表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境護民官ハル・アキルシウス(改訂版)  作者: あかつき
第4章 西方帝国内乱
75/88

第6話 東部山塊越え

 アルマール族の城邑、ヘオン


 鎧兜を身に着けたグーシンドは、最近改修したばかりの帝国方式で建造された城壁の上を歩いて敵を見渡していた。

 1年前までは木造の壁であったヘオンの城壁であるが、グーシンドが早めに申請を出していたせいもあって街並みと一緒に帝国からやって来た技師の指導の下、石造りへと転換が進んでいたのである。

 城壁、街路、下水道が整備され、これから上水道を整備するという段階で水道橋の建設を始めた矢先、山岳を越えてシルーハの軍勢が進軍を開始したとの一報が入ってきたのだ。


 シルーハ側に“あの”ダンフォード王子がいることは掴んでいたし、それをシレンティウムにも報告していたグーシンドは戦時体制を取っていたこともあって素早く籠城を実施するとシレンティウムへ一報を送る。

 もう間もなくシルーハ軍が峠を越える。

 戦いは間近に迫っていた。




 アルマール族は元々帝国に好意的であったこともあって文化の導入が早く進み、今やその居住地域の文化的発展は帝国の辺境地方と変わらない水準にまで達していた。

 農業、鉱工業、製造業、商業がここ数年で格段の進歩を遂げ、貨幣の浸透で経済活動が活発化し、更には部族戦士達がほぼ全員帝国風の戦法を身に付け北方軍団兵となった。

 グーシンドが率いるヘオンの戦士達1000名も、帝国風の鎧兜を装備し、その戦法をシレンティウムで身に付けた北方軍団兵である。

 その北方軍団兵を率いてヘオンに立て籠もっているグーシンドが言われたのは、出来るだけ敵を攻撃しないでおくこと。

 ヘオンへ間近に迫った時だけ反撃するようにとハルから言われているのだ。


「さて、アキルシウス殿のお手並み拝見と行きますか」


 残念ながら招集部族からは外れていたので、イネオン河畔の戦いには参加出来なかったグーシンドは、今日の戦いでハルがどのような作戦の妙を見せるのか楽しみにしているのである。

