祭り特派員 3
「お待たせー」
広場の中央に背の高い時計台のある、時計台広場。
地元の住民にとって待ち合わせの定番となったここで、まさに今待ち合わせをしていた。
やって来たのは、染めたと分かるほど明るい、茶髪の少年。
「いいや、そこまで待ってないよ」
待っていたのは、今に珍しい、日差しを遮る傘……日傘を差した少女。
「今日はありがとね、わざわざ付き合ってもらって」
「気にすんなよ、どうせヒマだった…」
左右を見ていた少年の視線が、ある方向で止まった。
「どうしたの?」
「ゴメン、ちょっと待ってて」
「?」
「何やってんだ、こんなところで」
茶髪の少年が向かったのは、近くで待ち合わせをしていた帽子を被った少年だった。
「待ち合わせだ、見て分かるだろ」
「あ、そりゃそうか」
茶髪の少年は当たり前だよな、と納得した。
「待ち合わせって誰とだ?」
「あたし」
「うぉ!?」
茶髪の少年は急に真後ろから聞こえた声に振り返ると、眼鏡をかけた少女がその驚いた姿を見てニヤニヤと笑っていた。
「待たせたね」
「五分遅れだ」
「そんくらい多めに見てよー」
「……はぁ、いいからさっさと行くぞ」
「はいはーい」
「はー、相変わらず仲良いね、お二人さんは」
二人を交互に見て、茶髪の少年は呟いた。
「集合時間五分過ぎてるけどな」
「そんくらい待ってやれよ、女ってのは準備に時間が必要なんだぜ」
「お前が女の何を知ってるんだって感じだが……春物あさりの何に準備がいる?」
「え、えーっと、バーゲン品のバトルに対抗出来るだけの体力作りとか?」
「当日に付け始めるわけないだろ」
「そーそー、てかセールに行くわけじゃないから別に体力はいらないの。さ、時間迫ってるからさくさく行こー」
遅れたのはそっちなのに……
少年達の心のツッコミは、知らぬ内に被っていた。
「じゃあな」
「あぁ」
二人と別れ、茶髪の少年は日傘の少女のところへ戻ってきた。
「お待たせ、行こうか」
「今のは?」
「学校のダチと、その幼なじみ」
「へー、私達みたいだね」
「だな、さ、行こうぜ。この辺り久しぶりだろ」
「うん」
二人は商店街を歩き周り、日傘の少女が気になった店へ入る。
眺めるだけの時もあれば買い物をする時もあり、二人にとって普通に楽しい時間が過ぎていった。
「やっぱり良いセンスしてるよな、お前」
「えへへ、ありがとう」
茶髪の少年は、先ほど買った帽子を被り、選んでくれた少女を褒めた。
「さて、これで大部分は回ったけど、他に行きたいところはある?」
「うーんと……」
その時、
「あのー、そこのお二人、少しお時間よろしいでしょうか?」
二人の後ろから、声をかける人物の姿があった。
その人物の話を聞いた後。
「本当にあったんだな……噂ばかりと思ってたぜ」
「それに、今年を頼まれちゃったね」
「ふーん……面白そうじゃん」
「え? もしかして、やるの?」
「せっかくだし、一緒にやらね? どうせ三日後には帰るんだろ?」
「そうだけど……うーん……」
「まぁ明日まで時間あるし、ゆっくり考えてくれよ。お前がやるなら、一緒にやるからさ」
「う、うん。ありがとう」
op その2