12. 独りで
それから私は、何回か電車を乗り継いだ。
どこでどの電車に乗ったのかも忘れた。
でも、もう戻ることもないから。
だから私は気にせず、
電車を乗り継いでいった。
そして着いたのがここだった。
海の近くにあった、あの駅。
あれが、
乗り継げなくなった最後の駅だった。
そこで降りた時、私は気付いた。
これから、私はどうするんだろうって。
どこで寝るんだろうって。
何を食べるんだろうって。
そんなことを考えて、
私は夕陽に照らされてた海岸を眺めていた。
するとそこに、一人の男の人が来た。
そして彼は私を______
「美樹と…呼んだ…」
途中から、美樹の目から涙が零れていった。
…彼女は、辛い思いをして生きてきた。
そう考えていると、
俺の目にもまた涙が溜まってきた。
そして俺は無意識のうちに、
目の前の少女を抱きしめていた。
「同情なんて……いらないからあ…っ」
「……あぁ」
俺たちは抱き合った。
そして美樹は、俺の胸に顔を埋める。
___同情なんていらないから。
その言葉が、最後の強がりだった。
少女は、泣く姿を見せない。
ただ、耐えられるはずもなく、
少女はボロボロに崩れていく。
まるで、心の中の何かが弾けたように。
人生は常に、偶然と必然で満たされている。
それは、幾千もの道程がある旅路。
旅路は、一つ一つ明らかに異なっている。
けど、心は限りなく近づけられる。
誰だって、最初は独りだ。
だけど、人は独りでは生きていけない。
心の奥には誰かが居て、
その形無き影が描かれる。
その誰かとは、
人生の内で、一番大切なもの。
でも、
その出会いとは、新たな別れの為のもの。
なら、私たちは何故出会うのか。
その心の痛みは、
誰が誰の為に与える罰なのか。
それは、終わりなき物語。
降り積もる毎日に埋もれた欠片。
それを繋ぎ合わせた時、
その物語は、幕を閉じるのか。
3つの星はもう空にはなくて、
月が、その場所にあり輝いている。
秋の空に輝く月は、
いつも、なにも変わらないけど、
今日は少しだけ、儚くも思えた。