その11 エトセトラ2(1)
今回は、エトセトラ2です。
妖精と、持って生まれた能力『星』のお話です。
ミィミの旦那様ティーヴは、妖精には珍しい仕事、猟師です。
何故珍しいかと言うと、妖精は皆生まれながらに穢れに弱い星を持っています。だから、
普通は動物を殺したり、それを食べたりは出来ないのです。
しかし稀に、もうひとつ別の星を持って生まれる者がいます。ティーヴもそのひとりで、
彼は『死せるものを生かす星』を持っています。
これは、殺したものを自分の糧として生かすのであれば、穢れを免れるというものです。
もちろん、妖精の本性である穢れを嫌う星がありますから、捕った獲物を食べたりは出
来ません。
ティーヴは獲物の毛皮や肉を人間の商人に売り、そのお金で村に必要な品物を買ってい
ます。
緑龍渓谷の獣の毛皮は上質でとても高く売れるので、ティーヴが猟をして戻ると、村で
はたくさんの小麦やじゃがいもが手に入ります。
村長はそれをパッセルトーンで少し売り、妖精のお金を村の資金としてためています。
ティーヴはそのお金をまた少し貰って、ミィミやハナハナ、そして子供達の暮らしのも
のに当てています。
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ある日、子供達は長老の家で、妖精の星について聞きました。
「そうさな、妖精が妖精としていられるのは、この穢れに弱いという星を持っておるから
じゃ。人間や妖魔は、この星を持っておらんで、平気で動物を殺生し食うてしまう。その
ため、身に穢れが溜まって重くなるんじゃ。だから、トネリコの木に住むことが出来ん」
「へえ。じゃあ、なんでモルガナ婆さんはトネリコに住めるの? 蛇の妖魔なのに」
リックの質問に、長老は長い鬚を撫でながら答えました。
「モルガナ婆さんは妖魔じゃが、特別な星を持っておるんじゃ。それは、『死せるものの
穢れを払う』という星じゃ。妖魔の持つ特別な星は総じて強力でな、モルガナ婆さんはこ
の星のお陰で、動物を食う妖魔であっても妖精と同じように、軽いんじゃ」
へえ、と子供達はお互いの顔を見合わせました。
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「長老さまには、誰がどんな星を持っているか、お分かりになるんですか?」
木ねずみのチャーリーが聞きました。
「いやいや、わしには分からんよ」
長老は笑いました。
「じゃあ、誰がそれをお分かりになるんですか?」
「カールベルにリリア婆さんという猫の妖精の長老がおってな、その方なら、分かるがな」
「顔を見ただけで分かるの?」
孫娘ニーニャの質問に、長老は、
「うむ、何でもその妖精が生まれる時に、お告げがあるそうじゃ。詳しく聞いた訳ではな
いのじゃが、天から声が降って来ると、そんな事を言っておったの」
「お告げがなければ、星は持ってないんだ……」
ぼそりと呟いたリックに、ニックが聞きました。
「何の星を持ってるって思ったの? 兄ちゃん」
「そりゃ、『大工が上手くなる星』に決まってんだろ?」
「ある訳ないじゃない、そんな星っ」
すかさず言ったエマに、みんな思わず吹き出しました。
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