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S.C.S.   作者: 麗羅
~海王中バスケ部は最強です~
15/19

十四.テニス部帰れ!!

次の日の朝食後、テニス部も最終日の前日とだけあって、練習試合をするらしい。時間があったらバスケ部を見に行くねと赤沢に言われ、如月には応援に来て欲しいと言われた。私はそんな二人に、ユウに抱きつきながら答えた。

「たぶん、リューセーが許してくれないから無理っスよ」

「はい。竜王くんが許すとは思えません。あと、そろそろ降りて下さい。重いです」

「だよね」と笑いつつユウから離れると、如月はエーと叫ぶ。……五月蠅いっス。

「じゃあ、ボク達は先に行ってます。木村くん早くして下さいね。皆upして待ってますから」「片付け終わったら軽くupしていくっス」「伝えときます」「じゃ、後でね」

ユウは「ご馳走様でした」と言って、体育館に向かう一員に混じって見えなくなった。リューセーのことだ、四試合くらい午前中にやりそう。だからこその昨日の最後の一言になるんだろうっスけどね~。

………葉誠のカントクさん悪ノリしそうで嫌っスね。あの人マネージャーもしながら、監督もしてるから凄いだけど、悪ノリするのはやめて欲しいっス……。普通にスポーツドクターになるって言ってるって事はかっこいいのに…。

「リーくんもう行っていいよ?ドリンク位いつもと同じ量だし」「で、でも…」

「いいの。竜王くんもそう言ってたからupしておいでよ」「う、うん」

リューセーもそう言っていたなら逆らうのはよくない。マリっちにありがとうを言って、ボール持って、外のコートでupをする。

軽く準備運動をしてから、レイアップ一〇本、3P一五本、ダンク五本してドリブルなどの基本動作もする。部屋にボールを転がして、走って体育館に向かう。


「お待たせしたっス!!」リューセーはそんな私を一瞥してから全員を集めた。

「悠弥抜きの葉誠と海王で一試合目だ。以降はこのホワイトボードに書いておく。二〇分一試合で、ハーフタイムは五分。試合の間隔は二〇分おきだ」

と言って他に一年にタイマーなどを準備をさせるリューセーは変わんないなあ。


ボードを見てみると、九:〇〇~九:二五葉誠v.s.海王 九:四五~一〇:一〇秀央v.s. 海南 一〇:三〇~一〇:五五海南v.s.海王 一一:一五~一一:四〇秀央v.s. 海王 一一:五〇~練習(内容は各監督に任せる)となっていた。午後ヤバいな…。

ユウじゃないけど、死んじゃいそう。

そういう訳で、基本的に”オレ”達は試合なので水色のピブスを着ることになった。

”オレ”木村 涼は五番を、問題児ばかり(笑)の七宝をまとめる冷静沈着な主将であった竜王 蒼也は七番を、七宝エースで”オレ”の憧れ滝川 翔は四番を着る。3P をバンバン決めまくる副部長だった加賀 拓真は九番で、二mちょいある大きな子供な小田 翼は二番、パス回しが綺麗すぎるある意味達人の黒崎 佑弥は八番を着た。

”オレ”達、海王の七宝はマリっちも含め皆スポーツ推薦で高校に進めたので、中三のギリギリまで、いや卒業のその日までバスケ部に居座ってたしな…。結局、タッキーには一度も勝てなかったけど。本当に強すぎてむかつくッス。

「行くぞ」

やっぱ、リューセーが主将で良いっスね。ワクワクした気持ちすらも、リューセーの落ち着いた声でピシッと引き締まる。


「やあ、涼。調子はどう?」

只今一〇:〇七。目の前では秀央(タクも含む)と海南(タッキーを含む)が試合してる。”オレ”は審判のお手伝い。

でも、主審しようとしたら、葉誠の主将さんである緑川先輩に笛取られたんスよね。で、日向(○ひなた×ひゅうが)洸先輩(カントクさん)に「ほら、木村君…じゃなかった。木村ちゃんは得点宜しく」って得点版の横に座らされた。文句は聞きませんって感じで、私は諦めるしかなかった。そんな時に赤沢たちが現れた。

試合中とか姫川の取り巻きが煩くて、舌打ちしたいのをどれだけ抑えたと思ってるんスか!?とはいえない。本当に困るっス。因みに一試合目は海王が四二点で葉誠は三五点だった。

「うーん。普通っスっよ。ね、日向(カントク)さん」

「うーん。あれで普通と言われると困るんだけどな。だって、木村ちゃん。スピードとか柔軟性とか上がってるから、体力差、体格差とかの問題じゃなくなってるんだよね」

と言って、日向さんは隣でデータを取りながら苦笑した。そりゃ一人で努力しまくったもん。それで、皆に通用しないとか、本当に困る。

あ、タクがタッキーに止められた。おっしー、投げたボールもゴールポストに当たって跳ねる。

ビィイイ――

あ、ブザービーター。流石としか言えない。タクの相棒のすずむーがタクのボール拾って決めたんスよ。マリっちの手伝い行こ。ドリンクとか配るのくらいは手伝ってあげよう。

「日向さん。あとお願いするっス。マリっちのお手伝いしてくるんで」

「いいよ。分かった」

休憩中くらいは手伝わないと、この大人数だ。マリっちが疲れで倒れてしまうだろう。そんなの困るっス。

てな訳で、お手伝いをしてると一〇:二八になったので切り上げて準備する。姫川の取り巻きが、なんであいつ仕事してねーんだよと喚いているから、そっちに近づき一言ぼそっと「私、マネージャーじゃなくて選手っスよ?」といって、笑っといた。


