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ロンリーガール

作者: Q作くん

 ヒーローの条件は3つ。特殊能力を持っている。悲劇的な過去を持っている。そして、孤高である。

 上記3項目に照らし合わせると、最近のヒーローものはぬるい。政府の庇護下にあったり、その結果として公務員的な給与体系の下にあったりする。もはやヒーローという名の職種でしかない。

 敵役に魅力がある? それは確かに大事な要素だ。物語をおもしろくするためには。ただし、ヒーローそのものの魅力UPには何ら関係のないことだ。

 私はどうかって? いうまでもなく完全無欠のヒーローだ。私には能力チカラがある。触れた物すべてを武器化できる能力が。悲劇的な過去だってある。強盗に家族を殺害されたという忌々しい過去が。結果として、私は現在孤高。孤独じゃない。さみしいだなんて思ってもいないから。

 私は左手で右手に触れる。右手は瞬時に硬質化する。その右手で拳を握り、目の前の暴漢をぶん殴る。暴漢は白目を剥いて崩れ落ちた。

「あっ、ありがとうございます」

 救われた女性が私に感謝する。

「いいってことですよ」

「何かお礼を」

「でしたら気持ちでいいのでお金を下さい。私にも生活があるので」

 女性は財布から5千円札を抜き取る。暴漢1人で5千円、まぁまぁの稼ぎだ。

「後の処理は私がやっておくので、どうぞお帰り下さい。傷が痛むようでしたら、病院へ」

「はい。本当に、ありがとうございました」

 女性を見送ると、私はケータイを取り出し警察に連絡する。

「もしもしやっさん? 新宿2丁目の中華屋『万法』の裏路地、暴漢1人ね。感謝状はもういらないから、金一封だけ持ってきて。じゃあ」

 要件だけを簡潔に告げる。もう何百回と繰り返してきたやり取りだ。

 空を見上げる。星がたくさん確認できた。

「明日は晴れか」

 私は地面に突っ伏した暴漢をベンチにして足を休ませる。暴漢の尻ポケットから財布が覗けたのでチョイと拝借する。万札が2枚。1枚抜き取る。

「安いもんだろ?」

 返事はない。沈黙は賛同と同義だ。

 私はヒーロー。ヒーローネームなんてものはない。モラルも多分、低い方だ。でも、そのことはヒーローに必須の3要素には何ら抵触しない。すなわち、特殊能力を持っている。悲劇的な過去を持っている。そして、孤高である。


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