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その15 光の子(5)

 さっき、道でみんなに出会った時。

 みんなの着ている服の色が、とっても綺麗だと思った事。橙色や黄色や青が、いつもよ

りとっても鮮やかに見えました。

 それが、その色こそが、ハナハナ達の世界なのです。

「ハナハナ」長老が、ココアのカップを脇のテーブルに静かに置きました。

「その考えは、きっと当たっておる。世界は華やかな色で出来ておる。その色が、魔王の

出現で真っ黒に塗りつぶされる。それをまた元の色とりどりの世界に戻すのが、きっと

『光の子』の使命なのじゃろう」

「……はい」

「しかしそれには、魔王が掛けた、いや、これから仕掛けるであろう様々な悪の魔法を撃

ち破らねばならん。それには、大変な努力と修行が必要じゃ。じゃが、ハナハナには幸い

な事に、その素質がちゃんとある」

「私に、魔法の素質が?」

 ハナハナはびっくりしました。魔法なんて、簡単なものを除くと、これまであんまり使

ってきていません。

「そう、ハナハナはもういくつかの魔法を、使っておる。たとえば、命の水じゃ。ボッヘ

親方やルウを助けたあの水は、ハナハナの魔法も入っておる」

「でもあれは、マーフの力じゃ……?」

「大半はマーフの魔法じゃ。じゃが、ハナハナの力で更に安定した命の水になったのじゃ。

その他にも、物忘れの解除薬を作った事じゃ。あれはハナハナの力を、マーフが薬に変え

た。やり方は違うが、命の水とほぼ同じじゃ。『光の子』には、じゃから人々を癒す力が

あるんじゃ」

「私……」

 ——言われてみれば、そうかも。

 ハナハナは誰かが怪我をしたり病気になったりした時、マーフや長老に乞われて協力し

ていました。

 思えば、モルガナ婆さんが薬を黙々と調合している姿に、少し憧れたりもしました。自

分も、誰かの役に立つ仕事がしたいと、ずっと思っていました。

 人々を癒し、この世界を暗黒から救う。もしそれが『光の子』の本当の使命なら、自分

は進んでやろう——

「長老さま」ハナハナは、しっかりした口調で言いました。

「私、もっと勉強がしたいです。世界の事もそうだし、薬の事とか、その……、魔王との

戦いの事とか」

「ふむ」長老は、少し考えるように目を閉じました。

 柱時計がボーン、と、11時を打ちました。

「……ダメ、ですか?」

 ハナハナは、じっと目を閉じたままの長老に、恐る恐る聞きました。

「……いやいや、ダメではないよ。考えておったのじゃ。ハナハナにとって何処で誰にそ

れらを教わるのが一番いいのかと、の」

「長老さまや、若先生では、ダメなんですか?」

「ふむ……」長老は、白くて長い顎ひげを二、三回撫でました。

「ダメではないんじゃが。もっといい先生がおるかと思ってのお。——カールベルのリリ

ア婆さんの所には、色々な妖精が勉強に来ておるからの。そこならどうかとも、思っての」

「カールベル……」

 ハナハナは思わず呟きました。

 カールベルは、青龍平原の東の果て、ルットーウッドの広大な森の中の街です。

「わしとリリア婆さんは、魔法の水晶球を使ってちょくちょく話をしておる。トーベル伯

爵とも、緊急の時はその方法で連絡を取り合っておるのじゃ」

 どっこいしょ、と長老は立ち上がり、隣の部屋へと入って行きました。

 ややあって、長老は両掌に丁度包める程の大きさの水晶を持って来ました。

「これが、その水晶球じゃ」

「すごい……」ハナハナは思わず目を見張りました。

「これに呪文を唱えると、相手の水晶球に自分が映る。相手が応えれば、それで話が出来

るのじゃ。ハナハナが、もしカールベルで勉強したいと言うのなら、わしはこれでリリア

婆さんと話をして、ハナハナをあちらに受け入れてもらうようにするがの」

「いっ、今ですか?」

 急な展開に、ハナハナは目を丸くしました。

「どうしよう」とおろおろするハナハナに、長老や「いやいや」と笑いました。

「今すぐではないよ。そんな急には決められんじゃろ。第一、ミィミとティーヴにちゃん

と話をせんといかんしの。ただ、パッセルベルよりカールベルの方が、リリア婆さんを始

め、ハナハナが覚えたいと思う事を教えてくれる先生が、きっとたくさんおると、わしは

思うがの」

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