第12話~エルフの集落②~
翌朝
目が覚めて起きたが二人とも寝ていたので僕は少し散歩しようと思い小屋から出た。
エルフは早起きな人が多いみたいで自分の家のそばでまきを割ったり、朝食の下準備をしたりなど朝からあわただしく動いていた。
元の世界では、起きるのが学校に行く30分前と比較的普通な時間に起きてはいたが、こんなに多くの人が外で何かを朝からしているのはあまり見たことがなかった。
科学の発達していない異世界ならではの光景だと思った。
見たことのない光景は他にどんなのがあるかな?と集落を散策していると、妖精がこちらのほうへ飛んできて
「初めて見るけど君はなんていうんだい?」
唐突に質問をしてきた。
マイペースな妖精さんである。
「僕は十三束 空。よろしく。えっと・・・」
「僕はアルだよ。そらっち。」
「了解。って、そらっち!?」
「うん。いいあだ名でしょ。」
「あはは・・」
うん。
やっぱりマイペースだ。
しかも許可もなくあだ名までつける始末・・・
「アル。そういえば何か用?」
「べっつに~なんか変わった人だったから見に来たんだよ。」
「いや・・・変わってはないはず・・・」
「そらっちが変わってないわけがないじゃないか。だってそらっちは勇者だよ。周りとは変わるよ。雰囲気とか、考え方とかね。」
なんかいつの間にか勇者だと知られている・・・
しかも変わっているって、変わっている奴には言われたくない!
「まぁそんなことより、後で二人とも呼んで妖精広場に来てよ。『妖精の加護』をあげるから。」
そう言い残すと飛んで行ってしまった。
というより妖精広場ってどこだ。
すっかりアルのペースに乗って聞くの忘れてた。
とりあえずシルフィアとか起きているか確認しに行こうか。
そう思って小屋へと戻ると、
「そらくん。朝早くからどこに行っていたんですか?」
さっそくシルフィアが何をしていたか聞いてきた。
ちなみにエルはまだ
「うにゃ~・キバアジおいしぃにゃ~・・・」
といった感じで猫が見ていそうな内容の寝言を言いながらすやすやと丸まって寝ている。
あれは猫なのか?
「朝早く起きちゃったし、集落がどんなところか知りたかったから集落を散策してきたんだよ。」
「そうですか。何か見つけられまたか?」
「見つかった言うか・・・」
とりあえず朝のあるとの会話の内容を伝える。
「マイペースな妖精の気分が変わるとあれですし、早速その妖精広場へ行きましょうか。」
そういうと
「エルさ~ん。朝ですよ~。」
エルを揺さぶっているがなかなか起きない。
「エルさ~ん?」
そう言いながら首をかしげると
ポンッ
「そうだ!」
何かひらめいたような表情で、小屋の外へ出ていくと・・・
マタタビを手に取ってきた!
そしてエルの顔に当てたら・・・
「マタタビ!!どこ行ったにゃ!」
そう言いながら飛び起きた。
しかしすでにシルフィアはマタタビをカバンの中へしまっていたようですでに手元にはない。
「エル。昨日言っていた『妖精の加護』を妖精にもらいにいくよ。」
僕がエルに向かって話しかけると、
「分かったよ。そら。」
もう平常運転になったようだ。さっきまでの語尾は何処へいったのやら・・・
「で、場所はエルフにでも尋ねる?」
「そうするしかないでしょうね。ちょっと手の空いていそうな人に聞いてみましょうか。」
そんなやり取りをしながら、僕たちは妖精広場へと向かった。
◇ ◇ ◇ ◇
「す・すごい・・・」
近くにいたエルフに教わって妖精広場へやってきた僕は最初に驚いた。
エルフなど人間が座るベンチのほかに、きちんと小さい妖精向けのミニチュアサイズのベンチや噴水があったのだ。
それだけではなく、いろんな色の妖精が飛び回っていたりもしていてなかなかに幻想的な雰囲気を醸し出す空間になっていた。
僕が一人で勝手に感嘆していると、
「やっほ~そらっち。おそかったね~。」
先ほど出会ったアルが話しかけてきた。
「ごめんアル。悪気はなかったんだよ。」
「そっか~ならいいよ~うそはついてなさそうだし~。」
「ふぅ~じゃあ『妖精の加護』をもらえるんだね。」
「そだよ~。とりあえずひろばのまんなかにきて~」
そういわれたので3人で移動した。
「それじゃあいくよ~。」
そういうとアルは3人のちょうど中間にきた。
「妖精が命じる。理を今一度読み解き、神聖なる大地の力を用いて彼の者たちに恵みの光を与えよ。『ブレッシングオブフェアリー』」
その言葉と共に、広場の中心が黄緑色に輝いた。
「きれいですね。」
「うんきれいだ。」
「すごいね!」
すぐに輝きは消えたが、何かを授かったような気がする。
「終わったよー。3日間は効果が続くからね~。じゃあそらっちまたね~。」
そう言い残すと飛んで行ってしまった。
やっぱり最後までマイペースだったな。
