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その12 冬の王(6)

「……どういうこと?」

 よく意味が分からなくて首を傾げたハナハナに、ミィミは苦笑しました。

「ありがとうって、ことよ」

「ふうん」ハナハナは、顔を空に向けると大きな声で、

「どういたしましてっ」と言いました。

 二人は、ミィミが家から持って来たバケツに氷を入れると、よいしょ、と掛け声を掛け

合いながらそれ家へと入れました。

 氷を細かく砕き、水枕に入れ、モモの熱を冷やしました。



 氷と薬が効いたのか、モモは翌日にはすっかり元気になりました。

 ミィミは、それでも念のためにと、マーフに貰った丈夫になる薬をモモに飲ませました。

 そんな事があってから、雪の日に外に出ても、もう雪の精霊達はパッセルベルの子供達

に勝手に近付いたり触って来たりしなくなりました。

「みんなよかったって言ってくれてるの。でもね」

 しばらく振りに晴れた日。ミィミとハナハナは久々に外へ洗濯物を干しました。

 一杯溜まってしまったティーヴのシャツや子供達の服をトネリコの枝に掛けながらミィ

ミはハナハナに微笑みました。

「何か、困った事でもあるの?」

 聞かれて、ハナハナは靴下を小さな枝に干しながら、ちょっと俯きました。

「うん……。私、冬の王にとっても怒っちゃったんだけど、ほんとによかったのかなあ」

「どうして?」

「だって、あのあと、雪の精霊に出会うと、困ったような顔をして、みんなすうっと上へ

消えて行っちゃうんだもの。……本当に精霊達は、自分達が嫌がらせをしているんじゃな

くって、ただ遊びたかっただけだったのかなあって」

「そうね……。本当はそうだったかもしれないわね。でもね」

 ミィミは、雪の精霊に悪い事をしてしまったんじゃないかと思っている妹の、ふわふわ

と白い毛が遊ぶ頭をそっと撫でました。

「悪気は無くても、人に迷惑を掛けてしまうのだったら、やっぱりそれはしてはいけない

の。ハナハナが言った事は正しいわ。だって、私達妖精や人間は、雪の精霊の冷たい手に

触られるのは我慢出来ないもの。それを、精霊達も気付かなくてはいけなかったのよ」

「……そうなの?」

 そうよ、と、ミィミは微笑みました。

 お姉さんの優しい笑顔に、ハナハナはやっぱり良かったんだ、と思い直しました。

 冷たい、緩い冬の風が、二人の頬をふわっ、撫でて過ぎました。

 ふと、ハナハナが目を上げると、小さな雪がひとひら、干したシャツの上に落ちて来ま

した。

 冬はまだまだ続きます。

 ハナハナはミィミににっこり笑い返すと、残りの洗濯物を手早く干し始めました。


 その12 冬の王 完

その12 冬の王は、これで終わりです。

いかがでしたでしょうか?


次は『その13 星祭』です。


猟師をしているティーヴは、猟の途中で様々な人を助けます。今回は、なんと人間の子供を助けて連れてきました。


でも、人間は普通ならトネリコの木には登れないはずです。

果たして、この子は一体……?


優しくて、ちょっと悲しいお話です。


お楽しみに!

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