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S.C.S.   作者: 麗羅
~海王中バスケ部は最強です~
14/19

十三.テニス部ってこれで大丈夫なんスか?

「これから一五分休憩」「はぁ――――――っ」

先程まで熱気に包まれていた体育館は窓やドアが全開にされて幾分かマシになった。昔はたったこれだけの練習でバテなかったのに……!女子になったことがむかつく。せっかく鍛えたのに!!男女ってこう所が不便だ。

「おい、木村。大丈夫かよ」

タッキーが笑い混じりに聞いてくる。そんなの勿論……

「平気ッス!!それよりタッキー!一 on 一しよ!!」

まあ、他のメンバー達に比べれば一時間は仕事でとられたのですぐに回復した。タッキーが早いのは仕方ない。昔から体力が有り余っているから、気にしたら負けッスもん。周りからは、あいつらなんで元気なんだよっ!!と言わんばかりの目線が集まる。

どんだけリューセーに、七宝メンバーが、シバかれてきたと思ってるんスか。約三年もシバかれたんだ。ユウ以外は基礎体力は高校に上がる前からしっかりと仕上がっていた。


約三年間ずっとタッキーと部活後に一 on 一やりまくったから(未だに連敗記録更新中ッスけどね)、互いの手の内は結構ばれてる。

けど、今回は”オレ”が女子になるというイレギュラーなことが起きた。勝てないかもしれないけど、パワーが落ちた分スピード、技術面をあげたからどれだけ通用するか試したい。女子の柔軟性も発揮できたらいいっスね。


タッキーは目の前でダム、ダム、、、とボールをつく。右に行くか左に行くか、はたまたいきなり奇襲(シュート)するか、片時も目が離せない。一挙一動を見逃したら”オレ”の勝ちは無い。

ダム、ダムと弾むボールの音に”オレ”の口角は上がり、それを見たタッキーもにやりと笑う。その時、フッとタッキーは足を踏み出した。風が吹く。

右にタッキーは進みだし、”オレ”も少し遅れて動くが、ついて行くのに支障は無い。レッグスルーして抜こうとしたけど、そうは問屋が卸さない。”オレ”は、鮫に張り付く小判鮫のようにぴったりと片時も離れないようにマークにつく。その時、タッキーは後ろ手でボールを放った。”オレ”は急いで飛ぶが、ボールは手に掠りもせずにゴールへと飛んでいた。


「あーもうっ!身長が縮んでたの忘れてたっス~」

もうちょっと高く、速く飛んでたらボールの軌道を変えられていた。そこが悔しい。その時リューセーが口を開いた。

「涼、自分のプレイスタイル変えろ」「え、でも……」

いくらリューセーの意見でも長年のスタイルは変えたく無い。っていうか、染み込んでてそんな簡単には変えられない。

「なら、二日で修正しろ」「了解っス!!」

”オレ”のにやっと笑った顔を見て、リューセーは口角をあげて離れていった。

因みに、再び”オレ”の教育係に任命されたユウは、昔から体力が無いので(実際線も食も細い)さっきからバテてる。正直、今の”オレ”に教育係なんていらないけど、テニス部を納得させるためには仕方ないかと思って、今は諦めてるんス。

ま、本人も体力ないの気にしてるし、どうにかならないと思うんスけどね。あ、でも、ユウのパス回しとドリブルだけはピカイチっスよ。シュートは・・・・・・ユウの名誉のために何も言わないでおくっスけど。


「りーくん!そろそろ行こっ!」「行ってこい。昼までにメニューは作っておく」

「了解っス!!」

リューセーっていう心強い味方がいるから、本当に二日で修正できるんだろうな…。マリっちと一緒に食堂に急いだ。

「お昼なんにするの?」「ん~と、そっスね・・・・・・ん~」

昼は洋食でいいかな。でも、オムライスとかは家ならともかく、ここで作るの面倒臭いしな。「りーくんが作りやすいのでいいよ」ってマリっちは言うけどその方が面倒くさいんスよね~。特に人数多いし、テニス部は昼だけ弁当だから別にいいけどさ。