 それは配下の兵士達も同じ。


「あ、見えました……シルーハ軍です!」


 見張りの兵が槍で示す先には、雑然と行進してくるシルーハの南方歩兵達が見え始めていた。





一方シルーハ軍を率いるダンフォードは、傍らを進む黒いアルトリウスの指示に戸惑っていた。


『様子がおかしいのである。直ちに進軍を止めよ』

「ああ、何言ってる?もうすぐヘオンだぞ?すぐに攻囲戦に移るんじゃ無かったのか?」


 黒いアルトリウスの言葉に不満たらたらのダンフォードが態度悪く答えるが、黒いアルトリウスはいつものような説教をせず、深刻そうな声を響かせる。


『うむ、そのつもりであったが、些か様子がおかしい、様子を見ようぞ』

「馬鹿言え、早く占拠しないとシレンティウムの援軍が来るから、何よりも優先してヘオンを落とせと言ったのはお前だろう?」

『状況が変われば作戦も変わる、それこそ危険となれば退くことも考えねばならん』


 ダンフォードのうんざりしたような声にもめげず、黒いアルトリウスは再度注意を促し進軍を止めるよう提案するが、ダンフォードは唇をかみしめ、震える小さな声で言った。


「……絶対それは無いぞ、もう俺には後が無いんだ」


 再三に渡る忠告に耳を貸さないダンフォードに、それでもなおしつこく進軍を止めるよう言い続ける黒いアルトリウスに、とうとうダンフォードの短い堪忍袋の緒が切れた。


「うるさい!黙ってろっ!!」

『……なんと』


 そしてもう間もなくヘオンの郊外に出るという場所。

 その森が途切れる寸前の場所で黒いアルトリウスが諦めの声を響かせた。


『……遅かったか』

「ん?何だ?」


 それまでと違った様子の首の声に怪訝な表情で振り返るダンフォード。


『だから進軍を止めよと言ったであろうが!』


 自分の忠告を全く聞き入れようとしなかったダンフォードへ揶揄する様な声を出す黒いアルトリウスの声の響きが消えるかどうかと言うところで、突如森から喊声が上がった。

 次々と森の中から矢が驚き慌てふためくダンフォード軍の戦列に降り注ぎ、弩の直線的な矢が兵の鎧や盾を食い破る。

 そして森の中から周辺の草木を兜に仕込んだ北方軍団兵が湧くように現われた。


「な、なんだと!?」

『ぬかったわ……まさかこちらへ辺境護民官が主力を向けてくるとはな、これは見抜けん。ダンフォードよ退け、今は退いて峠で体勢を立て直すのである』

「ああっ!?なんだこらっ!そんなこと今更できるか、ぼけっ!」

『ぼ、ぼけとは随分な物言いであるな……おわっ!?』


 突如飛来した矢に驚いてそれを躱す黒いアルトリウス。

 剣を抜いて味方を掌握すべく周囲を見回すと、無謀にも味方のフリード戦士やフリンク戦士を率いて前へ出るダンフォードの姿があった。


『馬鹿者!戻れ』

「うるっさい!」 


 叱声を罵声で返され、制止を無視して進むダンフォードの背中を見送りながら黒いアルトリウスは長剣を抜きつつ嘆く。


『うぬ、我が怨嗟の志もこれまでか……ん?』


 気配で後方にも敵が回り込み始めたことを察し、黒いアルトリウスは沈黙したまま周囲の凄惨な戦場を見まわしていたが、ある存在を認めてほうと感心したような声と共に言葉を発した。


『如何にも群島嶼の剣士らしい事であるな。総司令官自ら最前線に出るか……』


 黒いアルトリウスの視線の先には、ヘオンのある方向から白の聖剣を手に北方軍団兵を指揮しつつ迫るハルの姿があった。


『まだ起死回生の機会は有るようであるな。北の希望よ、我が怨嗟の志存分に見せ付けてくれる!』







 南方歩兵は突如現れた北方軍団兵に驚き慌て、反撃することも出来ずに右往左往して矢や弩に身体を次から次へと撃ち抜かれて絶命してゆく。

 破れかぶれになって北方軍団兵に向かってゆく兵士も居るが、槍を跳ね上げられて敢え無く斬捨てられるばかりで効果は全く無い。

 弓と弩の弦が鳴る音、矢の飛翔音、手投げ矢の刃音、そして剣戟の音が混じり始める頃にはもう戦いは決着に向かい始めていた。


 碌に抵抗することすら出来ず南方歩兵2万はほぼ全滅し、後はダンフォードの率いるクリフォナムの戦士達が正面の北方軍団兵と切り結んでいるだけである。

 それも横合いから矢を射込まれ、後ろから手投げ矢を撃ち込まれての戦いで、勢いはあるが勝ち目の薄い戦い。

 南方歩兵が全滅すると文字通り包囲されたダンフォード達は、周囲を囲んだ大楯の壁に絶望的な突撃を繰り返すのみであった。


「くっそ!誰か何とかしやがれ!」


 状況は絶望的、それを察し吐き捨てる様に悪態をつくダンフォードの後方から、黒いフードの大柄な戦士がぬっと現れた。


『少しばかり退け、我が何とかしてみよう』

「……!出来るのか?」

『分からん』


 縋るようなダンフォードの様子にも頓着せず、素っ気なく答える黒いアルトリウス。


「てめっ……この期に及んでっ!」

『その言葉はそっくり返してやるのである……ダンフォードよ、死に際を見極めるのも指導者たる者の勤めぞ』

「うるさい!」


怒鳴るダンフォードを無視し、黒いアルトリウスは北方軍団兵が大盾を構えるハルの前面に進み出ると、音も鋭く長剣を一振り。


 そして静かに剣先を下ろした。


 正面に無言で佇む黒いアルトリウスの異様な雰囲気に呑まれ、北方軍団兵達は微動だにせずその動静を注視している。

 ハルはつぶやいた。


「……あれが?」

『うむ、間違いないのである。あれこそ我が半身にして異身、ガイウス・アルトリウスの怨嗟満ちたる首の姿である』

「……行きますか」


自分の肩に立つアルトリウスの言葉を噛み締め、ハルは静かに言う。


『気を付けよ?こう言っては何であるが、我はかつて大陸において三強を謳われた剣の使い手であった。あの身体がどれ程のものか分からんであるが……』

「承知していますよ、先任」


 アルトリウスの忠告に素直に頷き、ハルは白の聖剣を握り直して前へと進み出た。


「ハルさん!あいつは無理です」

「そうです、無茶です。囲んで討ち取りましょう!」


 フレーディア籠城戦で黒いアルトリウスの大活躍を目の当たりにしていたルーダとカンディがハルを押し止めようと口々に言うが、ハルは首を左右に振った。


「これは北の地に40年前から続く負の連鎖を断ち切る為に必要なけじめなんだ。そして志半ばで倒れて希望と絶望を残してしまった先任のけじめでもある」

『ハルヨシよ……』

「先任のけじめを後任が付けて悪いことは無いですよね?」

『ふふふハルヨシよ、お主も成長したものである。よもや左遷されたと腐っておったお主の口からその様な言葉が聞けるとは……感慨無量とは正にこの事を言うのであろう』


 茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべて言うハルに、絶句していたアルトリウスがゆるゆると笑みを浮かべて言う。

