表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/85

その15 光の子(3)

 でも、もうすぐハナハナは決断しなくてはなりません。

『光の子』として、何をするべきか。

 もしかしたら、それでパッセルベルを出なくてはならないかも知れないのです。

 ハナハナは、気持ちを決めました。

「あのね……、この間長老さまのお家に行ったのは、私の星のお話を聞くためだったの

「星って、ハナハナはやっぱり星を持ってたんだ?」

 リックが目を輝かせて聞きました。

「それってやっぱり『光の子』?」

「……うん」

「『光の子』って、一体何なの?」

 何につけても自分が一番でないと本当は気が済まないエマが、目を釣り上げて子ねずみ

達を見ました。

「ずっと、大人の人達が、あのトーベルさんまで『光の子』ってハナハナの事を誉めてた

けど、そもそもそれは何よ?」

「エマっ」きつい言い方を、ニーニャが嗜めます。

「ハナハナの話を聞こう?」

 ね、続けて、とニーニャに言われ、ハナハナは固い表情で頷きました。

「私の星、ね、みんなの言う通り『光の子』だったの。でも、そんないいのじゃない。反

対に、恐いの。長老さまが昔、私が生まれた時に、カールベルのリリアさんっていう長老

さまから、私に特別な星があるっていうお告げがあったって、お聞きになったの。それは、

十一年後、再び魔王がこの世界にやって来て、世界を暗黒にしてしまう。暗黒なにった世

界を救う事が出来るのは、『光の子』だけだって……」

 ハナハナが話し終えた後、みんなはしばらく呆然としていました。やがて、ニックが小

さな声で「すっげえ」と言いました。

「ハナハナ、英雄の星を持ってるんだ」

「ううん、違うの。英雄じゃないよ」

「でも世界を救えるんでしょ?」リックにも言われて、ハナハナはもう一度首を横に振り

ました。

「私になんか、救えないよ。そんな方法、分からないもの」

「そうよね。ハナハナに分かる訳無いわよ」

 エマが、つん、と横を向きました。あからさまに「どうして自分じゃないの?」という

態度のエマに、ニーニャは「もうっ」と溜め息をつきました。

「大体、ハナハナは、ただいい子なだげもの。そんな子が英雄なんて、おかしいわよっ」

「いい子だからいいんじゃない。エマみたいに我がままな子が英雄だったら、それこそ世

界は暗黒のままよ」

「なあによそれっ」

「止めなよっ、エマもニーニャも」

「……うん、でもエマの言う通りなんだよね」

 ハナハナは、ぽつり、と言いました。

「私、ただお姉さんの言い付けを守って来ただけだもの。いい子って言われるとどうかな

あって思うけど、エマみたいに自分の言いたい事ちゃんと言える方じゃないし、ニーニャ

みたいに頭良くないし。リックみたいに器用でもないし……。

 なのに、どうして私が『光の子』なのかなあ。長老さまがおっしゃるんだから、リリア

さまの予言は正しいんだろうけど、だったらどうして、私にそんな予言があったんだろう

って、ずっと考えてたの」

「ハナハナ……」ニーニャが、気の毒そうな顔でハナハナの側に来ました。

「気にする事、ないよ」

「そうなんだけど……。ほんと、エマが『光の子』だったらよかったのに」

 ハナハナの言葉に、子ねずみ達が一斉に「止めてよ」という目でエマを見ました。

 エマはみんなの嫌そうな顔を見て、わざと胸を反らして言いました。

「そーよぉ、私が『光の子』だったら、ハナハナみたいにぐちぐち悩んだりしないわっ。

英雄なんだもの、やりたい事みーんなやっちゃう。好きなお洋服着たり、好きなお花を勝

手に咲かせたりしちゃう。トネリコの花だって、見たい時に咲かせちゃうわっ。人間の街

にだって、行っちゃう」

「だから英雄にはなれないんじゃないのかなぁ」

 呟いたリックに、エマは「なんか言った?」と凄みました。

「ねえでも、ハナハナは何で悩んでるの? 世界を救う方法が分からないから?」

 エマの大きな目で覗き込まれて、ハナハナは一瞬びっくりしました。

「そうなんだけど……」

「だってそんなの、魔王をやっつけちゃえばいいんじゃないの?」

「長老さまは……。リリアさまの『光の子』の予言には、魔王と戦うという言葉は一言も

無かったっておっしゃるの。だから……」

「ええっ? 戦わないで、どうして世界を救うの?」

 今度はリック達が目を丸くしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