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その8 風車小屋(2)

「じゃあ、木の風車小屋だったら大丈夫ですか?」

「え? ……うーん、それは親方と話してみるしかないかな。そもそもリック、何処に風

車を作ろうと思ってたの?」

 リックはちょっと考えて、答えました。

「長老の家の脇の……、空き地に……」

 本当は、長老の家の屋根に付けたかったのですが、トッドさんとの話から、それは無理

だとリックにも分かりました。なので、「空き地」と答えたのです。

 トッドさんは少しびっくりしたような顔をして、それから優しく微笑みました。

「そっか。なら長老のご許可も必要だね。……そうだな、今は無理だけど、リックが一人

前になった頃、もう一度親方に話してみなよ。それまでに、パッセルベルで風車がどんな

利用法があるのか、考えておいてごらん」

 どんな利用法、と言われても、リックにはすぐには思い付きません。

 風車は風の力で羽を回し、水を汲んだり粉を挽いたりするもの。他にどんな使い道があ

るのでしょう?

 リックは、完成式でみんなが楽しくおしゃべりしている間中、ずっと風車の利用法を考

えていました。

 翌日の、トッドさんとミントさんの結婚式の最中も、ずっと一人で黙り込んでそのこと

を考えていました。

「どうしたの?」みんなが集まる賑やかな場でいつも人一倍元気なリックが大人しいのに、

ハナハナは不思議に思って声を掛けました。

「うっわっ!」

 普段は着ない、ピンクのワンピースを着たハナハナは、覗き込まれてびっくりして飛び

上がったリックに、くすくすと笑いました。

「なあに、そんなに驚いて」

「ああ、ハナハナ。あ、うん、ちょっと考え事」

「もしかして、風車?」

 リックが風車を作りたいと最初に話したのは、弟達とハナハナにでした。

 リックは、照れくさそうに「うん」と言いました。

「でも、ボッヘさんにはダメって言われたんでしょ?」

「親方はダメだとは言ってないんだ。ただ、作っても無駄なんじゃないかって……」

「それって、ダメってことなんじゃないの?」

「うーん……」

 リックは、ぽりぽりと薄茶の毛並みの頭を掻きました。

「昨日、トッドさんと話したんだけど、パッセルベルで風車が利用出来るっていうのを考

えれば、親方も話を聞いてくれるかもしれないって」

「ふうん?」ハナハナは、持っていたお皿からオードブルをひとつ、摘んで口に入れまし

た。

「だから、何かそういう、風車を使ってする方が便利な仕事がないかなって……」

「風車って、お水汲んだりも出来るのよね?」

「あと、小麦や豆を粉にしたりね」

「お水汲みって、村では毎日下のマーフの泉にまで行かなきゃならないでしょ? お母さ

ん達は大変だよね」

 ハナハナの言葉に、リックははっと気が付きました。

「そかっ! 長老や村長さんの家から泉までは遠いもんなっ、風車で泉からここまで水を

汲み上げる事が出来れば……」

「それ、いいアイデアじゃない?」

「ありがとっ、ハナハナっ。これで親方に許可貰えるかもしれないっ」

 リックは早速、ボッヘさんのところへ飛んで行きました。

 ボッヘさんは丁度、結婚式の場所を貸してくれたお礼を長老に言っているところでした。

「本当に、この度はありがとうございました」

「なんの、わしはみんなにこの家を利用してもらおうと思ってな」

「親方っ!」リックに大声で呼ばれ、ボッヘさんは何事かと振り向きました。

「何だ? どうした?」

「風車の利用の仕方、思い付きましたっ!」

「風車ぁ?」こんな時に、なんだ、とボッヘさんは呆れました。

「あのなリック、今は忙しいんだ。その話は後で……」

「いやいやボッヘさん、面白そうな話じゃないか?」

 長老が、助け舟を出してくれました。リックはぱっと顔を輝かせ、話し出しました。

「あのっ、風車って粉を挽いたり水を汲んだりするんですけど、村の水汲みって大変でし

ょ、だから、風車の力でトネリコの上まで水を汲み上げたらどうかなって」

 一瞬、長老とボッヘさんは顔を見合わせました。リックは、何か変なことを言ったかな、

と不安になりました。

 と、長老がにっこり笑いました。

「リック、考えはよいがの、水は溜めるとかなり重くなる。このトネリコの枝が、溜めた

水の重みで折れはせんかの?」

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