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最果ての地で。  作者: 織瀬春樹
3章 そして
15/24

15.町の景色



川の流れは止まらない。


故にそれは、

一つの終わりがあることを意味する。


川は、何処かの山奥に源流があって、


そして、川の終わりは海に通じる。


流れが止まらないのであれば、


河口には必ず着いてしまう。


それは、避ける事の出来ないこと。



でも、一つ言うなれば、


川は、分岐する。


一つの元から、幾つもの川に分かれる。


なら、もしもその川がこの世界の流れであれば、


もしもその分岐が、

この世界での分かれ目であるとすれば、


結末を、選べるのであれば、


この世界は、

それほど腐ってはないかもしれない。


ただそれは、能動的な分岐での話。


川自身には、決定権はない。


だから、この世界は腐っている。


この世界を、信じてはいけない。


溢れるほどの分岐があるにも関わらず、

この世界は、これを選んだのだから。





ある日の、まだ陽もいない頃、

俺はふと目が覚めた。


部屋を見渡すとベランダへの掃き出し窓が開いていて、冬が近づく夜風が部屋に入ってきて、肌寒くも、どこか涼しげなようだった。



「俺、開けたっけな...」



開いているのが不思議に思い、

掃き出し窓に近づいた。


するとそこには、

見慣れた1人の少女がいた。



「あ、おはよー」


「おはよーって、結構はやいな」



今は、午前6時より少し前。


まだ、空には星が散りばめられていた。



「起きたんだから仕方ないじゃん」


「そうだけどさぁ」


「もう眠れないんだもん」


「ま、とりあえず中に入れ。

薄着過ぎる、マジで風邪引くぞ」


「わかりましたよーっと」



そうして、部屋の中に入る。



「でも、暇じゃん。なんかないの?」


「そう言われてもなぁ」


そう、そう言われてもこの時間に出来ることは限られてくる。


ただでさえ廃れているこの町に、何か...



「あ、」


「なになに」


「ちょっと出掛けるか、着替えて来いよ」



流石にずっと俺の服を着せるのもかわいそうと思い、あれから服屋に行ったりして美樹の服も揃えた。


...まぁ、殆どがワンピースだけど。



「...どこに行くの?」


「ん?いいとこ」




数分後、俺たちはマンションから出た。


自転車に乗り、美樹を後ろに乗せる。



「落ちるなよ〜」


「分かってるよ」



そうして俺は、ペダルを漕ぐ。


ある人に教えてもらった、あの場所へ。




着いたのは、少し離れた丘の上。


町を見下ろせて、

海も見えるちょっとした広場。



「はぁ...はぁ...」


「おつかれさま」


美樹に労いの言葉を貰い、自転車を停める。


そして、見晴らしの良い場所へ行く。



「わぁ...」




丁度その時だった。


海のはるか向こうから、太陽が顔を出す。


町の至るところが紅く染まっていく。



「な?いいとこだろ?」


「そうだね」



終始、美樹は朝日を浴びていた。


目をつむり、

静かに、

気持ちよさそうに。



「ま、悪くないかな」


「ひどいなそれ」





少女は、言葉と同時に俺の方へ振り向く。



ふわりと揺れる髪。


弱い風を受けるワンピースの裾。


手を後ろに組み、俺に笑顔を見せる。


背後に輝く朝日と、

少女の笑顔も相まって、


言葉には表せない、

そんな美しい光景が、

俺の目を、満たしていった。

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