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その13 星祭(3)

 猫の妖精のぬいぐるみを振り回して歌い出したのは、パッセルベルの子供達ならみんな

知っている童謡でした。

 男の子は、びっくりした顔でフレイを見ました。が、すぐに楽しそうに手を叩き始めま

した。

「アーッ、アーッ?」

「お歌が好きなのね?」

 モモが言うと、男の子はますます嬉しそうに手を叩きました。

「じゃあ、一緒に歌いましょ」

 モモも、フレイと声を合わせて『こぐまのポンちゃん』という歌を歌いました。

 楽しそうな三人の様子を横目で見ながら、ミィミとハナハナはこっそり顔を見合わせて

笑いました。

 支度が出来て、ハナハナはモモにも手伝ってもらいテーブルにお皿を並べました。

 ミィミは、隣室からお客さま用の椅子を一脚台所に運び、そこに男の子を座らせました。

「嫌いなものは、無いかしらね?」

 豆のスープを入れるため、男の子の前のお皿を取った時。

 急に男の子がテーブルの上に頭を置いてしまいました。

「どうしたの?」ハナハナは慌てて男の子の肩を触りました。

 ミィミも驚いて、お皿を置いて側に来ました。

「具合が悪いの?」

 でも、男の子には言葉は分かりません。ミィミはそっと、男の子を頭を持ち上げました。

額に手を当て、顔を顰めました。

「まあ、酷い熱」

「えっ? この子、病気なの?」

 驚くモモに、ミィミは頷きました。

「どうやらそうみたいね。口がきけないから分からなかったけど……」

 と、玄関の扉が開いて、ティーヴが帰って来ました。

「長老に話して来た。——どうした?」

「この子、病気だったみたい。熱があるの」

「何だって?」

 ティーヴは足早に、テーブルを回って来ました。そしてミィミが押さえていた男の子の

身体を、ひょいと抱き上げました。

「……これは酷いな。ミィミ、毛布を取って来てくれ」

 はい、と、ミィミは小走りに寝室へ行きました。すぐに毛布を持って、ティーヴの側へ

戻りました。

 ティーヴは毛布に子供をくるむと、もう一度抱き直しました。

「この子を長老のところへ連れて行く」

「様子を?」

「ああ」

 歩き出したティーヴに、ハナハナは、 「私も行くっ」と言いました。

 ティーヴは足を止め、ちょっとハナハナを見ました。

「……そうだな、ハナハナ、一緒に来てくれ」

「はいっ」

「あーっ、じゃあモモもっ!」

 負けん気の姪っ子が、すぐにハナハナの真似をして言いました。

「ダメだ。モモは家にいなさい」

「だあって、ハナお姉ちゃんが行くのにっ」

「ハナハナは、もしかしたら大事な役目が出て来るかもしれない。けど、おまえはまだ小

さいからダメだ」

「ずるーいっ!」

 文句を言う娘を一度睨み付けて、ティーヴは外へと出て行きました。その後を、ハナハ

ナも上着を手早く着て付いて行きました。



 ハナハナが冬の王と話をしてから、ここのところ雪はあまり多く降ってはいません。そ

れでも十センチは積もっているトネリコの枝の道を、ハナハナはティーヴの後に続いて歩

きました。

「あの、お義兄さん?」

 ハナハナは、さっきティーヴがモモに言っていた事が気になって、ふと、声を掛けまし

た。

「私には大事な役目が出て来るかもしれないって、どういうこと?」

 もしかしたら、冬の王にも、それに前に長老やトーベルさんにも言われた『光の子』と

いうのに関係があるのではないのかと思って聞いたのですが、ティーヴは何も答えずに歩

き続けました。

「……お義兄さん?」

 答えてくれないのを訝って、ハナハナはもう一度声を掛けました。

「……その事は、長老の家へ行ったら、多分わかる」

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