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最果ての地で。  作者: 織瀬春樹
2章 相互の過去
12/24

12. 独りで





それから私は、何回か電車を乗り継いだ。


どこでどの電車に乗ったのかも忘れた。


でも、もう戻ることもないから。


だから私は気にせず、

電車を乗り継いでいった。



そして着いたのがここだった。


海の近くにあった、あの駅。


あれが、

乗り継げなくなった最後の駅だった。


そこで降りた時、私は気付いた。


これから、私はどうするんだろうって。


どこで寝るんだろうって。


何を食べるんだろうって。


そんなことを考えて、

私は夕陽に照らされてた海岸を眺めていた。




するとそこに、一人の男の人が来た。



そして彼は私を______




「美樹と…呼んだ…」




途中から、美樹の目から涙が零れていった。



…彼女は、辛い思いをして生きてきた。


そう考えていると、

俺の目にもまた涙が溜まってきた。


そして俺は無意識のうちに、

目の前の少女を抱きしめていた。



「同情なんて……いらないからあ…っ」


「……あぁ」



俺たちは抱き合った。

そして美樹は、俺の胸に顔を埋める。



___同情なんていらないから。



その言葉が、最後の強がりだった。



少女は、泣く姿を見せない。



ただ、耐えられるはずもなく、

少女はボロボロに崩れていく。



まるで、心の中の何かが弾けたように。





人生は常に、偶然と必然で満たされている。


それは、幾千もの道程がある旅路。



旅路は、一つ一つ明らかに異なっている。


けど、心は限りなく近づけられる。


誰だって、最初は独りだ。


だけど、人は独りでは生きていけない。


心の奥には誰かが居て、

その形無き影が描かれる。



その誰かとは、


人生の内で、一番大切なもの。


でも、

その出会いとは、新たな別れの為のもの。


なら、私たちは何故出会うのか。


その心の痛みは、

誰が誰の為に与える罰なのか。



それは、終わりなき物語。



降り積もる毎日に埋もれた欠片。


それを繋ぎ合わせた時、

その物語は、幕を閉じるのか。






3つの星はもう空にはなくて、


月が、その場所にあり輝いている。



秋の空に輝く月は、

いつも、なにも変わらないけど、


今日は少しだけ、儚くも思えた。






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