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その4 キッパとルウ(4)

「ニニィ、落ち着いて聞いてね。ルウが……」

 ミィミがみなまで言い終わる前に、ニニィはベッドでぐったりしている我が子を見付け

てしまいました。

「ルウっ、ルウっ! 一体どうしたのっ?」

 ニニィは半狂乱になってベッドに駆け寄ろうとします。

 それを優しく押さえて、マーフは言いました。

「すぐに長老さまが来て下さいます。『命の水』があれば、大丈夫です」

「助かるのっ? 助かるわよねっ?」

「はい」とマーフが言った時。

 ドアが開いて、長老と村の人達がやって来ました。

 ニニィは入って来た長老に縋って泣きました。

「ああ、どうかこの子を助けて下さいっ! お願いしますっ!」

「うむ、分かっておるよ」

 長老はニニィの肩をぽんぽんと叩くと、ルウの寝ているベッドへと向かいました。

 そして、上着のポケットに入れた小瓶を取り出し、一滴、二滴、ルウの額に振り掛けま

す。

 と。

 それまで真っ青だったルウの顔色が、みるみるバラ色に変わりました。

 長老は顔色の良くなったルウの頬に手を当てて、ふむ、と唸りました。

「怪我は、もう大丈夫じゃ。じゃが——」

「ルウっ!」

 長老が先を話そうとした時、キッパが部屋の中に飛び込んで来ました。

 ベッドに駆け寄ると、弟を覗き込みます。

「母さんっ、ルウはっ?」

「大丈夫よ、でも今長老さまが……」

 キッパは、傍らの長老を睨み上げました。

「ルウは、もう大丈夫なんですねっ?」

「うむ。怪我は今、『命の水』で治したがの。ただ……」

「ただ?」

「落ちたショックじゃろう。眠り病になったようじゃ」

「眠り、病」

 それは、子供の妖精にたまに起こる病気です。何か強いショックを受けた時、びっくり

した魂が身体の奥に小さく丸まって引っ込んてしまい、そのために身体が起きなくなって

しまいます。

 ルウは、普通猫の妖精なら高いところから落ちても大丈夫なのですが、自分が予期しな

い格好で、しかも予想外の場所に枝があってそれにぶつかってしまったので、魂がびっく

りしてしまったようです。

 眠り病と聞いて、ニニィはふらふらとルウのベッドへと寄りました。

 まるで幽霊のような様子で、ぼうっと息子を見下ろしています。

「ニニィ」心配したミィミが、彼女の寝巻きの肩にそっとカーディガンを掛けました。

「もう、目覚めないの?」

 ニニィは呟きました。

「ルウはもう、治らないの? ……治す方法は無いんですか?」

 一変して、ニニィはきっと長老を睨みました。

「長老さまっ! 教えて下さいっ! ルウが助かるなら私、どんなことでも致しますっ!」

「ニニィっ」

「母さんっ、無茶だよっ。母さんだって病気じゃないかっ!」

「そうよニニィ。無茶をしたらいけないわっ。まずあなたが病気を治さなければ」

「そんなっ! でもルウがっ!」

「助かる方法はあるよ?」

 嗄れた声が、その時玄関の方から聞こえて来ました。

 中には入らず玄関から様子を窺っていた村人達を押し分けて入って来たのは、モルガナ

婆さんでした。

 婆さんは、驚いて見ているキッパ達をひと渡り見回すと、どっこいしょ、と手近の椅子

に腰掛けました。

「眠り病は、身体の芯に魂が引っ込んじまう病気だ。だから呼び戻してやれば治るのさ」

「呼び戻し……」

 ニニィが呟きます。

 それを聞いた長老が、はっとしてニニィを見ました。

「いかんよ、ニニィ。その身体で『呼び戻し』の術など。無茶すぎるぞい」

 それを聞いて、ミィミもはっとしました。

「ダメよニニィっ! あの術は大変に体力を使うわ。今のあなたには無理よっ!」

「……でも、それしか無いのなら……」

 ニニィは決心した表情でルウを見下ろします。

 その肩を、マーフが掴みました。

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