第5話~勇者 装備を買う~
「ちいっ」
青ノライムが体にまとわりついて安定して戦えない。
「はぁあ!」
前方の青ノライムを吹っ飛ばした。
ボフン。
しかし、すぐに埋もれる。
「くそっ。きりがないな!」
もうすでに10分以上は戦っているのに。敵が減った気がしないや。
「きゃう!」
「まだまだぁ!」
ガキン!
「っきゃう!?」
ボフン
双小剣『夜空』を手に入れました。
見ている暇なんてないんだ!こっちは!!
「えいやぁー!」
ガキン!パラパラッ
っな!?
ブロンズダガーが粉々に壊れた。
「くそぉ!こうなったら!」
『夜空』を装備します。
ぱああぁぁぁ
そんな音とともに僕の手に青紫色の小太刀が両手に1本ずつ現れた。
「まだいける!」
ザシュ!
青ノライム数匹を同時に一刀両断した。かなりの威力だ。
「いやっ!」
また2.3匹。
「ぎゃおぉぉぉーーー!!!」
青ドライムが急に叫んだ。
その時周りにいた青ノライム全てが青ドライムに・・・
「吸収されたのか!?」
1回り大きくなった。
ステータスを見てみる。
青ドライム
Lv 42
なんだと!Lv35前後だったのに・・・
吸収した結果。Lvが上がったのか!
「くっそぉぉぉぉーーーーー!!!」
キィィン。
こうなったら!『思考加速』!!
相手の動きが少し遅く見えるようになった。
カシュッ!
カキン!!
強くなった分、防御力が上がったのか、青ドライムが少し硬くなっていた。
でも、こっちは攻撃力だけなら、なみのCランク冒険者じゃないんだ!互角には戦えるはず。
「ぎゃおおおぉぉぉ!」
「うおおおおぉぉぉ!」
ギイィィ!
青ドライムの体当たりと僕の『夜空』がぶつかりあうと、互いに後方へ下がった。
「まだやれる!」
僕は青ノライムに向かって思いっきり剣を突き刺した。
「ぎゅお!」
余裕のありそうな鳴き声の後、
僕は思いっきり吹っ飛ばされた。
「ぐはぁっ」
肺から空気が出された。苦しい。まだ、戦うのが日常の世界に2日しかいないんだ。痛みに慣れているわけがない。正直死にそうだ。
ーもう死んでしまうのか・・・?
双剣系スキル『ダブルスラッシュ』を習得しました。
諦めかけたとき、一つのスキルを覚えた。まるで、まだやれるとでも言わんばかりに、新たなスキルを覚えた。本当に使えるかは正直言って信じられない。けど、もう何回も信じられないことにあったんだ。信じてみる価値は・・・ある!
「いっけぇーーー『ダブルスラッシュ』!!!」
刀身が赤色に輝きだした。
「ぎゃおおぉぉぉ!!!」
まずは右手を左上段から右下段に向かって切りつけた。
ガキン!
次に切ったときの回転力を活かしてそのまま左手で左下から右上段へもう一度切りつけた。
ザシュッ!!
バタン!