まあいっか。
「一旦小屋へ戻ってコルクルの卵でも見ませんか?」
「賛成!」
そういうと再び小屋に僕たちは戻った。
◇ ◇ ◇ ◇
「くぁぁ!」
戻ってみると、コルクルが生まれていた。
殻から足が出ないようで必死に転がっている。
パンツをはいているみたいでなんか可愛いな。
二匹とも生まれていて、1匹は水色の羽毛でもう一匹はピンク色の混じった白い羽毛のコルクルだった。
「これ!ハイ・コルクルですよ!」
何か興奮した様子でシルフィアは言った。
「コルクルとは違うんですか?」
「ハイ・コルクルはコルクルと違って生まれた時から羽毛が生えているんです。コルクルは生まれた時、羽毛ではなく毛が生えているんですよ。」
なんかキラキラした目で見ていた。
「へぇ~珍しいんですか?」
「珍しいなんてもんじゃないよ。野生でも極稀にしか巡り会わないんだから。しかもこの2匹は双子だよ!」
なんかエルに説教みたいな口調で怒られた。
そこまで興奮せんでも・・・
「これは運がいいですね。」
「うんうん。」
だめだ。
しばらく興奮は収まらなそうだな・・・
「名前はどうしますか?」
シルフィアがそんなことを言うと
「コルックとクルックはどう?」
安易なネーミングだな~
「いいですね~。じゃあ『コルック』が白色の子で『クルック』が水色の子にしましょう。」
え!?
いいの!?
こんな簡単で・・・
「きまりー!」
決まってしまった。
「「くぁぁぁ!」」
口をはさむ暇すらないなんて・・・
しかもハイ・コルクルまで喜んでいるし。
「シルフィアさん僕が水色の子でもいいですか?」
「いいですけど、『クルック』です。」
「は・・・はい。」
「じゃあ私が『コルック』ですね。」
「名前が決まったのはいいんですけど、どうやって育てるんですか?」
そういえばまったく聞いていなかったしな・・・
「ちゃんとコルクル用のエサである。コルの実を魔物商で購入していますし、そんな大変ではないですよ。」
「それにハイ・コルクルは、LvUpすれば、すぐに成長するよ。だから、幼くて乗れないなんてことにもならないと思うよ。」
「へぇ~。LvUpで成長するなんて変わった動物だね。」
そんなのがあるのか!と思ったけど興奮して答えたらうんちくがいろいろ話されそうだしいえそうにない・・・
「あとハイ・コルクルは全て空を飛ぶことができるんですよ。」
「全て!?コルクルは種類によって違うんじゃ・・・」
「ハイ・コルクルっていう種類しか飛べないんだよ。」
「そ・そうなのか!」
それは知らなかった。
「それにですね。ハイ・コルクルは人型にも変身できて、人型の時は言葉をしっかりと話せるんですよ。」
「うっそ~!!何でもアリだね。」
どんな体のつくりしているんだ?変わった生物だとしか言えないな・・・
・・・って、しまった。これじゃあ本格的にうんちくが始まってしまう。
「さらにですね、ハイ・コルクルには~・・・・・コルクルには・・・・・だけじゃなくてですね・・・」
「もともと・・・・・セントリアと・・・・・あんなことが・・・・・昔から・・・・」
時すでに遅し。
その後1時間近くコルクルついて二人に熱弁された。
途中から飽きてクルックとコルックにコルの実をあげたり、
「くあぁぁぁ」
鳴き声と共に甘えてきたので、さわさわしながらのんびりと聞き流していた。
もふもふしているし可愛いなぁ~。
・・・さすがにこんな長い時間は聞いていられないと思った。
話し終わった二人は、
「そらさん!?ずるいですよ。私にも触らしてください!」
「ずるいよ!そらばっかり。」
あんなに熱弁していて気付かなかったのになんていいようだ!
と、思ったのだがすごい形相だったので遠慮しておいた。
◇ ◇ ◇ ◇
お昼頃になって、ようやっと満足した二人は、
「それでは、セントリアへと向かいましょうか!」
「おー!」
満面の笑みでそう言うと、荷物を持って出るように促してきた。
「行きますよ。そらくん。」
「早く早く!」
「分かったてば!」
小屋を出てから、初めにあったエルフのところへ行って、
「お世話になりました。また会ったらよろしくお願いいたしますね。」
「いいってことよ。それじゃあセントリアだっけ?頑張ってな!」
「はい!ありがとうございました!」
僕たちは挨拶を終えるとエルフの集落からセントリアへと旅立った。
「やっほ~!そらっち!」
そんな声と共に目の前にアルが現れた。
「なんでアルがここに!?」
そう僕が答えると、
「楽しそうだしさ~僕もついていくよ~。」
とても単純な答えを出してきた。
「集落はいいの?」
一応聞いてみたが、
「みんなからOK!って言われたからへーき!」
の二言で片付けられた。
こうして仲間がまた一人増えることになったとさ。




