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プロローグ
(あるいはこの物語は、とっくに終わっているのかもしれない)
(もう終わってしまったものを、ぐるぐる、繰り返しているだけかもしれない)
(だって、俺は見てしまったような気がする)
(とっくの昔に訪れた、俺の終わり、そして君の終わりを)……
「ばかばかしい。さっさと始めなさいよ」
彼女の前に立っているのは、それはそれは美しい生き物だった。
否、「生き物」と呼んでいいのだろうか。そいつからはもはや、生命感は感じられなかった。少しの歪みも許されない精緻さがあった。
彼女はそれを一言で表す言葉を知っていた。
「てんしだ」
それは彼女の声を聞き、笑みを深くした。
そう、笑っていたのだ。
君はずるをしたね
そしてそいつはそう言った。