 そしてハルは笑顔のまま頷き、自分の尊敬すべき先任者に問う。


「先任、先任の剣術とは?」

『……我の剣術の要諦は先読みと早さ、それに思いがけない剛力である。お主の全てにおいて相手に応じる剣術であれば十分に対抗出来よう』

「分かりました」






「辺境護民官にして第21軍団軍団長ガイウス・アルトリウスの後任、秋留晴義」


『……ガイウス・アルトリウスの残滓、怨念、執着、不幸、災厄、病みにして闇である』


 対峙したハルと黒いアルトリウス。


 互いにそう名乗りを上げると、鋭い視線を交錯させた。

 息を呑むダンフォードとその戦士達、そしてルーダや北方軍団兵は固唾を呑んで見守る。

緩やかな風が2人の間をながれたその時、鋭い気勢と鋼を打合う甲高い音が響き渡った。





 初撃を真っ向から打ち下ろし合ったハルと黒のアルトリウス。

 2撃目、ハルは白の聖剣を巧みにずらして打点を狂わせ、相手の剛力をいなしにかかるが、黒いアルトリウスは早い打ち込みと戻しでその目論見を防ぐ。


『くふふふ、やるな小僧っ』

「……容赦はしませんよ」

『望む所である!』


 速度と力の乗った黒いアルトリウスの剣技に対し、ハルはある時は正面から受け止め、またある時は剣先でこれをそらしてひたすらやり過ごす。

次第に黒いアルトリウスの剣が荒れたものへと変わるのをハルは感じた。

 正面から変則的に側頭部を狙った黒いアルトリウスの剣をハルがかがんで躱し、跳ね返ってきた切っ先を白の聖剣の腹で受け止める。

 鍔迫り合いとなった2人の顔が近づき、ハルの額に黒いアルトリウスの額が触れんばかりの位置にまで迫る。


『……何時まで逃げ回るつもりであるか!』

「ははっ……先任のスキが生まれるまでです」

『!?我は貴様の先任などでは無いっ!』


 ごりっと金属をこじる音と共に黒いアルトリウスが強引に長剣を弾き上げるが、ハルは一瞬の隙を見逃さず追討ちをかけた。

 白の聖剣が唸りを上げ横薙ぎに黒いアルトリウスの額を襲う。

 上半身を捻って剣先を躱した黒いアルトリウスであったが、その特徴であった黒フードだけが切り割かれた。

 露わになる帝国風の古い、そして酷く傷付いた兜とその中の黒い髑髏。

 北方軍団兵が驚きでどよめき、フリード戦士が動揺する。

 ダンフォード王子の弟であるデルンフォードだとばかり思っていた戦士達は、その禍々しい姿にすっかり度肝を抜かれてしまったのだ。


『くははは……よもやここで正体がばれようとは』

「先任、降伏して下さい。もう止めましょう」

『緩いわ!重ねて言うが我は貴様の先任などでは無い!』


 自嘲気味に剣を構えつつ発せられた言葉にハルが中止を提案するが、怒気を孕んだ声色で黒いアルトリウスが言い放つ。

 ハルの肩の上からその姿を黙って見つめていたアルトリウスは小さく囁いた。


『ハルヨシよ、遠慮は要らん。散々に撃ち破ってやるが良い』

「分かりました」


 ハルが剣を構え直した途端に黒いアルトリウスが体当たり気味に長剣を浴びせてきた。

 ハルが落ち着いて斜に受け止めようとしたのを見た黒いアルトリウスが、変わらない髑髏顔でにやりとしたようにハルは感じる。


 その瞬間、黒いアルトリウスの長剣がハルの白の聖剣をすり抜けた。


 いやすり抜けたがごとくに錯覚した。

 ハルの右頬が斬られ、ぱっと赤い血が飛び散った。


「!」

『くははは!』


咄嗟に剣を合わせ直しつつ躱した為に深傷は免れたが、今度は北方軍団兵が動揺し、ルーダとカンディが思わず身を乗り出す。


「下がれ」


 しかしハルは前に出ようとした味方を言葉だけで押し止める。


『ふうむ、この技をその程度で切り抜けられ者が居ろうとは、世界はまだ広い!南方大陸で腕の覚えある族長3名の首を敢え無く飛ばした技であるが……くははは、面白いっ』

「……」


鍔迫り合いのまま言葉を発する黒いアルトリウスが口から瘴気を吹き出して笑うが、ハルは頬から流れる血をそのままに無言で暗くくぼんだ相手の眼窩を睨む。

 ハルは一瞬力を抜いて相手の動揺と体勢の崩れを誘って横合いから肩口を鋭くぶつけ、黒いアルトリウスを弾き飛ばして距離を取った。


『ハルヨシよ、大事ないか?』

「かすり傷です」


 自分の質問に動揺無く答えるハルに、アルトリウスが頷いて言葉を継ぐ。


『……お主を五体満足に帰さねば我がお主の嫁に縊り殺されてしまうのである。何としても勝つのである!』

「何ですかそれ……でも、負けられない理由は十分分かっていますから、大丈夫です」

