七.合宿、もうすぐ開始します
あれからしばらくたつ。先輩たちに再会してから、マネージャーして、先輩達と再会したストバスで先輩とバスケして帰る、というとても充実した日々を過ごした。マリっちってば、たまに来てるから、タッキーにばれないか凄く心配っスけどね……。
相手がいて、それが大好きな先輩だからっスかね?楽しくて、楽しくて仕方がない。けど、明日から合宿なのでしばらく、先輩とバスケできないから寂しいんス。そういえば、マリっちもすずむーも明日から合宿だって言ってたな……。
「木村がいなくなると少し寂しいな」「岡田先輩……」「いんだよ、静かになるから」
相田先輩、酷いっ。確かに騒がしいけど、”オレ”先輩たちとバスケできるから救われてたのかな。ショボンとしていると「いいんだ、こいつは寂しいって素直に言えないだけだって」と伊月先輩は”オレ”の頭をワシャワシャ撫でた。いつにも増して力が入っている。ちょ、髪がグシャグシャになるっスよ!?
「ま、早く帰ってこい。オレ達も、お前とバスケやるこの時間、気に入ってんだ」
そういって優しく微笑む伊月先輩。……いつもこうならいいのに。後輩としてもっと、もっとシッカリして、……いやザンメンからイケメンにシフトチェンジしてほしいと切実に思う。
「ま、帰ってきたら連絡いれろ。こうしてまたバスケの練習につきやってやるよ」
相田先輩……。ふと先輩に目を向けると、照れくさそうに頭をかいていた。先輩が照れるなんて、珍しいこともあるもんだと思う。けど、口に出したらどやされるって分かっているからできないッス。ほかの二人も何も言わずに流すようにしていた。
「そういうことだから、頑張っておいでね。木村」「ハイっス」
中村先輩は、ふわって笑って”オレ”のぐちゃぐちゃになった髪を梳いて綺麗にしてくれた。中村先輩はいつも優しい。もし兄がいたら、こんな兄がいいなあ、って思うこともよくあるっス。
「じゃあ、そろそろ7時だから帰ろうか」「そうっスね!!」
先輩たちは”オレ”をマンションの前まで送ってくれた。明日からの合宿は五泊六日。GWを利用するけど少し平日とかぶる。その分の授業の分のプリントを渡されたけど、私はプリントをもらった日からコツコツやってあと一枚。
他のメンバーは、どうするかなんて知らないけど、早くしないと終わらないじゃないッスかね?私には関係ないッスけど。さ、最後のプリントをやってしまおうか。
私はさっさと宿題を終わらせた。その方が休み時間にバスケできるんス。別にコートがなくてもドリブルとか色々できるから大丈夫ッスよね?早く始まらないかな……。
まだ誰もこの合宿に波乱が起きることを知らずにいた……。
<Side ???>
木村は今どこで、何をしているだろうか。いつも、週に1度は最低でもメールを入れてきていた律儀な奴だったが、昨年度の終わりから音通不通になっている。
「やあ、久しぶりだね、拓真」
「ああ、お前から電話を入れるなんて珍しいな、竜王」
まあ、僕は電話なんてほとんどしないからね。明日からの合宿が何か良い事が起きるのではないか。珍しくそんな予感がしていた。
「たまにはいいじゃないか。何かやましい事でもあるのか?」
「そんなものはあるわけないに決まっている!!俺を滝川と一緒にするな!!」
……翔が聞いたら煩そうだな。まあ、それでこそあいつだし、拓真にそんな心配はしていない。
「明日からの合宿、何かある」「………お前の勘か?」「ああ」「…そうか」
副部長だけあって、僕からの電話はそういう意味と解っていたのだろうか。そこそこ付き合い長いから、それくらいわかって当然だが。
「こちらも準備しておこう」「ああ。また会場で」「……ああ」
そう言って電話を切る拓真。柄でもないが少し合宿が楽しみだ。
<Side End>