第10話~ホワイトウルフ狩り・中編~
狩りだ!
ノリノリのエイミィです。
何かを始める前に感じる勘。それも悪い方の勘はよく当たるものである。
「うわああぁぁぁ!!!」
「きゃーw」
狩りを始める前に悪い予感を空が感じてしまったがために、(まぁ、そらが感じていなくても起きたかもしれないが・・・)楽しい?イベントが発生してしまった。
◇ ◇ ◇ ◇
話は遡ること少し前
そらたちはそれはそれは順調にホワイトウルフ狩りを行っていた。
「遊撃の勇者が命じる~」
「いっけぇえ!『ダブルサーキュラー』」
スパパーン
ホワイトウルフ2体の頭が切断されて血飛沫が上がる。
そらは返り血を浴びても気にせずにサイドステップをして、倒れた2体を飛び越えてきた3匹の『ホワイトウルフ』の体当たりを躱す。
「『ウインドスラッシュ』」
タイミング良く詠唱し終わったエイミィが放った風の刃で3匹の『ホワイトウルフ』がズタズタに引き裂からる。
「これで62体だね。」
「うん!」
ちょうどその時に事は起こった。
「ワオオオオォォォォォン!!!」
雄叫びが前方から聞こえてきた。
それもとてつもなく大きな雄叫びの声がした。
近づいてきてるのがすぐにわかるくらい。
「あのさぁ。」
「なに?」
「これってさ。」
「うん?」
「リビヤ森林の主って言われてる『ホワイトパンサー』の雄叫びじゃないかな・・・」
「怒ってたね。」
「狩りすぎたんじゃないかな・・・」
『ホワイトウルフ』が大量発生していて倒さなくちゃ町にまで影響が出るのはので、いつもよりも狩っているのは事実である。それでも普段のまだ1.5倍近くの『ホワイトウルフ』がいるので狩らなくちゃいけないのだけれど。
「「「ワオオオオォォォォォン!!!」」」
後ろを振り向くと明らかに怒っていそうな『ホワイトパンサー』がいた。
「怒っているときの『ホワイトパンサー』にだけは気をつけろ。」
そういわれる存在が3匹もいた。
「・・・どうする。」
「一回攻撃してみる?」
「ちょっ!?まっ」
「遊撃の勇者が命じる~」
まずい。止めなくてはそう思って口をふさいだ結果。
魔法が暴発して運悪く『ホワイトパンサー』にぶつかった。
「「あ・・・」」
「「「ガルルルゥア!」」」
「うわああぁぁぁ!!!」
「きゃーw」
◇ ◇ ◇ ◇
「だから調子に乗るなって言ったじゃん!」
「えへへ♪それほどでも」
「褒めてないから!」
ホントに褒められたと感じているのかエイミィは頬を赤く染めている。しかも、後ろから氷弾が飛来して来るのを振り向きもせずに躱しながらである。余裕綽々とやっていることからエイミィの戦闘慣れがうかがえる。
・・・もうやだ!こいつ。
そう心で嘆きつつも、エイミィよりは必死そうな表情で逃げている。必死そうな表情をしつつも、エイミィと同様に後ろを見ずにぎりぎりのタイミングで氷弾を躱しているそらも、傍から見たら『何あいつ!?』と驚愕される身のこなしなのだが、むなしくも比較対象がエイミィなので、その事実にそらは気付いていない。
「よっと。まぁ、楽しむしかないでしょ?」
「首傾げてるばぁっ・・・あっぶな!?」
「じゃあそろそろ反撃といこうか!」
「この状況で!?」
「へーきへーき『バーニングバレッド』」
魔法名を唱えただけでエイミィの周りに幾つもの弾丸の形をした炎が形成される。
後方へ向かってタイミングをずらしながら狙っていく。
「これって・・・詠唱短縮!?」
「正解!最近使えるようになったんだ!」
同じ魔法を何度も何度も使い続け、イメージする力が向上してくると詠唱せずとも魔法を放てるといわれている無詠唱というものがあるが、実際に無詠唱で魔法を発動できるものは指で数えられる程しかいないと言われている。そのことからも分かるようにそんな難しいことができるのは汗水たらすほどに努力した天才だけである。
実戦で通常詠唱をのんびりと唱えるわけにもいかないので、上級の魔法師達が考案したのが詠唱短縮である。無詠唱程の速さはないがそれでも通常詠唱の4分の1程度の時間で発動することができる方法だ。これができるかどうかが上級魔法師と中級魔法師の差と言われているほどに実力差が出る技術だ。
「これで上級魔法師の仲間入りだよ!」
「勇者じゃなかったの?」
「え?遊撃の勇者は一応魔法師の勇者だよ?」
「そういうもんなのかな。」
そういっている間に1体が僕たちを飛び越えて目前に来ると、強靭な爪で僕たちに向かって襲い掛かってきた。一旦は躱すがすぐに2撃目、3撃目と連続してかかってくる。さらに、それに加えて後方の2匹も迫っている。
「エイミィ!僕が突きを放つから駆け抜けて前へ!」
「前に行ったら魔法を放つからちょっと持ちこたえてて。」
「了解!『ツインストライク』」
ガキィィン!
状況を打開しようとそらは勢いを込めてスキルを放つ。しかし爪によって軌道を僅かに逸らされて攻撃を当てるにはならなかった。一番の目的はエイミィを前へと行かせるためであり、エイミィは約束通り前へ行って魔法詠唱の準備に入っている。
「結構賢いんだね。でもこっちだって負けないよ!『クオドルプルスラッシュ』」
キィン!ガキン!
キィィイイ!
剣と爪がぶつかり合い、火花が何度もあがるが互いに相手への直接攻撃はできずにいた。
「まだまだぁ『ダブルサーキュラー』」
今度も4連撃のうち3回は弾きあうが、4撃目、互いに相手を攻撃しあった。
ザシュッ!
スッ!
『ホワイトパンサー』は前足を少し斬られ、そらは頬を切られた。
「いくよ!『ミラージュエリア』」
エイミィの声に合わせて10メートル四方の認識疎外の結界が展開される。
前後左右も相手がどこにいるかもが分からなくなった『ホワイトパンサー』達が右往左往し始めた。
「今だ!『ヒーリングベル』」
『ホワイトパンサー』3体のうち2体が魔法にかかり大人しくなる。
しかし残りの1体には効かなかった。
「なんで!?」
「1匹なら僕たちで倒そう!」
「うん。分かった!」
再びそらは『ホワイトパンサー』へ向かって
「今度こそ!『ツインストライク』」
スキルを放った。
「ガルルアア!」
ガキィン!
漆黒の剣と純白の爪が交差した。




