第7話~シルフィアの護衛~
僕はシルフィアと、途中で襲い掛かってくるノライム系統のモンスターを斬りながら町へと歩いていた。
そんな中、彼女と話していくうちに思ったのだけれど、本当に普通の魔法師なのかなぁ?と疑問に思った。
何故疑問に思ったのか?というのは、彼女がギルドで見た冒険者や魔法師とは比べ物にならないくらい上品だからだ。
まぁ魔法師として援護してくれるし、別に問題ではないけどね。
「そういえば、そらくんはいつから冒険者をやっているのですか?」
「昨日からだよ」
「そうなんですか。どうして冒険者なんかに?」
「それはちょっと言えませんね」
うん。
さすがに勇者として召喚されたけど捨てられた。
とは言えないね。
「そうですか・・・」
そういえばさっき魔法師です。って言ったよね。
「あの、お願いがあるんですけど・・・」
「なんですか?」
「よかったら魔法を教えてくれませんか?」
「えっ!?」
なんかすごいびっくりされた。どうしてだろうか?
「別にいいですけど・・・教えられることはないと思いますよ」
何を言っているんだ?
こっちは魔法のまの字くらいしか知らないんだぞ。
「そんなことないですよ。だってまだ魔法を覚え始めてから数時間しかたっていないですし」
「ほんとうですか!?」
またシルフィアにびっくりされた。
「あの、どうしてそんなに驚かれるんですか?」
「えっと~、そらくんは貴族じゃないんですか?」
なんで?
そんな楽な生活できるならこんなことするわけがないじゃないか。
「全く関係ないですけど・・・」
「じゃあどうして敬語を使えるんですか?」
「え?それは・・・」
異世界で習ったとは言えないしな・・・
「それに、冒険者を初めて2日でそんなに動けるのも変ですよ。貴族で家庭教師に戦い方を習っていたっていうならまだわかりますけど・・・」
さっきからの質問で分かってきたが、シルフィアは僕を警戒しているらしい。
まあ
ここまで変わった冒険者を警戒しない人はいないと思うけど・・・
「えっと・・・じゃあ教えてはくれないんですか?」
「いえ、別にそういうわけではないですよ。」
「よかったぁ」
OKをもらえたみたいだ。
結構嬉しかった。
だってせっかく魔法を教えてもらえるチャンスなんだよ。
「そろそろ着きますね。ギルドはどこにありますか?」
「門の中に入ってすぐのところにあるよ。」
そういうと僕は門の奥の大きな建物を指差した。
「あれですね!」
そういうとシルフィアはギルドへとかけていった。
◇ ◇ ◇ ◇
ギルドへ着くとシルフィアは銀貨2,30枚をギルド倉庫から出した。
「それでは宿を取りに行きましょう。」
そういうとギルドの近くにある宿に入って、一室を借りた。
どうやら部屋が2つとリビングのあるタイプも貸している大きめの宿のようだ。
そして彼女はその大きめのタイプを借りていた。
僕が安い部屋を買おうとすると。
「同じでいいですよ」
と言われた。
僕の部屋代が浮くみたいだ。
「ありがとう。シルフィア」
素直に感謝しておこう。
「いえいえ、町へ連れてきてくれたお礼です。」
彼女はとてもいい人だと僕は思った。
「そういえばそらくんは聖フィローネ王国出身ですか?」
「ちがうよ。ここに来たのは3日前だよ」
そう答えると、シルフィアは真剣な顔をして、
「そらくん。しばらく護衛の仕事をしてもらえませんか?」
そんな内容を頼み込んできた。
「・・・僕にできるものならいいですよ。」
そう答えると彼女は、
「その答え方に安心しました。即答していたらやめていたところです。」
とほっとしたように答えた。
考えて答えて正解だったみたいだ。
だけど・・・なんで?
ていうか、
「なんでぼくなんですか?」
「それは、私が空から落下してきたときに助けてくれただけでなく、ここまで案内してくれたからです。」
どうやら、助けるだけだと思っていたらしい。
「あと、冒険者がすべていい人とは限らない中、冒険者で今知っているのはそらくんだけです。
他の人にはあまり安心して護衛を頼めないんです。」
つまり信頼できる人が僕以外にいないということか・・・
「僕で良ければ構いませんよ。」
「じゃあ護衛をしばらくの間お願いしますね。」
「はい」
これで頼み事は終わりかな?
