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その3 命の水(1)

 シマリスの妖精ボッヘさんの仕事は大工さんです。

 ボッヘさんのお父さんも、そのお父さんも大工さんで、パッセルベルの村で、家を作っ

たり橋を作ったりして来ました。

 でもボッヘさんには跡継ぎがいません。子供は娘さんが一人だけ。ミントさんというそ

の娘さんは、近々隣村の同じシマリスの妖精の若者と結婚します。

 嬉しい事の筈なのですが、ここのところボッヘさんは何故か元気がありません。



 長老の家はトネリコの木の一番上、三つ又になった枝の根元に作られています。建って

から百年にはなるかもしれない家は、ここのところよく雨漏りがしていました。

「こりゃもう寿命かのう」

 雨が上がった翌日。長老は孫娘のニーニャを呼んで言いました。

「ボッヘさんに、手が空いたら見に来てくれと、言いに行ってくれるか」

 ニーニャが行くと、ボッヘさんはすぐに長老の家へとやって来ました。屋根へ上がり、

様子を見ました。

「どうだね?」

「こりゃあ、屋根の板だけじゃあなくて、屋根裏の支えの木もダメですわ」

「そうか。じゃあついでに屋根裏も直して貰おうかのう」

 ボッヘさんは早速、仲間の大工さん達と家の中と外を調べて回ります。

 その結果。

「長老さま、申し上げにくいんですが…」

「なんじゃね?」

「床下の支えも腐っていました」

 長老は翌日、引っ越しすることになりました。

 話を聞いた村の人達が、大勢手伝いにやって来ました。

 もちろん、ハナハナもミィミと一緒に手伝いに来ました。

「おおハナハナ。手伝いに来てくれたのか。ありがとう」

 食器を片付けるニーニャを手伝っていたハナハナに、長老が言いました。

「はい。お引っ越し大変ですね」

「うむ。暫くニーニャの両親の、わしの息子の家に同居じゃよ」

「空き部屋があるから」と、ニーニャは嬉しそうに言いました。

 ニーニャの家は、北の枝の、上から二番目です。大きな家で、お手伝いさんも来ていま

す。

 大好きなおじいさんと少しの間でも一緒に暮らせるのでうきうきしている二ー二ゃに、

ハナハナも嬉しくなってにっこり笑いました。

 その間にも、村の人達はせっせと仕事をこなします。

 しばらくすると、南の大枝の旅芸一座の団員さん達も手伝いに来ました。

「毎年、ここの人達にはお世話になっているからね」

 トーベルさんも白いシャツを腕まくりをして、重い木箱をひょいと担ぎ上げました。 

 そうやって女の人達が荷造りした品物を、男達がどんどんと運び出します。遅れて手伝

いに来たミィミのだんな様ティーヴも、団員さんや村のみんなと一緒に木箱を担いで下の

枝へと降りて行きました。

 引っ越しは、みんなの手伝いで半日で終わりました。

 お昼を少し過ぎた頃、マーマおばさんが子ねずみ達を手伝わせて、サンドイッチとお茶

を運んで来ました。

「さあさあ、みんなお腹が空いたでしょ。食べて下さいな」

「さて、これからが大変だね、ボッヘさん」

 木こりの木ねずみルーラさんが、隣に座ったボッヘさんに言いました。

「解体して、使える柱は残そうと思うんだがね」

「そうかい。なら新しいのを何本切り出すか、早いとこ調べてしまおう」

 ハナハナは、そんな話をしているおじさん達に、紅茶のお代わりを注いで上げました。

 と、ルーラさんがボッヘさんに言いました。

「ときに、ボッヘさん、跡継ぎはどうなさるんだい?」

 ボッヘさんはちょっと困った顔になって、ふうむ、と唸りました。

「隣村の親戚の子を養子にしないかと言われてるんだが……。どうも、本人が大工は嫌だ

と言っていてね。どうしたもんかと皆で思案しているよ」

「婿どのは、どうなんだい?」

「トッドは絨毯織りの仕事をしている。筋はいいようだが、今は兄貴のところで使われて

いるんだ。……あの子に大工は、どうだかね…」

「そうかい」

 ルーラさんはティーカップを持ち上げて、一口お茶を飲みました。そして、側で話を聞

いていたハナハナに、

「難しいね」

 と笑いました。


 引っ越しも無事に終わり、これから家は建て直しです。

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