『うむ、では反撃である!』


 その掛け声と共に一足飛びに黒いアルトリウスへと迫るハル。

 黒いアルトリウスは今まで防御に徹して居たハルが攻勢に出てくるとは思わずにいたので、機先を制されて逆に防戦をしいられる。

 急所を的確にそして適度な早さで突いてくるハルの攻撃を、黒いアルトリウスは長剣を縦横に振って防ぐ。


『なかなかやるでは無いか』

「先任の訓練のたまものです」


『我はっ我はっ我は……貴様の先任などではないっ!』


挑発するようなハルの言動に激高した黒いアルトリウスが下から長剣を跳ね上げ、それを躱したハルの頭上を切り返して襲う。


 そして再度、黒いアルトリウスの長剣が不思議な軌跡を描く。


『なっ!?』


 しかし長剣を振り下ろした先にハルの姿は無く、次いで黒いアルトリウスは自分が寄生していた肉体がゆっくり首を失い前のめりに倒れる光景を目の当たりにした。


『見事である!それでこそ我の後任よ!』


 手を叩いて褒めそやすアルトリウスに、呆然とした黒いアルトリウスの声が続く。


『なんと、我は首を飛ばされたであるか……』


 白の聖剣を担げるような格好で、黒いアルトリウスの首の側にかがむように佇むハル。

 しばらくして白の聖剣をゆっくり下ろした。


『……慣れぬ、鍛えてもおらぬ身体を使っていたとは言え、この様な結果になるとは思いも拠らなかったのである』


 黒い煙を口から吐き出しながらアルトリウスの首がつぶやくと、フリード戦士達が次々と武器を放り出した。

 正体が知れたとは言え荒くれの無頼揃いであったダンフォード配下の戦士達を指揮統率し、馬鹿王子ダンフォードを立てて曲り形にも今まで凌いで来れたのは黒いアルトリウスの力である。

 個人主義の強いクリフォナム人の中でも特に個々の人間の繋がりを重視する戦士達は、ダンフォードでは無く黒いアルトリウスとの繋がりでここまで従っていたのだ。

 それがたった今途切れ、戦士達は戦意を喪失する。


 頬から血を流しつつ、ハルが白の聖剣を突きつけてその馬鹿王子宣告した。


「降伏しろダンフォード!」

「うるさいっ!偽王の言うことになど従うかっ!死ねっ」


 荒い息を吐きつつもダンフォードはハルの降伏勧告に耳を貸さず、近くに落ちていた槍を拾って投げつける。

 しかし槍は力なくその手前で地に落ちた。


「……極力捕らえよ、手に余るようならば討って良い」


 ざざっと距離を詰めて迫る北方軍団兵に手向かうのはダンフォード王子1人。


「一騎討ちを……一騎討ちをしろっ!」


 見苦しく剣を振り回しつつハルを見据えて叫ぶダンフォードにハルが呆れて言葉を返す。


「かつて父親のそれを汚したお前が言うのか?」

 白の聖剣を背中の鞘に戻し、刀を引き抜きいて揶揄しながらもハルは一騎討ちに応じるべく前へと出た。

 向き合う2人。

 最初に見えたのは何時のことだったか。

 あれから随分時間が経った。

 その間にダンフォードが起こした事件は、多くは無いがどれも無視出来ない損害を北の地に与えてきたのだ。

 それをここで断ち切らなければいけない。


「お前さえいなければ……クソッタレっ喰らえっ」


 大ぶりの斬撃を繰り出してくるダンフォード。

 ハルはそれをかわし、時には刀で弾いて防ぐ。

 何合目かの打ち合いでダンフォードのそれなりに力の籠った一撃がハルに加えられるとハルは軽くそれを避け、刀の峰でダンフォードの隙だらけの手首を思い切り打ちすえた。

 骨の折れる音が高く響き、ダンフォードが絶叫する。


「捕まえろ」


 刀を油断無く収めつつハルが命令すると、北方軍団兵は縄で手首を抱えて地面を転げ回っているダンフォードをぐるぐる巻きに縛り上げた。

「畜生おおうううううっ!!!」

「ダンフォード王子、あなたの帰還を待ち望んでいる人がたくさんいる。自分が帰ってくるまで大人しくシレンティウムで待っていて貰いましょうか」

「ぐおおおお、殺してやるううっ」

 絶叫しているダンフォードを素っ気なく見たハルは短く兵士達に命じる。

「連れて行け」




 シルーハを裏側から破り、ルグーサを落としてシルーハ王国の領土を横断しユリアルス城をシルーハ側から攻めて帝国領へ入る。

 このアルトリウスの戦略に乗ったハルは直ぐさまシレンティウムを4万余の軍で出発しヘオンに向かった。

 途中、ダンフォードが2万程度の軍を率いてルグーサを出発し、北へ進撃し始めたとの報告を楓が送り込んだ陰者から受け取り、ハルはアルトリウスと相談して伏兵をしかけることにしたのである。

