダイ。
「なんだよダイ」
「ルールがまだあるけどいいの?」
珍しく誰かより先に話始めたダイ。なのでみんなも少し驚いていた。
「けど、サブルールならいいんじゃないか?」
「でも、俺らは未経験者なんだよ? せめてルールだけでもあっちと同じ状況でいようよ」
「分かった分かった」
龍兄は、やれやれという感じで右手のボタンを押した。
『ルールの確認ですね。どのルールの確認ですか?』
えーっと、武器の確認とかじゃなくて、「サブルールの確認」これか。
画面を押すと、ずらっと文字が出てきた。
「サブルールでこんなにあんのかよ」
確かにこの量は多い。どれかにしぼるのは無理そう。
一応気になったやつだけ見てみよう。
「おい、母さんあいつらなんで動かないんだ?」
「さぁ。まぁ、初めてだからじゃないかしら」
「確かに、俺も最初はこんな感じだったなぁ。まずはルールみたいな感じでさ」
「こういうのは、直感で動いた方がいいのよ。大体のルールは教えてもらったんだから」
「でも、やっぱ心配になっちゃうだろう?」
「まぁ、それより、あの子に伝えたのよね?」
「もちろん。布石は打っといたよ。しかし、母さんもエグいことするよなぁ。相手は初心者なのに」
「目的のためよ。さて、拠点も確認し終わったし、行くとしますか」
「おうよ」
「この感覚システムってなに」
「射撃された場合に、衝撃が体全体に響くようになっています。なお、痛みは感じないので安心してください。だって」
じゃあなんでいるんだこのシステム。
「じゃあなんでいるのこのシステム」
また、考えてたことを。
「多分、撃たれてると認識するためじゃない? ゲームでもよくあるじゃん。撃たれると画面が赤くなったりするやつ」
「なるほど」
「なるほど」
ダイとハモってしまった。悔しい。
ダイはハモったのでにやけていた。きもっ。
すっと、ダイの奥で手をあげたのはシイ。
「いっかい試したほうがいいと思う」
「は?」
思わず声をあげてしまった。
「いっかい誰か撃たれてみようよ。ね、龍兄?」
「お前、それは俺に死ねっていってるよね」
いや、それより……
「それより、仲間を撃てんの?」
「撃てるよ。そう書いてあるし」
「なんで撃てんの?」
「さぁ、分からないけど。まぁ一回、一回だけだから」
「え、やだよ俺撃たれたくないもん。タケルやれよ」
「俺に振らないでよ」
「もう、龍兄はいつも威張るだけ威張っておいて弱いからなぁ」
「なんだよ、文句あんのかよ」
「じゃあいいよ」
シイは目線をそらしてそっぽを向いてしまった。
「いや、それよりも、早く拠点に向かわないと、ゲームはスタートしたんだから」
俺はみんなを急かした。
「そだな、よし行くか」
「拠点は、マップに表示されんだよな」
「うん。えっと、俺らのは一階の本棚付近と、チカの部屋と、トイレかよ。まぁいっか、とにかくいこう」
「待って」
またも呼び止めたのはダイ。
みんなもまたかよと言わんばかりの視線。
シイはさっきのことがあったからか、余計に視線がキツイ。
「まだ、もう少し書いてあるよ」
「うるせーなダイ、細かいんだよお前は」
「そうかなぁ」
「ほら、行くぞ」
「分かった」
ダイもしぶしぶ行く気になった。
だが、この時のダイは何かを感じ取っていたのかもしれない。
そう、俺たちは、最後までルールを確認しなかった。
そこに大事なことがかかれているとも知らず。