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S.C.S.   作者: 麗羅
~海王中バスケ部は最強です~
3/19

二.フーン、そこそこっスね

部室に着くと、赤沢は困ったように笑いつつ、私を見た。

「始めに言っておくけど、テニス部はルックスのいい人が多いんだ。相馬みたいな人がいるかもしれないから、先に言っておくよ。ゴメンね」

そう言われても、私が気にするはずがないんスけどね……。てか、自分たちでルックスがいいとか言ってたら世話ないっスよ……。まあ、あれだけ女子に騒がれてたら、当然っスけど。


さて、光定高テニス部は、海王中バスケ部とは違い、二軍まで。私以外に、マネ候補すらもいないらしい。確か海王中は、私たちバスケ部のみ四軍まであるけど、他は三軍までしかないって、クラスメイトで、新聞部の奴(更に言えば情報通)が言ってたっけ。

あ、マネージャーはリューセーによる厳選に次ぐ厳選で、各軍3人ずついたっス。仕事と恋は別!! みたいな子ばっかり集めた手腕は本当に凄いよ、うん。ま、それでもカップル成立していたので、そこはビックリだ。部活に響かなければ、リューセーによるお叱りなどもないので、納得できるんスけど。


「基本的に一、二年がレギュラーだからビックリす「へー、そうなんスか」軽っ。え、何で!?」

普通に返すと逆に驚かられた。そこまで驚く事っスかね? 別にいいじゃんか。スポーツ界ってのは、弱肉強食の世界。強い所が勝ち上がるんだから。

「私の中学、中一から卒業までバスケ部のレギュラー、固定してたんスよ (私もその一人っスけど) 。学校の理念だって“勝つモノが全て正しい”っスよ。横断幕は“常勝”っスから」

「そこはうちもそうだね。“負けるのは許されない”から」

「…そういうの、好きっスよ」私はニヤリと笑う。

全中だってトリプルスコアまではいかないが、ダブルスコアで勝ち進んだんだ。

あ、今年のI.H.(インターハイ)とかW.C.(ウィンターカップ)どこが勝つんだろ? 去年はマリっちとかタッキーのいる海南がI.H.で、ユウとルーやん(越前 琉生)のいる葉誠がW.C.で優勝したんスよね。バレない様に、隠れて絶対に応援に行こう。きっと、月バスで結果出るけど、やっぱり生で見たい。

そんな風に考えていると、三人とも部室に入っていくから、慌てて後ろからついていく。


「…勝、そいつ誰?」

中に入ると、たぶん、レギュラー陣達が着替えていた。元男(言っていて悲しくなるが)のため、騒がしくしないっスけど。村田がその声に応じる。

「マネ候補だ」「ミーハーじゃないの?」

うわぁ、イキナリ、しかも目の前で言うんスね。

「ちょ、村田君。それじゃ私がしたいって言ったみたいじゃないっスか。別に帰って「駄目だよ」……分かってるっスよ」

赤沢に軽く怒られた。いいじゃん、こんなに敵意剥き出しの人と関わりたくない。

「おい、木村。赤沢君を怒らせちゃ駄目だぜ」

と月影にこそっと耳打ちされたッスけど、全然怖くない。リューセーの方が怖いっス。というか、リューセーの性格を丸くして、優しくしたら赤沢になるって感じっスかね。


「彼女は木村 涼さん。マネ候補、二年ね」「……宜しくっス」

正直に言えば、マネなんてやりたくないんスけど、部活に入らなければならないこの状況上、仕方ないと思う。

格下とまでは言わないけど、皆よりも弱い奴と、1on1したってつまんないもん。部活に入ったら入ったで、絶対エースやらされるし。それはいつものことだから構わないとして、主将とか無理っスよ。リューセーとか、相田先輩に任せといて、好き勝手動く方が楽しいっスもん。


「じゃ、仕事は…「ドリンクとかタオル位しか出来ないっスよ」十分だよ。ルールは?」

「体育でした位しか知らないっスよ?」「じゃあ、やりながら覚えて」

勿論マネをするならだけど、ねといって、赤沢は水場と洗濯機の場所を教えてから、外に出て行った。その後私に月影が近づいてくる。その手にはこの部のジャージがあった。ここも紺色なんだ。その事実に苦笑が漏れる。桜凛の事、忘れられないらしい。


「おい、木村。これでも着ろよ」「なんで?」「赤沢君が動きにくそうだからってさ」

私は月影をじっと見る。

「ああ、身長的な問題っスね」私とあまり差がないっスもん。

「黙って着ろよ!!」

月影は、そう言ってこの部のジャージを投げつけ、外に出て行った。皆練習に行ったから、部室で着替えさせてもらおう。伸びた髪はポニーテールにした。マリっちは結んでなかったけど。邪魔だからまとめようと思っただけだ。

………息子二人だったので、母さんが切らせてくれないんスよ。女の子がやっぱり欲しかったらしい。仕事で飛び回ってる両親は、これ以上子供を望めなかったから。でも、私のこと気遣ってくれてはいるんスけど、ひらひらした服を着せようとする両親や、兄にはいらっとするっス。ボーイッシュな服がいいんスよ!これでも(元)男っス!!