 作戦は見事成功。

 ダンフォード軍は壊滅し、ハルと北の地を悩ませ続けたダンフォードを捕らえた。



 シルーハの軍はほとんどが帝国東部へ進出しており、シルーハの首都パルテオンには1万から2万程度の守備兵しかいない事が商人達の話や東照からの情報で分かっている。

 シルーハが急遽臨時招集を掛けたとしても弱卒の南方歩兵が主体であるし、そもそも農繁期にそれ程多くの兵は招集出来ない。


 しかも今の戦いでその召集兵も撃破した。


 更に後方は東照帝国の黎盛行が4万の東照軍を率いて国境付近まで出張ってくれることになっており、東照軍がシルーハを後方から牽制してハルの後を追わせないようにする作戦である。

 国境を破るわけでは無いし交戦するわけでもないが、東照と仲の良くないシルーハはこの4万の軍を意識して何らかの予防措置を取らざるを得ないであろう。


 残置の軍はシルーハが動かないことを確認した後、シレンティウムからアルトリウス街道でヘオンに運びこまれた補給物資を受け取ってルグーサを放棄し、ユリアルス城へと向かう事になっていた。

 一見綱渡りの作戦であるが、アルトリウスは十分勝算があるとみている。

 それは軍の配置だけでは無くシルーハの政治体制にも弱点がある事を知っているからだ。


『シルーハに王はいるが権限は帝国皇帝以上に無い。あそこの基本は大規模商人の寄り合いであるので、不利になれば必ず意見が割れる、さすればそれだけで国が動かなくなるのだ。また派閥構成が複雑であるので、自前の常備軍がいると力関係がより一層に複雑になるのであるな、故にシルーハは軍を嫌う。騎兵は一朝一夕に養成出来ないので多数を擁しておるが、それ以外の兵や将官は召集兵や傭兵が基本なのである。海軍に至っては商船しか無い、それを転用するのであるから軍嫌いも徹底しておるのである』


 アルトリウスは作戦の危険性を指摘した者達にこう解説して納得をさせ、東照と連絡を取って後方の安全確保を依頼したのである。

 しかもこの道順で進めばユリアルス城までは帝国領を通らないため、要請や権限付与が一切必要ないという最大の利点があるのだ。


 その大戦略を組み立てたアルトリウス、実は今回ハルに同行している。

 尤も都市を離れるには制限があるため、アルトリウスは小鳥程度の大きさにまで姿を縮め、ハルの肩に乗って移動していた。

 姿はかつての戦装束であるが、白の聖剣は自分では持てないのでハルが背負っている。


『うむ、この立ち位置もなかなか良いのである』

「楽してるだけじゃないですか?」


 満足そうに自分の肩で胸を張るアルトリウスに、ハルは見えないながらもその様子を察して文句を言うが、当の本人は悪びれた様子もなく言葉を返した。


『そうとも言うのであるなっ』

「先任……」


 呆れたようなハルの声にアルトリウスは少し笑いを含んだ声で言葉を継いだ。


『ま、お主の嫁に縊り殺されぬようにせねばいかんから、先任としての助言を行うに最も適した場所、と、しておくのである』

「そ、そうですね」


 アルトリウスが面白そうに言ったのには訳があった。

 アルトリウスが小さくなってハルの肩に乗って移動すると言うことが分かった時、エルレイシアが激しく嫉妬して、ハルが宥めるのに苦労したからである。

 アルトリウスの係を作って、その兵士か将官に運ばせると言う案もあったが、ハルとアルトリウスが離れ離れになる危険性から却下され、最後は結局肩の上へ座ることになったのである。

 エルレイシア曰く「私も肩に載せて貰ったことが無いのです」だそうで、おかげでハルはアルトリウスを肩へ載せる前にエルレイシアを肩へ担いで行政庁舎のバルコニーへ出るという恥ずかしい行為を強要されたのだった。







 ヘオン郊外の戦いに勝利したシレンティウム軍。


 ハルは戦場の後片付けをルーダとカンディを介して配下の北方軍団兵達に命じる。

 そして黒いアルトリウスの首を前にした。


『うむ、懐かしいであるな我が首よ』

『ふん久しいな……身の程知らずにも神となったであるか、ははっ!何たる境遇の違いであることか!』


 黒いアルトリウスがアルトリウスと同じ声を感嘆した様子で響かせた。

 いたたまれない表情のハルを余所に、アルトリウスがごく平静に言葉を返す。


『貴様、我に従うか?』

『馬鹿を言え……我が貴様の身体から落とされた首、西方帝国に仇為す災厄の首アルトリウスであるぞ。元は同じくしても、既に別の存在である、しかも我は敗れ、貴様は勝った。滅するが良い』