青ドライムを倒しました。
空は3240Expを手に入れました。
空はLv31になりました。
「はぁぁ、はぁぁ、はぁ。やったぁ。やっと・・・終わっ・・た。」
その場に僕は倒れこんだ。
あたりには青ノライムは、いないようだ。よかった。やっとまともに休める。そうだ!今のステータスを確認しておこう。
十三束 空
称号 C級冒険者
Lv 31
HP 220/360
MP 400/460
物理攻撃力 520
魔法攻撃力 520
物理防御力 210
魔法防御力 210
素早さ 360
装備 Yシャツ 制服のズボン 『夜空(双剣)』
銀貨 24枚
銅貨 60枚
青ドライムの尻尾 1個
青ノライムの尻尾 112個
こんな感じになった。
やっと、称号が捨てられ勇者じゃなくなった。同時に勇者じゃなくなったみたいだけどまあいっか。
・・・そもそも、別に勇者になりたかったわけじゃあないしね。
とりあえず今分かったことは、
1つ目が、攻撃スキル(双剣系)はMPを消費して使う。この世界のMPは、きっとゲームのSPとMPを合わせたものなんだろう。
2つ目に、MPは10秒に1度1割のMPを回復することがわかった。これは、レベルが上がれば上がるほど便利にもなるだろう。
そして3つ目。双小剣は双剣のスキルが使える。双剣と双小剣の違いは、おそらく刃渡りなんかの違いだけという扱いなんだろうな。
だいたい分かったのはこの3つだ。
緊迫した戦闘をやったし、独自流ではあるが戦い方を覚えた。そのうち、双剣系統の戦い方と、魔法について、誰かに教得えてもらおうと思った。少なくとも今のままじゃあ、安定感に欠けるだけでなく、せっかくの攻撃力が台無しななってしまう。活かせるものはとことん活かせるようにならないと。
とりあえずは疲れたし、一端町に戻ってギルドへ行こう。そして、クエスト終了受付をして報酬をもらおう。
そう考えながら僕は町へと向かって行った。
◇ ◇
「こっこんなにたくさん。しかも青ドライムの尻尾まで!すごいですね!!報酬があがりますよ。」
「そうですか?まあ、ありがとうございます。」
そういうと係りのお姉さんは後ろの棚へ行くと・・・銀貨5枚と装備一式をくれた。
「これは・・・?」
「C級冒険者向け、軽量装備一式です。とても軽いので着ても邪魔にはならないと思います。」
「ありがとうございます。」
「またのご利用をお待ちしています。」
いいものを手に入れた。この服だけじゃ危ないなぁと思っていたところだしな、とりあえず報酬ももらったし、昼食を食べたら普通の服とかを少し買いにいこうかな。
僕はそんなことを思いながらギルドをあとにしようと・・・。
「お、あんたは新米冒険者じゃないか。」
・・・いいところだったのに!やっとお昼食べれると思ったのに!!
「あ・朝はどうも。」
「いいってことよ。で、無事にクエストを終えたようだね。何匹狩ったんだい?」
「誰かさんがあんなこと言ったせいで・・・およそ100匹の青ノライムと一匹の青ドライムと戦う羽目になりましたよ!」
「いいってことよ。それにしても・・・【あの】青ドライムを倒したとはねえ。」
くそっ皮肉が聞いてない。それに
「【あの】とはどういう意味なんですか?」
「ああ、青ドライムは実はBランク相当のモンスターでね。ひと月に1度いくつかの群れを束ねるから、Cランク冒険者の討伐レベルじゃあないんだよ。それにしてもあんた強いねぇ」
な・ん・だ・と・!?
「聞いてないですよ!そんな話、少し厄介としか言ってなかったじゃないですか!!こっちは死にかけたんですよ!!!」
「悪い、悪い、初心者でCランクになった冒険者である君がどんなものか気になってね。試させてもらったよ。」
「ひどいですよ。そんなの!」
「すまないとは思っているさ。だから今あんたにヒントをやろうと考えているんじゃないか。あの戦いから、より強くなるために必要なことをひとつね。」
ヒ、ヒント。ってこんなんで許してたまるか。
「そ・そんなんでは許しませんよ。」
「まあいいじゃないか心は広く持ちなさいな。」
そういうと真剣そうなめになった。
「じゃあ、戦い方だけれど、スタイル自体はいいね。あのまま伸ばしていけば問題ないだろう。ただ、今回みたいな対多数戦のときに戦闘を安定させるため、魔法などを覚える必要があるね。」
「戦闘が安定しないってことは僕も思いましたよ。ただ、僕は読み書きができないんで、いわゆる魔法書の類が読めないんですよ。」
ちょっとびっくりしたような表情をされた。
「冒険者とは言えないくらい敬語が使えるのにかい?貴族とかじゃあないのかい?」
「別に貴族とかじゃぁ全然ありませんよ。」
ムッ・・・人をなんだと思っているんだ。そんなんだったら冒険者にならずにだらだら暮らしたいですよ。たくっ
「まあ、文法とかはわかっているみたいだし、あとで読み方の表を書いてきてやるよ。そのかわし、魔法書は自力で手に入れてきな。本屋さんにあるよ。ちょっとばかし高いけどね。」
「わかりました。じゃあ1時間くらい経ったら戻ってきます。」
そういえば名前はなんていうんだろう?