「結んだんだ。似合ってるよ」「どうもっス」

女の恰好が似合うのも少しフクザツだ…。

「今日は軽くしかしないから、タオルだけでいいよ。よろしくね」

「了解っス。気にしなくていいっスよ」

こんな会話をしているだけで、フェンスの周りにいる女子(いつも思うけど皆、暇なんスかね、わざわざ見に来るとか。騒がしいだけっスけど)は「何あの子」だの、「赤沢君に馴れ馴れしいわ」って言っている。


……女子って怖いんスね。マリっちはこんな時、”オレ”達が助けてたけど、自分で集めた情報を使って脅す(そこまで酷い子じゃないんだけど、それ以外に言葉が思いつかない)とかしてそうだ。なんて言ったって、マリっちはタッキーと口喧嘩して勝つ位だし、相手校の情報も細かく集めてくれてたんスから。タオルを準備して練習を見る。

……なんか、軽くっていうけど軽すぎじゃないっスか、これ? テニスだから勝手が違うのかなあ……。


<Side俊>


「おい、勝。なんであいつを選んだんだ?」

あいつ…木村涼がミーハーでない可能性は零ではない。仕事ができるならまだいいんだがな。勝は楽しそうに答える。

「木村さんを選んだ理由? 話していて面白いんだよ。そのうち俊にもわかるよ、きっとね」

そう言って新入生の様子を見に行った。三年に部長はお前だと言われた……言わしめたの方が正しいのだろうか? そんな勝だ。こいつの言葉は基本的に正しいが、認めるか認めないか位は俺も判断させてもらおう。


<Side End>


名門テニス部だけある練習は、平部員にはキツそうだった。が、

「………軽いっスよね」「何がかな?」「うわぁっ」

柔らかい雰囲気の人が話しかけてきた。たぶん三年の先輩。二年はもうちょっと馴れ馴れしい。既に終了時間は近いので、ノルマを終えたのだろう、着替えていた。

「先輩っスよね」「うん。3‐Aの高尾 達也。で、何が軽いの?」

「……いや、練習って今日からだろうし、ウォーミングアップにしては軽いな、と」「え?」センパイはその秀麗な顔を曇らせた。でも、桜凛も海王もこの二倍位が普通だった。バスケとテニスで勝手が違うっスけど、そん位違うんス。なにせ、平均的な男子の体力より劣るユウは毎回へばるくらいだ。そんなに生易しい物じゃない。


「何言ってるんすか。これでも重い方っすよ」

次いで、やんちゃそうな子がやってきた。レギュラー陣はあとで自己紹介してくれるらしいから、名前を聞くのはやめた。

「転校する前の所とか中学の時なんか、もっと練習酷かったんスよ。この倍くらいはあったっス」「女子なのに?」「いや、男子っスよ。勿論」

女子がやったらバテるなんて可愛いもんじゃない。当たり前じゃないか。


ふと、視界に影が増えた気がしたので、後ろを向くと、着替え終わったレギュラー陣がいた。先輩はいち早く着替えてたらしい。

「じゃあ自己紹介しよう「の前に、着替えてきていいっスか」……ゴメン。いいよ、行っておいで」

私は部室に駆け込み、手早く着替えた。リューセーに感謝っスね。早着替えにも慣れたし。五分以内に着替え終えて、荷物を持って外へ行き、タオルを洗濯機に入れ(一人暮らしだから慣れてる。手早く済ませといた)、洗うようにして赤沢の元に戻った。


「お待たせっス」「いいよ。じゃあ、先輩からお願いします」

赤沢はやっぱり先輩を立てようとした。気配りできる男子ってもてるんスよねー。ま、関係ないんスけど。

「ボクはいいよね」「ハイ。高尾先輩はさっき聞いたんで。2―Bメンバーもいいっス」

だろうなと村田は言う。二回も聞かないといけない程、記憶力は悪くないっス。


まず、高尾先輩の横にいた黒髪をウルフカットにした人が名乗る。

「オレは3―Cの氷室 順。基本的には達也とダブルスをしているよ」

「因みに、オレと有理はシングルスが基本だよ」

赤沢はそう言った。別に興味ないっスよぉ…、テニスよりバスケ派なんで。おくびも感じさせないつもりッスけど。つーか、あんだけ楽しそうにテニスされると、バスケがしたくなる。私も大概、バスケ馬鹿っスね……。

「どーも。3―Dの五十嵐 鏡矢だよ。よろしくね、涼チャン」「まさかの名前呼びっ!?」

ちょっと、ウェーブのかかった黒髪の先輩が名乗る。下の名前で呼ばないでほしいんスけど!! 馴れ馴れしいし。顔に嫌そうな雰囲気が出たのだろうか?

「嫌なら…「イヤッスよ!!」…でもヤーメない」「酷っ」

赤沢の肩震えてるっスよ。笑い事じゃない。私は凄く譲歩した意見を出した。嫌だけど。

「…………じゃあ、チャン付けはやめて欲しいっス」「じゃあ、そうするね」

無駄に笑顔なことがむかつく。精神的にも疲れるっス……。

「オレ達も名前で呼んでね、涼」

「赤さ「勝ね」…勝って意外とあくど「ん?」――何でもないっス」

ん? と言った時の笑顔が眩しかった。赤沢って黒いんだ。ああ、だから月影は怒らせるなって言ったのか。主にリューセーのせいで、怖いの基準がおかしいのかもしれない。

「僕は円堂 俊。2―Aだ。相馬と一緒にダブルスをしている」

口調がリューセーなんだけど。ちょっと、懐かしいかもしれない。

「おれで最後っすね。1―Aの如月大輝っす。涼センパイよろしくっす」

「………もういいっスよ」

皆、下の名前で呼ぶようだ。去年みたいに苗字で呼んでもらった方が落ち着くのに……。だからって、皆には会いたくないけどね。

「でさ、これでどうする マネージャーの件は?」

……名乗りあったから、すること決定じゃないんスか!? まあ、やってもいいかな。隠れ蓑になるし。勿論、強い所の試合を見たいって気持ちの方が強いっスけど。

「んーと、……引き受けようかな」「ありがとう」

私がそういうと、赤沢はほっとしたように微笑んだ。じゃあ、また明日と言って解散した。

次の日は、疲労からか、寝坊して朝練に遅れかけた、とのみ言っておこう。



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