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最果ての地で。  作者: 織瀬春樹
2章 相互の過去
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9.消えない跡


それからの日々は、

ただ何もなく過ぎていった。


俺も仕事をしてないから、

相変わらず家にいた。



美樹は、あれからずっと部屋に泊めていた。


俺は1人暮らしで自炊もできてたし、

親の金も残ってたから、

生活は難なく過ごせていた。



そんなある日の夕方、美樹は俺に尋ねた。



「あの灯りは何?」



俺は、美樹の指差す方向を見つめた。



___あぁ、そういえば祭りやってるのか。



この町では昔から、秋に地車が町を回る。


そして神社には、屋台が沢山並んでいた。



「祭りだよ、行ってみる?」


「うん…」



こうして俺は、数年ぶりに祭りに向かった。


1人では、絶対に向かわなかっただろう。


ただ、何かが変わればなと、そう思った。





久しぶりに行った祭りは、変わり果てていた。


数年前の活気は、何分の一も小さくなっていた。



地車は、動いていなかった。



それもそうだ。

数年前、あんな事故があったから。





_____あれは、一瞬だった。


俺は毎年のように家族4人で祭りに来ていた。


活気のある地車を、迫力のある近くで見ていた。


父母と妹、幸せだった。


父が妹を持ち上げて、見やすいようにしていた。


笑いが耐えなかった。


ほんと、幸せだった。



そんな時、地車が方向切り替えを誤り、

家族に突っ込んできた。



俺は、助かった。


_____俺だけが、助かってしまった。




俺はその日、家族3人を一瞬にして失った。


それ以来、俺は来ることがなかった。


あの出来事を、思い出してしまうから。


あの光景が、目の前に広がってしまうから。



ただ、何年経っても変わることはなく、


その場所には、血がまだ染み込んでいた。



あの時と同時刻。


忘れることのない、18時53分。


俺は、空を見上げた。



「どうしたの…?」



「…ううん、なんでもないよ

せっかく祭り来たし何か食べるか?」


「ドーナツ」


「…おう…あるかな...何個?」


「10kg」


「それドーナツの単位じゃないから…」





星が3つ、赤い、

果てしなく広い空に輝いていた。


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