19. 行方
告別式が終わり、家に帰った。
涙はもう枯れ果てていて、
一滴も流れることはなかった。
そのまま、床に倒れこむ。
今日は、もう疲れた。
「....はぁ」
もう、何もかもどうでもいい。
今はとにかく、気持ちを整理したかった。
これまでのことを、全部。
「なぁ、美樹」
ゆっくりと整理して、
「ん?美樹ーどうした?」
気持ちを落ち着かせて、
「....美樹?あれ...」
また、いつもの生活に、
「え………」
戻りたかったのに。
「……美樹!?」
この部屋に、美樹はいなかった。
いつもいる部屋を探しても、
トイレにも、
お風呂場にも、
クローゼットにも、ベランダにも、
どこにもいなかった。
というか、
そもそもいつからいなかっただろうか。
……そうだ、告別式だ。
その時には、もう美樹はいなかった。
なんで、なんで気づかなかったのだろう。
後悔だけが残る。
でも、
それより先に、美樹を見つけなければ。
そう思った矢先、玄関で音がなった。
慌てて玄関へ向かうと、そこに美樹が立っていた。
いつもと何ら変わりない姿で。
「どこ行ってたんだ?」
「心配したぞ、どこ行ってた?」
「ほら、黙り込まずにさ、どうした?」
「……どうしたんだ、おい」
美樹は、返事をしなかった。
ずっと黙って、俺の方を向いていた。
「なんかあったの?相談とかなら聞くよ」
それでも、返事はない。
「…そろそろ喋らないか?
俺も頭がぐちゃぐちゃなんだ」
ずっと、こちらを向いているだけ。
「とりあえず中入ろう?な?」
だから、とりあえず手を差し伸べた。
でも、彼女は手を伸ばさない。
「さあ、入ろう」
それならと、彼女の手を掴もうとした。
____でも、掴めなかった。
いなかった。
最初から、いなかったんだ。
玄関で物音がしたのも、
さっきまで、目の前にいたのも、
『幻覚』だった。
差し伸ばした手は彼女の手をすり抜けた。
その瞬間、目の前の彼女が消える。
「………っ」
その後すぐに、部屋の奥に気配を感じる。
振り向くとそこには、
「くっ……」
こたつで温もっている彼女がいた。
みかんを手に取り、
いつもの、控えめな笑顔で笑う彼女が。




