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その9 わがままエマ(2)

「なんでそんなこと言うの? お姉ちゃんは一生懸命お母さんのお手伝いしてるのよ」

「あら、ハナハナはモモのお姉さんじゃないでしょ? お母さんの妹だから、モモにはお

ばさんよ? そんなことも知らないの?」

「知ってるよっ!」

 エマは、膨れっ面になったモモをふふん、と笑いました。

「うそ。知らないからお姉ちゃんって呼ぶんでしょ。母様がいつも言ってるわ。この村の

子はみんなおおらかで天真爛漫だって。でも、天真爛漫って、別の言い方するとバカって

ことだって」

「お姉ちゃんもモモも、バカじゃないもんっ!」

 怒って興奮したモモは、右手に持っていた子猫のモーちゃんのお人形を振り回しました。

 エマは、それに目が行きました。

「あっ、ねえっ、そのお人形、見せてっ」

 エマはさっと立ち上がると、自分より小さなモモからお人形を取り上げました。

「可愛いっ! これどうしたの? パッセルトーンで買ったの?」

 人が怒っている事なんか関係なく、エマは自分の興味を引いたお人形に夢中です。

 さっきまで口喧嘩していた筈なのにいきなりお人形を誉められて、モモは何がなんだか

分からなくてぽかんとしました。

 わがままお嬢様エマは、答えなんかどうでもよく、気に入ったものを撫で回しています。

 そして。

「ねえっ、これちょうだいっ!」

「……え?」

「このお人形、エマにちょうだいっ」

 モモは、何を言ってるだという表情になりました。

「だって、それ、モモのだよっ?」

「だからちょうだいってっ!」

「やだ」

「なんで? ちょうだいよ」

「やだっ」

「じゃあ、エマのこのおもちゃ、全部上げるから」

 エマは、持って来たおもちゃとバスケットを指差しました。

「いらない、そんなもの」

「どうして? 人間の街の珍しいおもちゃよ? こんなお人形よりよっぽどいいものよ?」

 漸くお手伝いが終わり洗濯篭を家へ入れようとしていたハナハナは、エマのその言葉を

聞いてむっとしました。

 やだ以外言い返せない姪の側へ行くと、ハナハナはエマに言いました。

「そんなに珍しくっていいものなら、エマが持ってればいいでしょ? モモのお人形なん

か欲しがらないで」

 エマは初めて怒った顔になり、言い返しました。

「違うのっ。エマはこんなのたくさん持ってるもの、これくらいモモに上げたってどうっ

てことないのよ。でも、モモは持ってないでしょう? お人形と取り替えて上げるって言

ってるんだから、貰っておきなさいって言ったの」

「やだっ! そのお人形はモモのっ!」

 モモは我慢し切れなくなって、エマの持っているお人形を掴みました。

「返してっ!」

「ダメっ! これはエマが貰ったのよっ! 離してっ!」

「あげてないっ!」

「貰ったのっ!」

 二人はお人形を、力任せに引っ張り合いました。小さな子猫の妖精のお人形は行ったり

来たり、エマのモモの間でぶらぶらしています。

 このままでは壊れてしまいます。

「エマっ! モモのお人形を離してっ!」

 見兼ねて、ハナハナはエマの手を叩きました。

「痛いっ!」

 エマは顔を顰めてお人形を離しました。しかし数秒遅く、二人に引っ張られていたお人

形は、右手がもげてしまいました。

「あーっ! モーちゃんが……っ!」

 モモは、腕が取れてしまったお人形を見て半分泣き顔になりました。

 一方エマは、

「いたあいっ! ハナハナがぶったあっ!」

 わあん、と大袈裟に泣き出すと、自分のおもちゃを終いもせずに走って出て行ってしま

いました。

「どうしたの?」

 先に家に篭を入れに行っていたミィミが、エマが走り去るのを窓から見ていて裏庭に戻

って来ました。

「モモとエマが、お人形を取り合って……」

「おかあさあんっ!」

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