表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/85

その9 わがままエマ(6)

 それと同時に、他の子供達が持っているような、お父さんお母さんが一生懸命子供達の

事を思って作ってくれた、手作りのおもちゃが欲しかったのです。

 モモのお人形は、ミィミがモモに似せて、クリーム色の毛並みが可愛く揃えられていま

した。

 エマも、自分に似せた銀のふわふわの毛並みの、子猫のお人形が欲しかったのです。

「エマ……」

 ハナハナは立ち上がると、泣き出していたエマの前へ立ちました。

「手を叩いたりして、ごめんね」

「ハナハナ……」

「あのね、今度一緒にお人形作らない? ミィミお姉さん、作るの上手だから、一緒に教

わろうよ?」

 エマは不思議そうな表情でハナハナを見上げました。そして「うん」と泣き笑いの顔で

頷きました。

「よかったの」

 長老が、黙って二人を見ていた大人三人に、にっこり笑いました。

 


 翌日。

 村長の家でハナハナ達が勉強していると、ひょいと長老が覗きに来ました。

「あ、長老さま」

 気が付いたリックが声を掛けると、長老はにっこり笑って教室になっている居間へ、入

って来ました。

「ちょっといいかの? アルベルト先生」

 文字を教えていたふくろうの妖精のアルベルト先生は、「いいですよ」と長老に教壇を

譲りました。

「ありがとう。——さて。昨日この村でちょっとした出来事があったのは、知ってるかの

?」

 長老の言葉に、ハナハナと、お母さんのマーマおばさんから聞いて知っていたリックと

ニックが顔を見合わせました。

 エマは来ていません。彼女はナニィの方針で、パッセルトーンから特別に家庭教師を呼

んで家で勉強しているからです。

 長老は、話が分からない大半の子供が「何だろう?」とざわめくのを、

「まあまあ、知らんならよい」と静めました。

「その事は、まあ別にいいんじゃ。わしが話したいのは、その出来事についてじゃないで

な。……なんで、猫の妖精がこの世界におるか、という事なんじゃ」

 ハナハナは、長老の不思議な言葉にどきどきしました。

 どうして、この世界に自分達猫の妖精がいるのか? そんなこと、今まで一度も考えた

事はありません。

 どうしてだろう? なんで、私達はここにいるの?

 長老は続けました。

「……もうずっと、ずうっと大昔の話じゃ。この世界には他の世界からの出入り口が、幾

つも開いておった。元々、この世界に先に住んでおったのは、四体の龍王と人間だけじゃ

った。そこへ、開いた出入り口から他の世界の人々が、来たりまた出て行ったりしておっ

た。その中に、わしら猫の妖精や木ねずみやシマリスの妖精達がおった。

 最初、わしらはこういう外見はしておらなかった。もっと違った……、人間から見たら、

得体の知れない形をしておったそうじゃ。そう、人間が悲鳴を上げるやも知れん、途轍も

無く奇妙な」

 それはどんな姿なんだろう? ハナハナは想像もつかないそれを、一生懸命考えました。

「じゃが、それでは人間を怖がらせてしまう。それで、わしらのご先祖は得意の魔法で、

この猫の妖精の姿に変わったんじゃ。これなら、びっくりはされても人間に物凄く怖がら

れたりはせんからの。……まあ、魔法で姿を変えられるなら、人間そっくりに変えてもよ

かったんじゃが、それだと仲間同士の見分けがつかなくなるので、猫やシマリスや木ねず

みにした、とも、伝えられたおる。して、何代も何代もこの姿を継続していくうちに、い

つしかこれが本来の姿になった。

 わしらのご先祖は、そうやってこの世界へ住み着いた。何でかと言えば、ご先祖がこち

らへ来る直前、『大いなる予言者』がひとつの予言をしたからじゃ。それは、この世界に

別の場所から魔王がやって来て、全てを破壊してしまうという」

 子供達は、またざわめきました。

 魔王の話は、村の大人達から断片的にですが聞かされて、みんな大体は知っています。

 特に猫の妖精の子供達は、親やその兄弟が魔王と戦った経験を持っている人が多いので、

みんな緊張してぴん、と耳を立てました。

 ハナハナも、ミィミからお母さんとお父さんが魔王と戦って死んだと聞いているので、

長老の言葉にはどきっとしました。

「……予言は、二千年前にされたものじゃ。ご先祖が住み着いてすぐに、魔王は手下をこ

の世界へ寄越した。ご先祖はすぐにその魔物達を退治したんじゃ。じゃが、全部手下を殺

すのではなく、改心して悪さをしないと誓った魔物は許して住み着く許可を与えた。それ

が、今日居る妖魔達じゃ。

 そのうち、ハイエルフや他の妖精族もやって来て、皆協力して魔王に対抗することにな

った。ハイエルフが加わった事はとても大きかった。彼等は魔力も武力も、他のどの種族

より優れていたからの。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