『しかし首よ、勝ちも何も無いであろう。同じくしても、ではない。我も貴様もアルトリウス。同じくして生まれながら違った思いを抱いて時を過ごしただけのことである』


 諦念の雰囲気を多分に含んだ首の言葉に、アルトリウスが諭すように応えた。

 しかし黒いアルトリウスは硬い雰囲気を崩さず声を響かせる。


『違いない……しかしお主らが北の地で繁栄の種を蒔いている時、我がダンフォードと共にあってお主らに災厄と不幸を呼び込み、北の地に混乱と破壊をもたらし、悲しみをまき散らしたのは事実、そうして敵対し、敗れた我を如何にするのであるか?』


 その言葉に、情けない気持ちと怒りの気持ちが混ざった複雑な感情の発露した声色でアルトリウスが答える。


『やはり貴様の入れ知恵か……あの馬鹿王子にそこまでの知恵が回るとも思えなんだのであるがこれでようやく合点がいったのである』


 確かにアルトリウスの首がもたらした災厄は帝国にこそ及ばなかったが、北の地には十分以上の悲劇と混乱を巻き起こしていた。

 それを自分とかつて同じであったモノが起こしたという事実に、アルトリウスは大きな衝撃を受けたが、その始末は付けなければならない。


『ハルヨシよ……こやつを滅してくれ』

「先任」

『自分の責任を免れんとする気持ちは無いが、こやつは我とは全くの別物であるから、気にすることは無いのである。聖剣で突けば一撃であろう……頼む』

「しかし」

『構わんである、やるが良い』


 ためらうハルに黒いアルトリウスが言う。

 露わになった髑髏は禍々しさを些かも損なっておらず、周囲を囲む北方軍団兵がその異様さに驚いている様子が伝わった。

 躊躇い続けるハルを見ていた黒いアルトリウスは、含み笑いながら声を発する。


『……ふふふ、面白い、実に面白いヤツである!しかし残念ながら我こそは災厄の首アルトリウス、堕ちた英雄。不幸と呪いを振りまくモノである……然りとてアルトリウスには違いなし、恥も誇りもあるのだ。これ以上惨めな思いをさせてくれるな』

「分かりました……」


 黒いアルトリウスが発した言葉でようやく覚悟の決まったハルは、静かに白の聖剣を背中から抜き放つと正面から髑髏の顔の中心へと一気に突き立てた。

 がつんと固い物が貫かれる音が髑髏からすると同時に、黒い霧がどっと吹き上がり、愉快そうな黒いアルトリウスの声が響き渡った。


『ふあはは、我の無念果たせずっ……しかし晴れやかな気持ちである!』


 黒い霧は一気に渦を巻くと色を黒から金色に変え、一筋の光となって天へと消えた。

 そして、残った小さな光る玉がアルトリウスの小さな身体に吸い込まれると同時に、 一瞬、強い光がアルトリウスの姿を見えなくする。

 ハルが眩しさに負けてつぶっていた目を開くと、その前に浮かぶアルトリウスの姿があった。

 心なしか色合いが濃くなったようだ。


『済まぬな……別者とは言え我の不始末、詫びの言葉も無いのである』

「先任の思いは分かっているつもりです……あの時のような、先任のような悲しい思いを抱く人が出ないようにしたいですね」


 そう話す2人の周囲に、戦場掃除をしていた他の北方軍団兵達が集まってきた。

 アルトリウスの首が昇天した時の光を見て不審に思ったのだろう。


『ふふ、そうであるな……では何としても此度の戦を上手く終わらさなければいかん』

「はい」


 ハルは兵士達に手を振り、異常無いと言うことを知らせながらゆっくり歩き出した。

 明日は敵地へ侵攻である。







 シレンティウム行政庁舎、行政長官執務室



「まさかあなたがここにいらっしゃるとは思いもしませんでしたな」

「はは、まあ自分でもそう思う。ここへ来たのは爺さんの言付けでね、ま、半分は仕方なくと言ったところかな?」


 珍しく驚いた表情で言葉を発したシッティウスの目の前には、鎌と藁が入ったずだ袋を傍らに置いた小クィンキナトゥス卿こと、シレンティウム南街区に住む農民、グナエウス・クィンキナトゥスが座っていた。

 格好も農作業に適した動きやすく泥だらけの貫頭衣である。

 かつて帝都においては白亜の議場を舞台に丁々発止の議論をし、その爽やかな弁舌と揺るがない信念で、市民派貴族の新たな指導者として名声をほしいままにした青年元老院議員の面影はそこに無い。


