その11 エトセトラ2(2)
けど、リックが言ったような、『大工が上手くなる星』のような星が本当にあるなら、
ちょっと自分にもあればいいな、とハナハナは思いました。
それをニーニャに言うと、
「そうだね。私も『お裁縫が上手に出来る星』を持って生まれたかったなあ。もう、どう
やってもきれいにブラウスが仕上がらないっ」
「ねえ、マーマおばさんはもしかしたら、『お裁縫が上手に出来る星』を持ってるのかも
よ」
きっとそうだ、とハナハナは思いました。
だからあんなに素敵なドレスを次々と作る事が出来るのだ、と。
二人のおしゃべりを聞いていた長老が、「そうかもしれんの」と微笑みました。
「リリア婆さんは、命に関わる星の予言しかせんからの。もしかしたら、それぞれが天か
ら賜った得意なものの星は、また別にあるのかもしれん。じゃがそれは、自分で見つけ出
してこそ力を発揮するものなのじゃ」
「じゃあ、私にはお裁縫じゃあなくって、他に得意なものの星が、生まれながらにあるっ
てこと?」
首を傾げたニーニャに、長老は頷きました。
「そうじゃ。それを一生掛けて見付けるのが、人生の意味というものじゃ」
〜★〜★〜★〜★〜
「本当に、私の得意なことって何だと思う?」
家へ戻り、夕御飯の支度を手伝いながらハナハナはミィミに言いました。
「私、ニーニャほどお裁縫は不得意じゃないけど、うんと得意ってこともないし。じゃあ
お料理はどうかって言うと、それも普通だし。木登りも駆け足も普通。うんと得意なもの
って、思い付かないなぁ」
じゃがいものゆで具合をみながら、ミィミはそうね、と微笑みました。
「でもね、ハナハナ」
お鍋の中身をざるに上げ、ミィミは言いました。
「何でもそれなりに出来るっていうのも、ひとつの特技よ? 普通に暮らしていくために
は、これひとつだけ得意っていうのもいいけど、全部そこそこ、何とか出来る方が助かる
時はあるわ。私もそうだし」
「そっかー。そう言えば、お姉さん、お料理はうんと得意じゃないけど、そこそこおいし
いものね」
ゆで上がった小いもをひとつ摘まみ上げて、ハナハナはぽいっ、と口の中へ放り込みま
した。
「あっ、言ったなこら。そんなこと言ってつまみ食いする人には、お夕飯食べさせません
よっ?」
ふざけ半分に叱られて、ハナハナは「ごめんなさい」と舌を出しました。
〜★〜★〜★〜★〜
その11 エトセトラ2 完
その11 エトセトラ2は、これで終わりです。
いかがでしたでしょうか?
次は『冬の王』です。
雪の日の外遊びは、ハナハナもモモも大好きです。
けれど、雪と一緒に近付いてくる、小さな女の子の姿をした雪の精霊は、冷たい手で勝手に触ってくるので大嫌いっ! な、ハナハナ。
さて、どんな騒動になるのやら……?
お楽しみに。