< Side 洸>


「あいつが選手?何嘘ほざいてんだよ、あいつ」

木村ちゃんの事よく思ってないんだろう子が、後ろでグチグチ話している。いくら、後輩じゃないからって、聞いていて気持ちのいいものではない。七宝メンバーの溺愛ぶりから見て、末っ子の事、そんなに悪く言ったら怒ると思うんだけどなあ。

「そんな事ないよ。トップクラスばかりが集まってるこのメンバーでも群を抜く最強の六人のうちの一人だよ、木村ちゃんは」

「は?」「どういう事だ?」

「手前ら、先輩には敬語ぐれぇ使えや、ごらぁ。俺は三年だぞ」「「す、すんません!!」」

あ、つい本性が。ま、いいか。今まで後ろで悪口言ってた奴だし。僕だって、高一の頃は木村ちゃんには苦しめられてきたチームの監督だから、彼女の実力は痛いほどよく分かってる。

「すみません。涼の事、色々教えてくれませんか?」

「いいよ、君みたいな礼儀正しい子は好きだし。木村ちゃんは模倣(コピー)の王様なんだ」「王様?」「そこは気にしなくていいよ」

ま、今や少女だけど、いまだにその異名に恥じないプレーをする。健気だよね、自分の名に恥じないプレーをしようとする姿は。後輩だけど尊敬できる。才能に胡坐をかかない事は良い事だ。

「ほら、ごらん?今、木村ちゃんがボール持ったでしょ。相手は海南の主将さん、今泉くん」

その言葉に全員の視線が木村ちゃんへと視線を向ける。視線の先にはマークされつつも不敵に笑う木村ちゃん。右手でボールを床に着いて、軽く視線を巡らせてる。

次の瞬間、右側から抜こうと重心を傾ける。が、それを上手くディフェンスされその場で静止。

「駄目じゃねーか」「最後までしっかり見なよ」

誰かの呟きにしっかり反応してしまう。隣の彼は木村ちゃんから目を離さない。一瞬にして木村ちゃんは右側からマークを抜いた。


「えっ今、何が…」

狼狽えているテニス部諸君。やっぱり、七宝のプレーはいいな。なんか、選手じゃないけど僕もバスケがしたくなるなあ。でも、その前に説明してあげないとね…。

「木村ちゃんは右から左へとボールを股抜きしたんだ。で、左へ一瞬重心を傾けてフェイントしたの、分かった?そしてまた直ぐにボールを右に持ち替えてドリブル。最初のフェイントに引っかかった今泉くん抜いたんだ」

木村ちゃんは僕たちの話してる間にドリブルしてゴール前へ。その前には二宮の双子が立ちはだかった。けど、木村ちゃんは構わずシュートモーションに入りジャンプして放った。シュートは見事に二宮……弟かな、の手により弾かれる。が、木村ちゃんの口元には笑みが浮かんでる。

「さっすが、木村ちゃんだね。弾かれる角度まで計算してる」「ナイスパス」「とーぜん」

テニス部は何かよく分かんないみたいだけどね。

司(二宮弟)くんのはじいたボールは綺麗に滝川くんの手の中に入り、そのままシュート。ゴールネットを揺らすボールを背に二人はハイタッチした。


「もう嫌やわ~。こいつ何で手加減せーへんねん」とはいいつつ、今泉くんの口元は弧を描いている。やっぱ燃えるんだろうな。竜王くんの采配や、黒崎くんのパス回しなんかも加わって、そのまま海王中バスケ部の勝利でこの試合は幕を閉じた。因みに三七対四八で。後ろのメンバーも開いた口が塞がらなかったようだね。僕はくすっと笑って立ち上がった


<Side end>


「涼先輩すっげー!!」

試合が終わって、リューセーのお小言(まだ、修正できてないって言われたんスよ……)を聞いていると、さっきまで呆けてた如月たちが元に戻ってた。

「まだまだっスよ。もう!!いつになったら、私はタッキーの事、翔って呼べるんスか~」「一生無理じゃね」「酷っ!!絶対負かす」

ビシッとタッキーを指さすと、タッキーはガシガシと頭を撫でてくる。でも、乱暴って感じはしない。

「ま、頑張れよ。パス回しもユウとほとんど変わんねーし、上手くなってんだ。お前は進歩してんだからよ」「うん!!」

そう言うとタッキーはタクたちの方へと歩いて行った。

私はマリっちの方に駆け寄って、ドリンクとタオルをもらう。その時、マリっちは嬉しそうにこう言った。

「やっぱ、りーくん凄いね。女の子になっちゃったのに今までの試合と比べても、強いって印象受けるもん。言ってる程体力落ちてないよ」

「それ、今まで毎朝と放課後走ってて、体力戻らなかったら問題っスよ」

「そういうのじゃないよ。努力を続ける姿勢が好き」「……どうもっス」「ふふふ♪」

やべ、頬が赤くなるのを感じる。マリっち、突然不意打ちはないっスよ~。楽しそうなマリっちの手伝いをしながら、時間は刻一刻と過ぎ去って、私は昼の準備の時間となったのでマリっちにそれだけを告げて、キッチンに向かった。



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