「もう半分は?」

「もちろん、楽しんでやっている!夜道を歩いていて突然石が降ってくるような命の危険はないし、馬鹿な貴族派貴族がいないだけでも素晴らしいのになあ~食い物は美味い、農作業は楽しい、可愛いお姉ちゃんはいるっ、こんな良いところは無い!」

「……そう言えば戸籍官吏のピエレット嬢とイイ仲だそうですな?」

「お?なんだ、情報が早いな相変らず、ま、そういうところだ」

「変わりませんな」


 呆れた声色を出したシッティウスの面前には元老院から送られてきた越境許可と、外国軍隊に対する防衛要請が記された元老院文書の転写物があった。

 小クィンキナトゥス卿が先程持ち込んだ物である。


「で、どうするかな?新興国の宰相殿は?」


 面白がるような言葉にシッティウスは元老院文書を手にちらりと小クィンキナトゥス卿の方を見ると、徐に口を開いた。


「では早速アダマンティウス市長に連絡を取りましょう」

「んん?ちょっと待て、アダマンティウスだって?辺境護民官殿はどうした?」


 シッティウスの口から出た人物の名前が自分の予想とは違ったことで、小クィンキナトゥス卿が訝しげに言葉を返す。


「アキルシウス殿ならばもう出陣なされましたが、何か?」

「えっ?」

「そうですなあ……今頃はルグーサを攻めている頃でしょうかな」


 驚いたところへ更に言葉を被せられ、小クィンキナトゥス卿の口が目一杯開かれた。

 ついでに目と鼻の穴も開かれる。


「な、ななっ、なにーっ!?」

「おや、聞こえませんでしたかな?」


 驚きの大声を上げる小クィンキナトゥス卿とは全く対照的に、極めて平静な口調でシッティウスが問い返すと、小クィンキナトゥス卿は目の前で手を左右に激しく振りながら言葉を返した。


「い、いや、聞こえている、確かに聞こえているがっ、ルグーサだって?帝国と方向が正反対じゃ無いか、どうしたってそんなところを攻めているんだ?」

「もちろん、帝国を助けるためです。越境権限が無い以上は帝国の国外を通る他ありません、まあ、今回都合の良いことに敵はシルーハでしたので、侵攻しても問題ありますまい」


 極めて事務的に淡々とシレンティウムの戦略を伝えるシッティウスに、身を椅子から乗り出していた小クィンキナトゥス卿がドサリと後ろへ尻を突いた。

 そして目を見開いたまま絞り出すように声を出す。


「……なんてヤツだ、辺境護民官は何を考えている?」

「先程も申しましたが、シルーハ側からユリアルス城を攻め、その途中ついでにシルーハ側のいくつかの都市も攻めておきます。そうすれば驚いたシルーハの施政評議会は軍を自国へ呼び戻すでしょう。少なくとも後方を脅かされた遠征軍は動揺するはずです」