「そういえば何て名前なんですか?」
「あたしかい?あたしぁリンダだ。覚えておきな。そっちこそなんていうんだい。」
「とみつか そら、十三束 空です。」
「わかった。じゃああとで会おうじゃないか。」
「わかりました。それでは失礼します。」
◇ ◇ ◇ ◇
はぁ・・・
やっと昼食にありつける。
「いらっしゃいませ!ご注文は?」
「日替わり定食を一つください。」
「ありがとうございます。」
出てきたのは、ラーメンによく似た食べ物だった。
「いただきまーす♪」
ズズゥー
焼き魚じゃないけど、また塩味のスープだった。でも、スープか、味付けかではやっぱり違うから飽きはしないと思う。それに、ここの定食はおいしいみたいだし。しばらくここのお店で食事でもとろうかと思うほどだった。
「ご馳走様でした」
「ありがとうございましたー!」
ガランガラン♪
さて次は服を買いにいかないと。どこがいいかな?っお!あそこの服、日本のジャージに似ている。見た目は、動きやすそうだ。よってみようかな。
「いらっしゃいませ。ナナクサ呉服店へようこそ。」
「あのーあそこにある服は試着できますか?」
「はい。」
ためしにジャージもどきを着てみた。ジャージよりは厚いし暖かいが動きやすいことには、変わらなさそうだ。
「この服はいくらですか?」
「白色トレーニングシャツと白色トレーニングズボンですね。銀貨2枚になります。」
ジャージではなく、トレーニングシャツとトレーニングズボンというそうだ。白基調の青いストライプが入ったデザインだ。シンプルだがジャージらしいといえばそうかな。ジャージとの違いは、チャックじゃなくてボタンだってことかな。これは技術の差とでもいえばいいのだろうか。
「じゃあ買います。」
「ありがとうございます!」
このほかにも、動きやすそうな革靴。ホコリ対策の水色のスカーフ、そして下着を何枚かを買った。
「着替えられますか?」
「あそこに着替え室がありますよ。どうぞー!」
「ありがとうございます。」
そういうわけで今買った服一式と、ギルドでもらった軽量防具。たとえば魔法で編んだ。ブラックウインドコート。軽く、固いミスリル胸当てなどを今着ている結構古びた制服とを丸ごと着替えた。
そういえば、ギルドに入会したときに、Cランクマジックバッグをもらった。1000グラン(10㎏ぐらい)の重さになるまで大きさを問わず入れることができるバックで、重さはどんなに入れても20グラン(200g)以上にはならない。出すときは、バッグの出し入れ口に手を入れて、出したいものを頭に浮かべれば中身を出すことができるそうだ。例外として、武器を装着する場合だけは、念じるだけでできるように設定されている。青ドライム戦の時のように、戦闘中に武器が壊れたことが原因で死んでしまうことがないようにするための処置なんだそうだ。
さて、着替えも終わったし、本屋さんへ行って魔法の書でも買いに行こうかな。
「ありがとうございました!」
「またのご来店おまちしてま~す。」
僕は、さっそく近くに見える本屋さんへ向かった。
次のお話は日曜日です。
今回、勇者の称号がなくなりましたが、いずれ勇者に戻る予定です。一応タイトルは裏切りません。






