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最果ての地で。  作者: 織瀬春樹
2章 相互の過去
13/24

13. 消え去る花



暫くした時、空が急に明るくなった。


少しずれて、音も鳴る。



「ひゃっ!」



美樹は突然鳴った音に驚いて耳を塞いだ。


そして少し音に慣れた後、美樹は窓の外を見た。




それは、空に描かれた花の数々。


幾つもの色が重なり合い、この町を照らす。


そしてその花は、

ほんの一瞬のうちに消えてなくなる。


でも、消えた後にまたすぐ新しい花が咲く。


それが、繰り返されていく。



「…きれい」


「そうだなぁ〜」



終始、俺たちは見惚れていた。


めまぐるしく表情を変えていく夜空に。


眠気が襲っても気にせず、


気付いた時には朝だったことは、

言うまでもない。






暫くしたある日、美樹と買い物に行った。


いつものように夕飯の買い出しに行った時、

美樹はあるものを持ってきた。



「……リナリア?」


「そう」



持ってきたのは、

リナリアという花の種だった。



「いきなりどうしたの?」


「いや、これ育てたいなぁって」


「ふぅーん」



ベランダにもプランターがあるから、

その種も買って帰った。




部屋に帰って、その種を植えた。


特別何があったって訳でもない。


でも、美樹の横顔は少し嬉しそうに思えた。



「咲くの楽しみだなぁ」


「そうだな」



そんな時ふと思った。


美樹は、いつまでここにいるのだろう。


日常と化したこの日々。


いつの間にか、

それを失うのが怖くなってくる。


この花が咲く頃は、

どうなっているのだろう。


時は流れていき、過ぎ去るもの。


戻ることは、決してない。



出会えば、必ず別れがくる。


それは、この世界の決まり。


その時は、静かに、静かに、近づいてくる。


誰にも、気づかれることもなく。

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