「もういっか、マリっち。クラブサンドにしよ」「それでいいの?」

「文句は一切無視っス」

マリっちは私のきっぱりとした口調で笑った。だって、いちいち何が食べたいかとか聞くの面倒臭いし、人数多いからって料理に手間かけて練習できないのもいやっスもん。そう言うとあぁ、ってマリっちは苦笑いを浮かべる。

夕食を豪華にしたら文句は言わないはずっスもん。リューセーとかに苦笑されそうっスけど。ま、私一人に任せるから悪いんスよ。皆はどうせ、質より量ッスもん。リューセーとかは除いて。

と言うわけで、昼は4種類のサンドイッチとサラダ(初日のドレッシング作りすぎたんスよね・・・・・・)になり、夕食の下拵えと、ドリンクの準備もして私たちはキッチンから出た。


その後、昼休みに入ったバスケ部員一同は、サンドイッチだったことに文句も言わず、ぺろっと平らげて束の間の休息を楽しんでた。リューセーは有言実行、とばかりに特製メニューを練習しながら作ってくれたそうっス。感謝はしてるっスけど、なんかすっげー嫌な予感がする。

テニス部とはあまり接触しなくていいから、こちらとしてもすっげー気が楽だ。姫川の周りにいる奴と会わなくていいって事が嬉しい。ブーブー言ってくるのを聞いてたら、ユウや相田先輩じゃ無いけど、顔面に……体に思いっきりボールぶつけたい。

それはさておき、リューセーの鬼メニューする前に、夕食の準備しないと絶対へばる。って事で、マリっちと片付けるついでに下拵えとかはしておく。こういうのがやっぱり大事っスよ。ハンバーグに、カボチャのスープ、ライスとサラダにしよ。手抜きなんて言わせないっスよ!!マリっちと笑いながら下準備をした。んーと、テニス部のドリンクとか、しっかり姫川はしてんのかな~?私には関係ないっスけどね~~。


練習後、五時になって解放された私は、ヘロヘロになりながらキッチンに向かう。やっぱり、リューセーの鬼メニューはキツイや……。準備してて本当によかった。片付けを済ませた調理台に倒れ込んで目を閉じた。


ふっと目を覚ますと、タオルケットが掛けられていた。え?誰が掛けたんだろ?マリっちかな?起こしてくれればよかったのに……。掛けられてたタオルケットを畳んで、私は足早にキッチンに向かった。


食堂に着くとなんかしーんとしていて気持ち悪い。いつもワイワイしてたのが嘘のようだ。え?食べ始めてないの?マリっちが入り口付近にいたので声を掛ける。

「マリっちっ!何で起こしてくれなかったんスか!いくら久々のリューセーのスパルタメニューでへばってたからって、酷いっス!!」

マリッチは苦笑して私を見る。リューセーってば、何であんなに”オレ”の出来るギリギリまで体を酷使するメニューができるんスか……。文句は言えないけどさ。

「それやったの僕です。杉原さんは起こそうとしてたんですけどね」

ユウがそう言う。ユウに言われては怒れない。マリっちにも怒れないけど。

「・・・・・・ユウのバーカ、心配しすぎっスよ」

小声でぼそっと言うと、聞こえていた二人は笑って顔を見合わせた。

「ほら、席に着いて下さい。皆待ってますよ」「分かってるっス……」

頂きますの前に、リューセーが明日の午前は練習試合をするって言った。しかも、七宝メンバーで組んでするらしい。久しぶり(と言っても約二年ぶり)にみんなと出来るんだ。私は柄にも無くわくわくした。

皆は夕食を食べ終わると、風呂や娯楽室、外のコートに向かった人もいた。私は疲れたから今日は遠慮したスけどね。リューセーは食堂を出るとき"オレ"の耳元で「明日は覚悟しとけ」と囁いてから出て行った。ちょっと悪寒がして背中がぞくりとした。

明日は絶対こき使われるっスね……。それで済めばいいけど。けれど、私の心の八割位は楽しみだ。(残りは不安であるんスけど)



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