4.繋がる想い
視点戻ります!
「それでは」
そう言い残し、少女は向こうへ歩いていった。
一定のスピード。
変化することなく、静かに去っていく。
彼女は、どこへ行くのだろう。
今向かっている先には、なにがあるのだろう。
行く宛は、あるのだろうか。
帰るべき場所に戻れるのだろうか。
俺は、視界から消えた彼女を追っていった。
角を曲がっても、そこには誰もいない。
その先を曲がっても、誰もいない。
どこにもいなかった。
最初はスピードを出していた足も、
次第に遅くなっていく。
いつしか、歩きながら気長に探していた。
見つかればいいなって、そんな風に感じた。
暫くすると、墓地が近づいてきた。
この町唯一の墓地。
そこにはよく、一人の男の人がいる。
「広樹さん」
「おっ、和人君。どうしたの?」
近くに住んでいる広樹さん。
数年前に彼女のかすみさんを亡くして、
こうしていつも墓参りに来ている。
俺も、随分お世話になった人。
「毎日ですね」
「いやー1日でも来ないと空からかすみに怒られそうで」
広樹さんは、笑いながら言った。
「俺も手合わせていいですか?」
「おう、頼むよ」
線香を立てた後、俺は尋ねた。
「その手紙はどうしたんです?」
俺は、
広樹さんが大事そうに持っていた手紙を指差す。
「ああこれかい?聞いて驚くなよ…」
そうして広樹さんは少し微笑み、
「かすみからの手紙なんだよねーへへっ」
「え?なんでそんなものが?」
「病院から持って帰ってきた荷物ほったらかしててやばいと思ってね。それで片付けてたら出てきた」
「なんかすごい…」
広樹さんも、不思議そうな顔をしていた。
「手紙があるなんてね…」
「それ読んだんですか?」
「いや、まだ開けてないよ。
見つけたの報告もしないとね」
かすみに、と広樹さんは笑いながら言った。
「一緒にみる?」
「…いいんですか?」
「全然大丈夫だと思うよ」
「じゃあ……」
そうして広樹さんは、封筒を開ける。
不自然に付いた2つのハートマーク。
それが、かすみさんの性格を思い出させていた。
開けている間、広樹さんは楽しそうだった。
もう繋がらないと思っていた相手からの手紙。
それにわくわくしているのだろう。
そうして開封された手紙。
その手紙には、
小さな丸っこい字でこう書かれていた。