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その7 ウェディング・ドレス(1)

 長老の家があと少しで完成という頃。

 木ねずみ三兄弟のおかあさん、マーマおばさんがミィミのところへやって来ました。

 午前中の仕事が一通り終わり、どこの家の奥さん達もほっと一息つく時間です。

 ミィミのお手伝いしていたハナハナも、お姉さんと一緒にお茶を飲んでいました。

「どうしましょう、困ったわ」

 家へ入って勧めた椅子に座るなり、マーマおばさんは言いました。

「昨日ミントちゃんがウェディング・ドレスを頼みたいって家に来たのよ」

 パッセルベルでは昔から、先輩主婦が新婦のウェディング・ドレスを縫う習わしになっ

ています。

 結婚する娘さんは、村の中で一番お裁縫の上手な主婦に頼んで、自分のドレスを作って

貰うのです。

 マーマおばさんはパッセルベルで一番の裁縫上手です。これまでお嫁に行った女の子達

は、みんなマーマおばさんにウェディング・ドレスを縫って貰いました。

「でもねえ、お式の日取りがもう迫ってるのよ」

「何時なの?」

 ミィミは聞きながら、マーマおばさんにお茶とお菓子を出しました。

 おばさんはお礼を言って紅茶のカップを手に取りました。

「それが、長老のお宅が完成したらってことなの。で、ボッヘさんにさっき聞いたら、お

宅はもう来週には出来上がるって」

「まあ、それは大変」

「完成記念にお式をって言ったのは、長老さまなんですって。ボッヘさんもかなり慌てて

たわ」

「そうよねえ。そんなに急じゃね」

 上手というのは、作るのが早いというのもあります。でもそのマーマおばさんが『時間

が無い』と慌てているということは、よっぽど時間が無いんだな、と、ハナハナは思いま

した。

 溜め息をつく二人を交互に見て、ハナハナも一緒に溜め息をつきました。

「とにかく途方に暮れてしまって。それで、ミィミに知恵を借りに来たの」

「私に?」ミィミは、綺麗な目をくるっと動かしました。

「私の知恵なんて……。そうだわ、ネービルさんに聞いてみましょう。こういう時は先輩

のお知恵をお借りするのが一番よ」

「そうね。ああやっぱりミィミを尋ねてよかったわ」

「ハナハナ」ミィミは、黙って大人の話を聞いていた小さな妹に言いました。

「私はこれからネービルさんのところへマーマさんと行って来ます。すぐ帰って来るけれ

ど、お家の事よろしくね」

「はい!」ハナハナは元気に返事をしました。

 二人を窓から見送って、ハナハナは食卓に戻ると、食器棚の上の時計を見上げました。

 時計の針は、ちょうど10時。

 おっとりしているけれど、おしゃべりが大好きなネービルさんに捕まったら、多分お昼

まで帰れないかな、と、ハナハナはお茶を飲みながら予想しました。

 お昼ご飯の支度を、ミィミに代わってしておこうかな、と、ハナハナは思いました。

「でも、もう一杯、お茶を飲んでから」

 ハナハナは空になった自分のティー・カップにお茶を注いで、もうちょっと待ってみよ

う、と座り直しました。

 ミィミとマーマおばさんは、ハナハナの予想に反して、お昼前にネービルさんの家から

帰って来ました。

 戸口で話している二人は、先ほどの心配そうな様子とは変わって、何やら上機嫌でした。

「それじゃ夕方に」

 マーマおばさんはそう言うと、にっこり笑って帰りました。

「ねえ、どうなったの?」

 気になって訊いたハナハナに、ミィミはふわりと笑いました。

「ハナハナ。あなたにもお手伝いしてもらいます。忙しくなるわよ?」

 何だか楽しそうなミィミに、ハナハナもうきうきしてきました。

「はいっ」にこにこと返事をしたハナハナの頭をそっと撫でて、ミィミはお昼ご飯を作り

に台所へと向かいました。



 それから、本当に忙しくなりました。

 その日の夕食後に、ミィミとマーマおばさんが声を掛けた女の人達がネービルさんの家

に集まり緊急会議になりました。

 議題はもちろん、ミントさんのウェディング・ドレス製作です。今回は時間が無いので、

ちょっと異例ですが、一人の人が全部作るのではなく、みんなで協力して作る事になりま

した。

 そこでネービルさんが勧めたのは、セパレーツ型のドレスでした。これならみんなが分

けて縫う事が可能です。

 ミントさんも呼ばれて、早速採寸しました。

 後は布は誰が何処で仕入れるか、誰がどのパーツを縫うか、みんなで話して決めました。

 その結果。

 スカートはミィミとマラーニャ。ニーニャとハナハナもお手伝いします。

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