「確かに、まさか目標がユリアルス城とは思わないだろうな……北の新興国が隙を突いてシルーハの領土を掠め取りに来たと見るだろう」


 ようやく頭が回り始め、シッティウスの説明しているシレンティウム側の戦略が理解出来た小クィンキナトゥス卿。


「ま、そういうところですかな」


 その言葉と共に吐かれたため息を受け、シッティウスは幾分得意げに答えた。

 考えれば考えるほど、まさかとの思いしか無い。

 小クィンキナトゥス卿が驚愕するのであるから、実際に攻め立てられるシルーハは肝を潰すだろう。

 小クィンキナトゥス卿の脳裏には、精強な北方軍団兵がシルーハの南方歩兵を蹂躙している光景が浮かんだ。


「……そうか、まさかそんな発想があるとは」

「如何ですかな、我が北方連合の戦略は」


再度のシッティウスの言に、小クィンキナトゥス卿は深く椅子に掛けたまま、ひらひらと手を振りつつ苦笑いと共に答えた。


「流石だ……いや、しかし、北方連合ねぇ。やられたな、爺さん達の苦労も全くの無駄になってしまったよ」

「いえ、そうでもありません」

「何?」


 シッティウスは小クィンキナトゥス卿の言を否定し、言葉を継ぐ。


「その越境許可があればユリアルス城から更に駒を進められる上に、もう一つの戦略も生きてきます」

「それは聞いても良いのか?」

「ナイショですな」

「ふふふ、そうか!ま、そうでなくては!その時がきたら自分も同道するから宜しく」


 面白そうに手を打ち、そう言った小クィンキナトゥス卿に、面白くなさそうにシッティウスが答えた。


「そうですか、それでは宜しくお願いいたしますかな」

「シッティウス、お前も相変わらずだな……ホント良くそれであんな美人の嫁がくっついたよなあ」


 呆れた口調で言う小クィンキナトゥス卿へ、シッティウスが口をへの字に曲げて言い返す。


「この件と妻は関係ありませんが?何か文句でも?」

「いや、そうじゃなくてだな……お前さあ……」


実は旧知の仲のこの2人。

 いつになく砕けた様子のシッティウスに行政府の官吏達は面食らっていた。

 無駄話をするシッティウス。


 考えられない……


 シッティウスの言葉から、尋ねてきた帝国人農民が実は帝都の貴族であろうということは察せられた。

 しかしその農民と話し始めた時、いつも通りの仏頂面ではあるが、いつになく楽しそうで表情豊かなシッティウスを見て驚いたのである。

 尤も、普段密接に長時間接しているからこそ気が付いた変化ではあるので、そういう意味では官吏達もシッティウスとは旧知になったと言えよう。

 仕事をしながらも、世間話に興じるシッティウスから目と耳が話せない官吏達であった。





 シレンティウム同盟占領地、ルグーサ郊外



 ハル率いるシレンティウム軍4万余りは、ルグーサを出発し、ユリアルス城に向けて進軍を開始した。

 ルグーサには若干こじつけのきらいはあるものの、シレンティウム同盟の新たな領土との位置づけから、同盟協約に基づいて防衛の際動員出来る部族戦士団を召集して防備に当らせることになっている。

 その為、近隣部族であるアルマール族の北方軍団兵2000とソダーシ族から戦士団2000名が派遣され、ヘオンの邑長であるグーシンドがこれを率いて駐留していた。


 他にシレンティウム軍が1000名、残置の軍として残っているものの、シルーハの大軍が来襲した場合は、ルグーサを速やかに放棄してヘオンへ退却することが決まっている。

 シレンティウム軍の残置部隊1000名は、遅れてやって来る補給部隊と合流してユリアルス城へと向かい、その後ルグーサは放棄されるのだ。





東部山塊を越え、あっという間にルグーサへ迫ったハル率いるシレンティウム軍は、僅か3日でルグーサを開城させた。

 とはいえ、これはシレンティウム軍の手柄では無く、ダンフォードのお陰である。

 実はルグーサに居た兵士達を根こそぎ動員してしまっていたダンフォード。

 与えられた1万の兵を脅しに使い、無理矢理都市守備兵まで引き抜かれてしまったルグーサの太守には、シレンティウム軍へ対抗する術が無かったのだ。


 まさかダンフォード軍が全滅してしまうとまでは思わなかったルグーサの太守は、当然シレンティウム軍が攻め寄せてくることなど全く思惑の外で、朝になって包囲されていることに気が付いて腰を抜かした。

 ダンフォードに兵を引き抜かれた時点で、首都パルテオンへ報告はしていたが、代わりの兵が来れば良いとタカを括っていたのも徒となった。

 陰者を使い、この状況を掴んでいたシレンティウム軍が素早く動いたことも大きい。




 シルーハ北東の国境では、当初動かなかった東照帝国軍が越境してシルーハの国境守備隊を撃破しており、未だ盛んに周辺へ兵を出して砦や村々を落としている。

 当初の計画において東照軍は国境を越えないことになっていたが、黎盛行がどうやら旺盛なサービス精神を発揮し、積極的な活動を開始したようである。

 シルーハの首都警備部隊は1万5千の兵を持って一旦ルグーサに迫ったシレンティウム軍を撃破すべく動こうとしたが、東照のこの動きで首都パルテオンへ籠ることを選び、援軍の見込みが無くなったルグーサの太守も降伏する他無くなったのだった。


 城門を閉じ、2万の兵で守られていれば如何に東照とシレンティウムが一緒に押し寄せようともパルテオンを簡単に陥落させることは出来ないが、シレンティウム軍へ向かった後、東照に隙を突かれては一溜まりも無い。

そう考えたシルーハの首都警備隊長は、唇をかみしめて籠城へと作戦を変えざるを得なかったのだ。





『わはは、順調である!見たか我が大戦略を!!』

「先任……まだこれからで。ユリアルス城はシルーハ側に向けて堅固に造られているんですから、大変ですよ」

『ふふふ、しかし今となってはシルーハの城、背後に気を配っている者はおらんであろうが、知らせは未だユリアルスに届いておらぬのである』


 アルトリウスが言うとおり、シルーハ側の伝令や間諜は楓の派遣している陰者が尽く捕殺しており、シルーハの命令伝達や情報収集は著しく遅れていた。

 またルグーサを落とし北の道を押さえたことで、シルーハの首都パルテオンからシルーハ北西部への道を遮断してもいる。


『此度は速さこそ肝心!幸いにもルグーサが思った以上に早く落ちた。補給は後で構わぬので走って走って走りまくり、ユリアルス城を攻め立てるのである!敵に情報を把握し、立ち直る隙を与えてはならぬのであるっ』

「いや、分かってますから、そんな耳元で叫ばないで下さいよ」


 自分の肩で騒ぎ立てるアルトリウスに辟易し、思わずそう漏らすハルであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