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その10 赤い帽子青い帽子(6)

 お姉さんのレニアさんは知っていますが、リンドンさんとは全く話をした事の無かった

ハナハナは、リンドンさんが自分の名前を知っているのに驚きました。

 さらに。

「昨日から、アマンダの仕事の手伝いに来ているだろう? アマンダ、ちゃんと食事して

る?」

 急がしそうだから、とリンドンさんは頭を掻きました。

 ハナハナは、ああそうか、と気が付きました。

 リンドンさんは、アマンダさんが好きなんだ。だから、アマンダさんの事をよく知って

るんだ。

 ハナハナはにっこり笑っいました。

「アマンダさんはお元気です。今日、出来上がった帽子を、パッセルトーンのお店に持っ

て行かれるそうです。私も一緒にって言われたんですけど、お姉さんがダメって言うんで

す。でも、荷物は一杯あるんです」

「……え?」

「リンドンさん、私の代わりにアマンダさんの荷物を持ってあげて下さい」

 お願いします、と、ハナハナは深々と頭を下げました。

 リンドンさんは、ハナハナが顔を上げると、ちょっと困ったという表情をしていました。

が、すぐに「分かった」と言いました。

「じゃあ、僕が代わりに行くよ」

「ありがとうございますっ」

 ハナハナはお礼を言うと、真直ぐに家へ帰りました。

「お姉さんっ!」家に帰るとすぐに、ハナハナはミィミに事の次第を話しました。

「ええっ? じゃあアマンダとリンドン、一緒にパッセルトーンへ行ったの?」

「うん、多分」

「そう。それは良かったわ。……ハナハナ、ご苦労さま」

 その日の午後、ハナハナはアマンダさんに急に行けなくなった事を謝りに行きました。

「今日はごめんなさい。急に行けなくなってしまいました」

 ハナハナが頭を下げると、アマンダさんはくすっ、と笑いました。

「いいわよ。お姉さんに怒られちゃったら、仕方ないものね」

「……」ハナハナは、アマンダさんがハナハナの嘘を絶対知っていると思いました。

 素直に謝った方がいいのかな、と考えていると、アマンダさんがお茶を出しながら先に

口を開きました。

「リンドンが代わりに行ってくれたけど、その方が良かったわ。思ったより品物の数が多

くて重かったから。もしハナハナだったら、きっと持てなかったと思うわ」

「そうですか」ハナハナは、わざとアマンダさんがそう言ってくれているのが分かりまし

た。

 でも、それはアマンダさんにとっても、とても嬉しい事だったのです。

「それからね」と、アマンダさんは、まるで小さな女の子が秘密を友達に教えるような顔

で、言いました。

「パーティに、リンドンと行く事になったの」

「えっ、本当ですか?」

 ハナハナは、こっくり頷いたアマンダさんの、ちょっと恥ずかしそうな表情に、とても

嬉しくなりました。

 あと少しだからお手伝いはいいと言われアマンダさんの家を後にしたハナハナは、家へ

帰るなり、ミィミにその話をしました。

「まあ、じゃあリンドンとアマンダ、上手く行きそうなのね?」

「うん。作戦成功っ」

 ハナハナは、ミィミと手を叩きあって喜びました。



 秋は更に深まり、トネリコの葉もすっかり色付いたその日。

 パッセルベルの村人みんなが、待ちに待ったお月見ダンスパーティが開かれました。

 会場の南の大枝には、奥さん会の面々が持ち寄った、腕によりを掛けた料理が並び、ま

た音楽は、村長が緑龍渓谷一と言われるカールベルの街の楽団を頼みました。

 村の人達は奥さん会が呼び掛けた通り、みんなご自慢の帽子を被ってやって来ました。

 踊り始めた人の波を縫って、アマンダさんがリンドンさんと共にハナハナとミィミのと

ころへやって来ました。

「遅くなったんだけれど、これ、お礼です」

 綺麗な袋に入ったものを渡されて、ハナハナはびっくりして二人を交互に見ました。

「ええと、私、大したお手伝いは……」

「いいの。貰ってちょうだい。これは、私とリンドンの気持ち」

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