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最果ての地で。  作者: 織瀬春樹
1章 遭逢
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5. 美しき世界




涙がぶわっと溢れ出した。


堪えようとしたのに、耐えられなかった。


かすみさんの純粋で、

透きとおった言葉が、心に強く染みた。


隣で広樹さんが涙を拭っていた。



「あぁ…かすみだなぁこれ…」



ずっと手紙に向けて呟いていた。


その手紙は水分を含み、字が少し滲んでいた。



「ほんと、楽しかったよなぁ…」


「あの時は、

この時間がずっと続くと思ってたなぁ」


「同じ時間に同じ場所でいることが、ほんとに幸せだったよ…」



大切なのは、言葉にして伝えることだ。


言葉にしなくても伝わることもあるかもしれない。


でも、それでも伝わらないもの。


伝えられなかったもの。


それは、言葉や文字にして初めて相手に伝わる。



そう、このように。



「…和人、

お前もいつか、こういう奴を見つけろよ」


「必ずいつか離れることになるし、失いたくないなら会わなければいいって考えの人もいる」



でもな、と、広樹さんは息を吐き、



「それでも、たとえ失うことになるって分かっていても、その時間は決してなくならないから」



また涙を目に押しこらえて続ける。



「だから、その時間を楽しむことだ。

その時間は一生ものになる。

その時間は忘れることはない。

その時間は…っ、

今見る世界に花を咲かせるから...」



広樹さんの顔はぐしゃぐしゃだった。



「それに、もし、世界を見ていないような人を見つけたら、この世界を見せてやれ。綺麗な世界だと」



「うん…」



「俺はこの世界を見間違えていた。

それを誰かさんが引っ張ってくれた。

世界は美しいって。

繋がりは素晴らしいって。

お前がそれを見せてやれ。

…誰かを追いかけていただろ?」



「……っ、

…分かった。いってきます」




広樹さんは、幸せだったんだ。


たとえ愛した相手を失っても、


その時間が、二度と蘇らなくても。



できたら俺も、同じことが言いたいと思う。


そんなことを思いながら、また彼女を探し出した。


足は、さっき忘れた速さを取り戻していった。



夕陽は海の向こうに埋もれ、

紅かった空は、次第に群青色に染まっていく。







手紙の内容は、別の機会に書く予定です!

お付き合い下さりありがとうございますm(_ _)m

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