「えっと護衛をしてもらうわけですし、少し私の事情をお話ししますね。」
そういうと、シルフィアは話しだした。
「えーとですね。
私はセントリア皇国にある貴族の長女です。
私の家には継承権というものがあります。
私は2番目でした。」
・・・えーと、シルフィアは貴族の家の長女で、家の継承権が2番目だったと・・・
やっぱりシルフィアは貴族だったのか。
「一番目は兄であるシルドです。
兄様は人が良く跡継ぎはほとんど兄様で確定でした。
一応二番目は第一継承権の人が何かあったときのために、それなりの便宜は図ってもらえるのですが、三番目以降は基本的に他の貴族のところなどへ嫁いだりするのです。
・・・2番目である私は女の子だということで、3番目の弟のバルダには、資格がないと反感を買われていました。
家が最近忙しかったのですが、その忙しい時をねらったバルダが転移魔方陣を私に仕掛けてきました。
私がどこか見知らぬ土地へ行けばすぐに死んでしまうだろう。
そう考えたんだと思います。
その魔法陣にまんまと引っかかった私は、聖フィローネ王国の空に転移されました。
その後はあなたの知る通りです。」
それに不満があった次男バルダに転移させられたっていうことか・・・
「えーと状況は分かったのですが・・・」
「どこまで護衛すればいいか?ということですよね。よければセントリア皇国まで護衛してもらいたいのですが・・・」
「分かったよ、シルフィア。今は特にすることもないし、最後までやりますよ。」
「ありがとうございます。」
「これからお願いしますね。」
「こちらこそ。よろしくお願いいたします。」
二人の間でのやり取りが終わった。
シルフィアはふと思いついたかのような顔をすると
「そういえばそらくんは何歳なんですか?」
「今年で14になります。シルフィアは?」
「私も今年で14歳になります。同い年ですね!」
笑顔で彼女はそう答えた。
可愛いなぁと思った。
ただ、年上だと思っていた分、少し動揺した。
だから
「じゃ、じゃあ僕は寝ますね。疲れたし。」
「わかりました。明日から教えますね。魔法を」
「ありがとう。それじゃあお休み。」
慌てて寝ることにした。
ただ疲れていたのは事実だったみたいで、僕はそのまますぐに眠りついた。
◇ ◇ ◇ ◇
シルフィアは自分のやったことにびっくりしていた。
いきなり転移させられて、そんな時に出会ったそらくんが、森林から町まで送ってくれて、信頼をしてしまったのはわかっている。
でも、いきなり護衛まで頼んでしまったのは、ちょっと都合がよすぎるかなっと思っていた。
それに対し彼はいいよ。と快く頼まれた。
彼は、他の冒険者のようにお金のことだけを考えているわけでもなく、いやらしいことをしようと狙っているわけでもなく、落ち着いている一流の貴族みたいだった。
しかも誇り高いこともなく、話しやすかった。
見た目は、幼さの残るかっこいい少年だった。
私よりも年下なのかな?
と思って、年齢を聞いてみた。
すると同い年だということも分かった。
だからなのだろうか?
とても好印象を十三束 空に持った。
それとは別に、私は彼を警戒しているとも思う。
その理由が、貴族でもなく、戦士などとして、何か月も戦っていたたことがあるわけでもないというのに、冒険者として2日でCランクに達しているからだ。
彼が言ったことがおそらく真実だとは思う。
だからこそ、彼がどういう人間なのか?
分かりきったわけではないからこそ、警戒してしまうのだと私は思う。
勇者だったら可能なんだろうな・・・とは思っているが、まさか勇者なわけではないし、そんなんだったらまずこんなところにはいないと思った。
実際は十三束 空が勇者だということが真実だとも知らずに・・・。
シルフィアは、とりあえず信じてみるつもりだけれど、どんな人かをまだ見る必要があると思った。
◇ ◇ ◇ ◇
翌朝
僕は日の出前に起きた。
その理由は、まだ冒険者に慣れたわけでもなく、まだまだ戦いに慣れていないから、素振りなどのトレーニングをしようと思ったからだ。
「はあああぁぁぁ!」
この前の青ドライムを思い出してイメージトレーニングをしていた。
『思考加速』を使わないと、全然双小剣の動きに慣れていないぶん、バランスを崩したりして、安定して戦えてはいなかった。
ただ、1番最初の頃のただ何となく振り回す時よりは、我流とはいえ、随分としっかりしてきた気がする。
「たああぁぁ!」
「いやっ!!」
「ってい!!!」
30分くらいして、息も切れ切れになった僕は、少し休憩をした。
宿でお茶を飲んだら、今度は魔法の練習をすることにした。
いろいろな魔法をやってみたが、水魔法しかできなかった。
しかも、攻撃魔法のみである。
僕の特徴なのだろうか?
あとでシルフィアに聞こうと思う。
MP回復のために休憩を繰り返しながら、今できる魔法をそれぞれ20回ほど練習した。
放ち終わったし、ぼくは宿の自室へ向かった。
自室で僕は、運動して汗をかいたし、お風呂に入ろうと思った。
・・・そういえばこの世界にも、お風呂というのはあるようだ。
ぼくはのんきにどのくらいの温度かなぁと思いながら脱衣所のドアを開けた。
!?
目の前を見るとお風呂に入っていたシルフィアが、ちょうどお風呂から脱衣所への扉を開けて出てきたところだった。
一糸纏わぬ姿のシルフィアは、初めて会ったときから美少女だと思ったが、やっぱりとてもきれいだなぁと思った。
僕には基準が分からないが、クラスメイトと比べたら胸があるほうなのかなぁと、のんきにも思った。
まあ実際クラスメイトのを見たことはないし、あまり気にすることだとは思わなかったけど。
顔を真っ赤にして胸を隠した彼女は
「きゃぁぁぁあああ!!!」
と、叫びながら彼女は初級電撃魔法『エレキショック』を放ってきた。
「あ・・・れ・・・」
バタリ!
僕はその時に初めて、シルフィアは怖いなぁ。
と思った。
「エッチ!バカ!!」
そんな声が聞こえた気がした。
親が過保護だったせいで、空はそういう知識には疎かった。
だから、
なにがいけなかったのか。
どうして恥ずかしがったのか。
そのときの空にはわからなかった。
顔をリンゴみたいに真っ赤にしたシルフィアが可愛いかったなぁ。
と、何の問題もなく、頭の中で思っていたくらいだった。