3.信じぬ心
女の子視点となります
この人は、何を考えているのだろうか。
良からぬことを考えているようには思えない。
本心から、私を助けようとしているように見える。
でも、どうしても私は信じられない。
私に関わっても、メリットなんて無いのに。
なんで話そうとするのか。
なんで私に構うのか。
それが、分からない。
知らない人なら、無視をすればいい。
怪しい人なら、軽蔑すればいい。
構わなければ、それでいい。
なのに、この人は構ってきた。
私から見れば、こんなに怪しい人はいない。
ホームの椅子に偶然座っていただけの私に構ってきた人。
何か裏があると思うのは、当然のこと。
でも、その様子は見られない。
「どうしたの?」
純粋な心で私に接しているのだろう。
「なんでもない」
でも、どうしても私には分からない。
何故そのような事をするのか。
「ごめんなさい、やっぱり帰りますね」
だから私は、このような態度で返した。
少し冷たくされれば、もう構わないだろう。
そう思った。
でも、
「そっか、じゃあまたいつか会えたら話そうね」
そう、この人は言ってきた。
信じても、いいのだろうか。
疑わなくても、いいのだろうか。
この人に、心を開けてもいいのだろうか。
少し迷った。
でも、帰ると言った手前戻ることはしない。
「では」
そう言い残し、私はあの人に背を向けた。
夕陽が眩しかった。
私は、どこに行くのだろう。
あの人には帰るって言ったけど、
帰るところなんてない。
あんなところ、帰りたくない。
ずっと、さまよえばいいのかな。
住処が見つかるまで歩けばいいのかな。
どこまで歩けばいいのかな。
あの木の下までかな。
あの駅まで戻ればいいのかな。
その奥の海まで行けばいいのかな。
そこに、私の居場所はあるのかな。
私はこれからどうすべきなのかな。
あの人に最後まで付いて行くべきだったのかな。
でも、
それで、またあの時みたいになったら嫌だから。
じゃあ、どうするべきなのかな。
なにもすることない。
この世界に、いらなくなっちゃったかも。
_______消えてしまおうかな。
そんなことを考えながら、私は歩く。
目的地はない。
夕陽の光が、マンションを照らす。
この町全体が、明るく照らされていく。
草木が黄金色に輝き、かかしが夕陽を見つめる。
眩しいほどの光。
その光は次第に、紅く、赤く、燃えていく。
彼女の道は、どこへ向かっているのだろうか。